大宮アルディージャを支える遅咲きのMF横谷繁~J1昇格初年度でクラブ史上最高5位の躍進に大貢献!
明治安田生命J1リーグはレギュラーシーズンの全日程を終了。チャンピオンシップを残すのみとなりました。
そんな今季のJ1リーグで旋風を巻き起こしたのは、今季からJ1に昇格して来た大宮アルディージャ。最終節を勝点56の4位で迎え、来季のAFCチャンピオンズリーグ出場圏内となる年間3位の可能性も残していた大健闘ぶりでした。
2009年のサンフレッチェ広島(4位)、2010年のセレッソ大阪(3位)、2011年の柏レイソル(優勝)、2012年のサガン鳥栖(5位)、2014年のガンバ大阪(優勝)など、近年のJ1リーグではJ2からの昇格組の躍進が目立ちます。
しかし、彼等の多くはそれ以前にもタイトル獲得の実績があるか、優勝争いの経験があるなど、もともと実力を備えていたクラブ。逆に今季の大宮は最終的には5位に終わったものの、2012年の鳥栖に続くビッグサプライズ的な大躍進でした。
実際、大宮は2005年にJ1に初昇格し、以後10シーズンJ1に定着したものの、その間の最高成績は2006,2008,2010年のJ1・12位。年間勝点も2013年の45ポイントが最高でした。
そんな大宮にとっての2016年シーズンは、クラブ史上最高の5位と同最多勝点56を記録する歴史的なシーズンになりました。
役割=ゲームプランの万能型MF横谷繁
そんなチームを牽引したのはJ2時代の昨季から2トップの1角に定着したMF家長昭博選手。昨季の11得点6アシストに続き、今季も26試合の出場で11得点5アシスト。リーグベストイレブンの可能性もあるチーム最高の選手であるのは間違いありません。
ただ、今季は負傷離脱もあった天才肌の家長選手とプレーの感性が合い、尚且つプレー範囲が広くて、密集地帯での競り合いでも空陸両面で強さを発揮できる万能型のMF横谷繁選手の存在も見逃せません。
今季は31試合(出場停止2試合)に出場した横谷選手は3ゴールとチーム最多の8アシストを記録。得点への関与という部分では特にセットプレーのキッカーとして際立っていました。
また、ボランチと2列目、サイドをオールラウンドにこなす横谷選手は、複数のポジションで起用され、その役割も試合によってチームで最も変化する選手だと言えます。横谷選手へ与えられた役割こそが、大宮のゲームプランそのものとも言えるほどです。
『G6』の遅咲きMFが、京都でFWとして開花
2006年にガンバ大阪のユースからトップチームに昇格した横谷選手。当時は同時に6選手が昇格した事で、通称『G6』と言われました。ユース時代は得点も獲れる司令塔タイプのMFとして活躍し、体格も似ている事から『ポスト・遠藤保仁』と期待されていました。
ただ、同期のDF/MF安田理大選手(今季・名古屋グランパス)、FW平井将生選手(現・アビスパ福岡)がJ1で活躍し、日本代表やその候補となっていく中、横谷選手には全く出場機会がなく、最初の2年間はリーグ戦出場ゼロ。
遠藤選手だけでなく、橋本英郎選手(現・長野パルセイロ)、明神智和選手(今季・名古屋)、二川孝広選手(現・東京ヴェルディ1969)による『黄金のカルテット』と呼ばわれる4選手が在籍していたこともあり、さらに5人目の中盤には当時もチームメイトだった現同僚の家長選手も在籍しており、その5人全員が代表経験者。当時のG大阪の中盤には実力者が揃っていました。
プロ3年目となる2008年、横谷選手は出場機会を掴むためにJ2・愛媛FCにレンタル移籍し、2年間で81試合に出場。しかし、武者修行を積んでG大阪に復帰したものの、2010年から2012年までの3年間でJ1リーグの出場は僅か18試合。先発出場は僅か1試合に限られました。
そんな中、2013年はJ2の京都サンガへレンタル移籍。片道切符となる不退転の覚悟を決めての移籍になりました。
その京都で開幕直後から先発に定着した横谷選手は、夏にスイス・ヤングボーイズへ海外移籍した現・日本代表FW久保裕也選手の穴を埋めるため、シーズン中盤戦以降はセンターフォワードに定着。当時の大木武監督による流動的なパスサッカーが浸透していたチームの最前線で、身体能力の高さを活かしたポストプレーをこなしながらも、MFらしいパスセンスや機動力で違いを作りました。
また、当時から現在の大宮でも大きな信頼を獲得しているセットプレーのキックも全て任されており、結局2013年シーズンは37試合の出場で11得点11アシストを記録して大ブレイク。京都への完全移籍も決まりました。
家長・播戸・沼田と共に元ガンバ戦士が揃う大宮
その後、2015年にJ2へ降格して来た大宮に完全移籍で加入した横谷選手。昨季はJ2でも8得点7アシストを記録し、見事にJ2優勝によるJ1昇格に貢献。
そんな大宮では横谷選手と家長選手以外にも、元日本代表FW播戸竜二選手やDF沼田圭悟選手と、元G大阪の同僚とチームメートとなっています。
沼田選手は怪我により第2ステージは欠場が多かったものの、G大阪では出場機会に恵まれなかった選手達がチームの軸となっており、横谷選手は今やそんなチームの攻守の要です。
尚、以前にも当コラムでも紹介した播戸選手は今季のリーグ戦で1試合の途中出場(6分間)のみで終えましたが、彼が加入したセレッソ大阪やサガン鳥栖、大宮は本人の出場と関係なく著しくチーム成績が上昇し始めます。逆に退団後は大阪の2チームがJ2降格に陥るなど、ピッチ外での影響力の大きさが際立ちます。家長選手が播戸選手とチームメートだったシーズンのみに大活躍しているキャリアも偶然ではないでしょう。
29歳となって初めてJ1でも主力を張ったMF横谷繁選手。天皇杯でもベスト8に進出している大宮。初タイトルまで狙えるチームを支える活躍ぶりには、大阪・京都など関西の長くサッカーを観るファンからも暖かい拍手が送られる最高のシーズンとなっています☆