J3に所属するAC長野パルセイロに元スイス代表GKジョニー・レオーニ選手が入団。彼は日本を含めて5カ国のクラブに所属してきた国際経験豊富な選手です。驚異的な反射神経でACミランを倒す大金星をあげたり、2010ワールドカップ南アフリカ大会のメンバーに選出された過去もありました。今回はレオーニ選手が長野に何をもたらすのかも含めて紹介していきます。
by Tweez
レオーニ選手の経歴
レオーニ選手はスイスのシオンに生まれ育ち、地元クラブであるFCシオンの下部組織に入団してから、彼のキャリアが始まります。2001年、17歳でトップチームデビューを果たしました。その後、自慢の反射神経と安定したセービングで、国内屈指の強豪であるFCチューリッヒに加入します。チューリッヒでは、リーグ戦223試合79クリーンシート(無失点試合)を達成します。特筆すべき成績は、2005-2006と2006-2007のリーグ連覇に貢献したことです。
FCチューリッヒ時代のレオーニ選手by Alchetron
チューリッヒでの活躍が評価され、2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会でスイス代表に召集されます。試合には出れませんでしたが、スイス代表に帯同してW杯に行けたことは、大きな経験であるとスイス紙「Neue Zürcher Zeitung」で語っています。
その後、彼はキプロスのオモニア・ニコシア、アゼルバイジャンのネフチ・バクー、ポルトガルのCSマリティモとクラブを転々としますが、主立った結果を残すことはできませんでした。2014-2015シーズンはスイス2部のFCル・モンでゴールマウスを守りました。
今季長野に加入したレオーニ選手は、第15節から出場。その後、安定した活躍で守護神の座に定着しました。6試合中3試合の無失点試合を記録して、好調を保っています。同クラブのJ2昇格の「切り札」として、活躍が期待されています。
レオーニ選手のプレースタイル
彼の最大の持ち味は、超人的な反応の一言に尽きます。189㎝の長身を活かしたジャンピングや至近距離のシュートを弾くセービングは目を見張るものがあります。スイスリーグや国際大会でもビッグセーブを連発し、チームの躍進に一役買いました。
短所は、簡単なハイボール処理でもパンチングで逃げてしまう癖と加齢によるコンディション低下が危惧されます。反射神経を武器にするタイプのGKは、30代を境に能力が落ち込むことが常々あります。それらの点を踏まえて、レオーニ選手がJリーグや長野のサッカーに適応し、安定した活躍を継続できるかが課題となります。
ACミランをジャイアントキリング
UEFAチャンピオンズリーグ2009-2010シーズンにて、FCチューリッヒは歴史に残るジャイアントキリングを達成します。2009年9月30日にFCチューリッヒはACミランを1-0で下しました。当時のACミランは世界でも有数の強豪チームであり、ロナウジーニョ選手やインザーギ選手などの名手も在籍していました。
試合内容は前半10分にコーナーキックからハンヌ・ティヒネン選手がヒールキックで先制点を決めてから、ミランの一方的な猛攻にチューリッヒが耐える展開が続きました。守備陣は烈火の如く攻めてくるミランに対して、身体を張った守備で対抗。レオーニ選手も驚異的な反応でシュートを弾き続けます。彼はロナウジーニョ選手の芸術的なフリーキックやインザーギ選手の鋭いシュートも全てシャットアウトしました。
ACミランと対峙するレオーニ選手by Blick
対するチューリッヒの攻撃陣も黙っていませんでした。隙を見て、サイドを広く使ったカウンターで決定機を演出します。ミランもチューリッヒの鋭いカウンターに手こずるなど素晴らしい試合展開になりました。
当初圧倒的にミランが優勢と誰もが考えていましたが、蓋を開けば1-0のジャイアントキリング。この歴史的大金星はレオーニ選手がいなければ、達成することはなかったでしょう。
レオーニ選手は違いを作れるか?
レオーニ選手はJリーグで違いを作れる選手になるのでしょうか。恐らく決定的な違いを作れる選手になると編集部Dは考えています。
一つは欧州人GKの質が高いことです。既にジュビロ磐田で傑出した活躍をしているカミンスキー選手は、昨季J2でチーム昇格の原動力となりました。同じくジュビロ磐田に在籍していたアルノ・ヴァンズワム選手が残した偉大な記録に注目です。彼は黄金期の磐田で守護神として君臨し、通算防御率0.89(74試合66失点。2700分以上出場したGKを対象)というJリーグ記録を達成。このように、Jリーグに来た欧州系GKは飛び抜けた成績を出しています。実際に、レオーニ選手は6試合中3試合を無失点で活躍中です。
AC長野パルセイロのゴールマウスを守るレオーニ選手by Tweez
二つ目は経験です。彼は日本を含めて5カ国を渡り歩いてきたキャリアがあります。イタリアの伝説的GKのディノ・ゾフも「ゴールキーパーはワインと同じ。年を重ねるほど味が出る」と名言を残しているように、GKにとって経験は高いウェイトを占めています。レオーニ選手のようにACミランを倒した実績やW杯に選出された経験を持ったGKは、中々Jリーグに移籍してきません。つまり、彼はワインで当て嵌めると相当高級なワインである可能性が高いのです。
レオーニ選手が試合に出場し出してから、長野は6戦2勝2分2敗の結果を残しました。まだ加入したばかりというのもありますが、彼が日本の環境に適応すれば違いを作り出す可能性が非常に高いです。長野でチューリッヒ時代と同じ活躍ができるようになれば、長野はJリーグに旋風を巻き起こすかもしれません。