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ブンデスリーガ2部のFCインゴルシュタット04に移籍する関根貴大選手と移籍先クラブ

扇ガ谷 道房

2017/08/13 10:30

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NEWS

浦和レッズの関根貴大選手の電撃移籍が発表されました。関根選手よ、お前もか!と、お嘆きのレッズサポーターの方もおられれば、積極的な海外挑戦を評価しているレッズサポーターもおられる事でしょう。
贔屓クラブの選手が海外移籍をするというのは、サポーターにとって少し複雑な想いがあるものです。悲しい気持ちと嬉しい気持ちが交錯します。
目下の浦和レッズは、不調の波の真っただ中にあって、復活のプロセスがまだ見えない状況ですから、このタイミングで浦和レッズの宝がクラブを離れる事は、極めて複雑な感情を持つ状況かもしれません。

浦和レッズジュニアユースからの生え抜き選手のブンデスリーガ移籍は、関根選手本人が身近な目標としているヘルタ・ベルリン所属の原口元気選手以来の事です。
移籍するFCインゴルシュタット04というクラブの名前は、余り知られていないので、今回は関根選手の生い立ちと、移籍先クラブについて、ご紹介致します。


by urakenplus

真骨頂はドリブル突破力

関根選手は1995年埼玉県鶴ヶ島市生まれ。浦和レッズジュニアユース、浦和レッズユース、トップチームと、浦和レッズのエリートコースを駆け上がったサッカー優等生少年でした。
現在の身長は167cmとクレジットされている様に、サッカー選手としては極めて小柄な体格が特徴的です。
  
サッカー以外のスポーツ全般に言える事ですが、小兵の選手はテクニシャンが多いものです。ご多分に漏れず、関根選手の最大の特徴であるドリブルのテクニックはJリーグ有数です。
  
サッカーの醍醐味は様々。見どころ満載だからこそ、観ていて楽しいのです。中でも、相手の防御をやすやすとドリブルでくぐり抜けて行く事ができる選手の姿は、多くの観客を惹きつけるものです。関根選手には天才的なドリブルの才能があります。
  
二種登録でトップチームに昇格したばかりの当時、当然無名選手ですから、よっぽどユースのゲームや練習に精通している浦和レッズサポーター以外、関根選手の存在もプレイスタイルもわかりません。
  
埼玉スタジアムにリーグ戦で登場したての頃、とにかく若い小さな選手だと言う第一印象でしたが、逸材であるという事は、目の肥えた埼玉スタジアムの多くの浦和レッズサポーターの意識に即刻記憶される事になりました。
  
新人とは思えない度胸で、どんどん相手選手にしかけて行くのです。ドリブル突破を試みるのです。筆者も埼玉スタジアムでデビュー間も無い関根選手の雄姿を何度も観ていますが、胸のすく想いで虜になった一人でした。
何せ果敢。右サイドからPAに突っ込んで、フェイントをしかけ、ドリブルで抜き、ゴールに迫るのです。とにかく毎試合爽快なプレイを魅せてくれるウインガーです。
  
右サイドで関根選手にボールが渡ると、サポーターからドリブル突破を期待するうねり声が上がるのが常です。
これが関根選手の真骨頂です。Jリーグ屈指のドリブル突破能力の持ち主と言えます。
  
今回、ブンデスリーガへの移籍が叶ったのも、関根選手が毎試合果敢にドリブル突破を試みる姿が、大きな要因である事は間違いありません。

同じ背番号24を背負った者どうし

浦和レッズの歴史の中で、ジュニアユースから純粋にトップチームに昇格して大成功した選手の筆頭格は、現在ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンで活躍している日本代表の原口元気選手である事は、https://shooty.jp/10374でご紹介済ですので、ご参照下さい。
  
関根選手は原口選手の4歳年下。関根選手がトップチームに昇格した時、原口選手はまだ浦和レッズに在籍中でした。しかし浦和レッズのトップチームでチームメイトであったのはたったの数か月だけ。その年の5月に原口選手はヘルタベルリンに移籍してしまったからです。
  
それにしても関根選手と原口選手は生い立ちが似ています。ジュニアユースからの生え抜き選手であり、ドリブルが得意な攻撃的な選手でもあり、背番号24であり、ブンデスリーガのクラブに移籍。瓜二つの生い立ちと言えます。
  
違いは、体格とオールマイティさにあります。特に原口選手の場合、数年前にブンデスリーガのクラブに移籍したという一日の長があるとはいえ、関根選手と比較するとドリブル以外のテクニックにバランスがあります。
  
一方、関根選手は、ドリブル突破に磨きをかける職人のイメージがあります。これからブンデスリーガのクラブに移籍して、原口選手が変化したのと同様に、Jリーグでは通用した事だけではブンデスリーガで生きていけないと感じてプレイスタイルが変化するのか、Jリーグ時代と同じくドリブル職人の道を貫くのか、その行く末は今始まったばかりです。
  
そういう変化がどの様に表れて行くのかをフォローする事も、海外移籍した選手を観る楽しみと言えます。
   

アウディの本拠地クラブ

関根選手が移籍するのはブンデスリーガ2部に所属するFCインゴルシュタット04というクラブです。
ブンデスリーガというのはヨーロッパのドイツのプロサッカーリーグ。世界的なトップリーグと言える高度なリーグです。現在日本人選手が数多く在籍しています。
  
Jリーグと同様にカテゴリーは3部制で、関根選手が移籍するFCインゴルシュタット04は現在2部に所属しています。
ブンデスリーガのクラブの中ではまだ新しいクラブと言えます。クラブの名前を耳にした事が無い方が多いのはその為です。
  
インゴルシュタットという都市にあった二つのクラブが2004年に合併してできたクラブなので、クラブ名に04という数字が示されていますが、母体となったクラブの一つは1905年の設立なので、100年以上の歴史を有するという側面も実はあります。
  
日本でも有名な自動車メーカーのアウディの本社はこのインゴルシュタット市に所在しており、クラブのメインスポンサーになっています。
現在2部に所属していますが、2014年シーズンに2部で優勝し、2015年シーズンに1部に初昇格した経験があります。2シーズン1部に所属していましたが、残念ながら昨シーズンは再び2部に降格してしまいました。
  
つまり、多くの日本人選手が所属している1部のクラブではなく、2部に定着している中堅クラブと言う事ができます。
  
ちなみに、FCインゴルシュタット04には、無名ながら日本人選手が在籍しています。渡邊凌磨選手20才。前橋育英高校から早稲田大学に卒業し、ナイキのアカデミー経由で2015年9月にインゴルシュタットU-23に加入しました。今シーズンからトップチームに昇格しています。
  
埼玉県東松山市出身。関根選手の出身地である鶴ヶ島市とは、坂戸市を挟んで向こう隣りという関係性です。
 

by kbumm.de
 

 

海外クラブに移籍する意味

ブンデスリーガとは言え、何故浦和レッズを捨てて2部のクラブに移籍するのかといぶかる方もおられるでしょう。どうせ移籍するのなら1部の有名クラブが理想的に映るのも無理からぬ事です。
  
又、ミハエル・ペトロビッチ前監督が事実上更迭されてしまったばかりの今の浦和レッズの立場を考えれば、クラブにとって重要なピースである関根選手が海外移籍してしまう事に反対したい方もおられるでしょう。
  
然しながら、一般社会人の人生とは違い、短い選手生活の間で、海外のクラブからのオファーというチャンスがどれだけあるのかという事を考えると、数少ないチャンスに際して、選手はかなり苦渋の決断をする筈です。
  
自らの置かれている立場を多分わかっている筈の関根選手にとって、今の浦和レッズの完全なる復活が成し遂げられていない状況下、恐らく悩みぬいた決断だと筆者は想像しています。
  
海外移籍するのであれば、ヨーロッパ主要リーグの1部に所属する有名クラブが移籍先であれば華やかです。前例で言えば、マンチェスター・ユナイテッドに移籍した香川真司選手や、ACミランに移籍した本田圭祐選手等、ビッグ・クラブに移籍し、トップチームでスタメン出場した日本人選手もおられます。
  
しかし、その数は少ない上に、スタメンを定着させて、複数年契約できている選手は極めて少ないのが現状です。今までの日本人選手の海外移籍の前例を考察すると、必ずしもビッグクラブへの移籍が望ましい結果とは言い難いと言わざるを得ません。まだその力量に相応しい日本人選手は多いとは言えない状況です。
  
サッカー選手に限った話ではありません。一般サラリーマンであっても同じではないでしょうか。有名大企業に就職する事が幸せである訳ではありませんし、小企業であったも存分の活躍ができて報酬が良い会社もあります。
  
つまり適材適所は人それぞれ。1部だから良く、2部だから悪いとは限りません。むしろ現在の関根選手の経歴とフィジカルでは、ヨーロッパトップリーグのビッグクラブに移籍しても、出場する事すらできないかもしれません。
  
関根選手には、小さな時から海外クラブで活躍したいという夢があったそうです。そのチャンスがプロ数年で目の前にやって来たのです。チャンスに懸けない理由がありません。
  
2部のクラブだからこそスタメン出場できるかもしれない。2部のクラブを1部に昇格させる原動力になれるかもしれない。憧れの原口選手と対戦できるチャンスがあるかもしれない。
  
関根選手は今、ドイツの地で花開こうとしているのです。
  

浦和レッズの右サイドハーフで攻撃参加する関根選手を観る事ができなくなるのはとても残念な事です。
浦和レッズ視点で損失と観る事もできますが、タレント豊富な浦和レッズにあっては、新たな選手が新たな息吹をスタジアムに吹かせてくれる可能性も大です。
又、浦和レッズで果敢にドリブルで攻撃参加していた関根選手の力量が、ブンデスリーガ2部でも通用するのか、新たなスキルの花を咲かせるのか、お茶目なパーソナリティがドイツ人に理解できるのか、楽しみは尽きません。
注目してみましょう!

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