明治安田生命 J2 第31節
7位横浜FCを迎えた首位湘南ベルマーレのホームゲーム『神奈川ダービー』は、序盤から両サイドをワイドに展開する湘南ペースで進んでいく。
象徴的なシーンは34分、細かいパスをつないだ湘南は左サイドに展開、フリーで受けた杉岡大暉が中央にクロス、右サイドを駆け上がった藤田征也のゴールで先制した。
後半に入ると、横浜FCは両サイドからのクロスを警戒し5バック気味に対応するも、58分、藤田征也が放った右CKをジネイがヘッドで押し込み追加点を与えてしまう。
システム変更と選手交代で徐々にリズム取り戻した横浜FCは、71分、中央をパスを受けたレアンドロ・ドミンゲスが相手を引きずりながらドリブル突破、ペナルティーエリア手前から豪快ミドルを突き刺し1点を返す。
レアンドロ・ドミンゲスとイバ、両外国人にボールを集め打開を試みる横浜FCの猛追は、後半アディショナルタイムに結実する。ペナルティーエリア内でこぼれ球を拾った佐藤謙介がドリブルで切り込みクロス、ゴール前で待ち構えていたレアンドロ・ドミンゲスが合わせ遂に同点に追いついく。
横浜FCが土壇場のゴールで追いつき、試合はそのまま2ー2、ドロー決着となった。
「僕の采配が間違っていた。」
チョウ監督の会見は実に潔かった。「僕の采配が間違っていた。ほぼ選手たちは自分たちのやらなければならないことをやってくれたと思いますが、自分の力が足りないなとつくづく思っています。本当に選手たちに申し訳ないと思っている。」と反省を口にしながらも、
「同じチームを6年も見て、こんな風に自分の力のなさを改めて知ったことを、逆に前向きに捉えないといけないと思いますし、選手には勝点2を落としたと思うなというようなことを言いましたけど、この”1″を今季全体として、この”1″が勉強になったというように、チームとして共有しないといけないと思っています。」と残り11試合の戦いの糧にしたいと決意を込めていた。
『2ー0という状況の難しさ』
サッカーの試合において、2ー0という途中経過は非常に難しい状況だと言われている。3点目を奪いとどめを刺す、68分、2点リードの状況の中、チョウ監督が最初に切った交代カード(坪井慶介OUT 奈良輪雄太IN)にはこのような意図が込められていたとチョウ監督は振り返る。
1点を返されたのは、その3分後だった。この状況における2ー1は、俄然、追いすがる側に勢いを与えてしまうものである。
「あの時間帯(残り15分)に僕が指示を出しても選手たちは、分かりました!といって動くわけがないんですよ。選手自身の判断が99%です。
だから、交代選手を見て、あ、チョウさんは攻めたいんだなと、そのアクションで全員が共有できることが大事ですが、3点目を取りに行くというメッセージが促すことができなかった。と僕は思っている。」とつづける。
「僕の中では2ー1で勝つよりも、2ー2にされてよかったと思っている、今後のためにも。こういう状況で勝点を落としたことで、僕も本気で反省できる。そういう意味では、全部前向きに捉えている。
ただ、監督というのは、交代した選手がゴールを決めて、采配勝ちと言われるかもしれないけど、それは全く違っていて、それは出た選手がそういう気持ちでやったことで、勝ったわけですから。
采配が当たったなどということはほぼない。流れを助長するような采配をすべきだと思う。あくまでもやるのは選手であり、残り15分で僕が何を言おうが選手が言うことを聞くとは思っていない。そういうことも含めて、選手はよくやったと思う。」と会見を締めくくった。
湘南は今節を終えて7戦無敗。首位湘南を追走する2位福岡、3位名古屋共に引き分けたため、順位に変動はなかった。
上位チームが揃っての足踏みとなった今節だが、長きに渡るJ2において、この夏場の戦いは一つの山場になるのではないだろうか。
いままでも、これからも、いつもでもベルマーレはFUJITAと共に
最後に一つの追記しておきたいのが、湘南ベルマーレは、この一戦を『フジタスペシャルデー』と位置付けていたことである。
1999年、不況の煽りを受けてスポンサー撤退を余儀なくされたフジタ工業が、18年振りに再びユニフォームパートナーとして復活したその記念日として、スタジアム周辺では、『フジタ復刻ユニフォーム』が販売され、様々なイベントが催された。
歴史を知るコアサポーターにとってこれほど嬉しいことはないのであろう。横断幕を掲げ”FUJITA”を彩ったコレオグラフィーを披露したゴール裏のサポーターを眺めながら、湘南ベルマーレの新たなる第一歩を感じずにはいられなかった。
本ライター勝村大輔氏のサイトでフォトギャラリーを掲載されております。是非、ご覧くださいませ。