本田圭佑の「復活」を期待して

11月15日のサウジアラビア戦をもって2016年の日本代表の試合は終了しました。次回は来年の3月23日まで期間が空くことになります。まずはハリルホジッチJAPANのこれまでの戦績と今後の予定を確認してみましょう。

by Football LAB

by JFA

2016年の日本代表を振り返ると、主力選手に変化が起きています。ACミランの本田圭佑選手はチームで出場機会を得られず代表でもこれまでの絶対的な存在からベンチスタートの試合も増えるなどの状況です。今冬に移籍するという噂も多く、移籍先として中国のクラブがオファーを出している模様です。ドルトムントの香川真司選手は定期的に出場機会を得ているものの安定してスターティングメンバーに名を連ねることができていません。セビージャの清武弘嗣選手は開幕時こそアシストなどの記録を重ねていたもののナスリ選手の加入後はベンチを温めている状況です。一方でヘルタ・ベルリンの原口元気選手はチームで安定してピッチに立っており代表でも絶対的な存在へと変わりました。

今回は最近の本田圭佑選手のピッチ内外での状況を振り返るとともに、「復活」を期待してエールを送りたいと思います。

「ベテラン」の向き合い方

一般的に、サッカー選手は20代後半でピークを迎えると言われています。年齢を重ねるとともに経験を重ねることと、20代後半から身体的な能力が落ち始めることが理由ですが、必ずしもそれが全ての選手に当てはまるわけではありません。また野球の話ですが、先日イチロー選手が未だに足が速くなっているという発言をしており、身体能力の低下についても単純に鵜呑みにしたくありません。

さて本田圭佑選手は現在30歳です。本田選手がまだ可能性を秘めているとはいえ、すでに「ベテラン」と呼ばれる域に入っております。上の動画で見てもらえばわかる通り、これまでの上り調子であった頃と比べると現在のプレーに勢いがないことがわかります。特に現在は右ウイングのポジションで、タッチライン際でのプレーのためスピード感の欠如が如実に見て取れます。

フリーライターの杉山茂樹氏はピーク時に現役引退を決意した中田英寿氏と、49歳の現在もなお現役として活躍をしている三浦知良選手を引き合いに出しながら本田選手のプレーを批評しています。もしピーク時の引退という考え方であれば恐らくブラジルワールドカップのタイミングということになるのでしょう。本田選手はそれをせずにロシアワールドカップを目指すという判断をしました。

上の動画は東日本大震災チャリティーマッチでの三浦知良選手のゴールです。ともに戦っていた解説者によると、裏への抜け出しのスピードが今まで見てきた中で最も速かったとのことでした。もちろんこれは主観ですので本当のところはわかりませんが、40歳を超えても進化し続けられるということです。しかし、皆さんも知っているでしょうが、毎年シーズン前から1人でトレーニングを積むなど、簡単ではないことも事実です。

さて筆者の個人的な感想ですが、今シーズンの本田選手は心肺機能が低いような気がします。原因としてはメンタル面の問題かトレーニング不足が考えられます。メンタル面に関しては、これまで世界一のサッカー選手になる、ワールドカップで優勝するなどビッグマウスを続けてきましたが、最近ではあまり聞かれなくなりました。キャリアの終わりを意識してしまい、これまでのようにうまく気持ちを奮い立たせるのが難しくなってきたのかもしれません。また、今夏のシーズンオフに十分なトレーニングを積めていないことも考えられます。次のセクションで触れますが、「経営者」としてあちこちに顔を出していたため移動の疲れやトレーニング不足などがあったかもしれません。

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もう一度三浦知良選手の話に戻ると、恐らく本田選手はカズ派というわけでもないと思います。「経営者」としてのビジョンをすでに持っているからです。しかし「ベテラン」選手として、本気で日本代表でロシアワールドカップに出場することを考えれば、もう一度トレーニングから見直しする必要があるでしょう。

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これまで本田選手はトップ下やウイングなど2列目のポジションでプレーしてきました。インタビューでも「ゴールに近い位置でプレーしたい」と語っており、強いこだわりを持っています。しかしもともとスピードのある選手ではない上に、身体能力の低下も見られ、もはやサイドでのプレーに無理が来ています。ポジションを下げるかどうかはともかく、ピッチ中央でプレーすることが望ましいでしょう。

「経営者」本田圭佑

テレビ東京『FOOT×BRAIN』、ソーシャル経済ニュースアプリ『NewsPicks』などで特集が組まれたりしているので知っている方も多いと思いますが、本田選手はサッカースクール「SOLTILO FAMILIA」を開設、オーストリア・SVホルンの経営に参入、MIT特別研究員など「経営者」としての活動も精力的に行っております。またサッカーの育成問題だけではなく教育問題全般に興味を持ち、この夏は東南アジアなども回っていました。

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日本の教育、育成問題に切り込む

『NewsPicks』の特集の中で、本田選手は元ライブドア社長の堀江貴文氏と対談しており、その中で人材を最大の資源と捉え教育の重要性に関して共鳴しています。三つ子の魂百までという諺にもある通り、3歳までに何をするのか、サッカー、そしてスポーツというフロンティアを突き進むイノベーターとして大きなビジョンを抱えています。現在、サッカー先進国と比較して日本のサッカーは確実に遅れをとっています。なでしこJAPANキャプテンの宮間あや選手が以前「女子サッカーを文化に」と発言しましたが、サッカーを文化にしていく上で育成問題の改善は避けては通れない課題でしょう。

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近年の日本代表、そして日本サッカー全体が低迷気味にある中、将来について高いビジョンを持ち実行に移している本田選手に、筆者は非常に注目しています。そんな彼の「サッカー選手」としての部分に、今一度期待が持てるように。「復活」を祈り、日本サッカーのさらなる発展を願って今回の文章を締めたいと思います。

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