監督交代で激変!柏レイソルで起こった「構造改革」を科学する!【注目選手編】
柏レイソルが監督交代を機に完全にチームが生まれ変わっています。公式戦7戦未勝利で始まったシーズンでしたが、明治安田生命J1リーグ第1ステージでは第6節から第10節まで5試合連続で完封勝利と公式戦8戦無敗を記録。下平隆宏新監督の就任後の成績は、J1リーグが5勝3分1敗、Jリーグヤマザキナビスコカップは2勝1分1敗。合わせると、公式戦13戦7勝4分2敗。まさにV字回復しています。
前回の項で監督交代の経緯やチームとしての変化について触れて来ましたが、今回はそのV字回復に至った流れで活躍している【注目選手編】として選手個人にスポットライトを充てたいと思います。
前回の記事
『監督交代で激変!柏レイソルに起こった構造改革を科学する!【チーム編】
昨年までユース監督を5年間務めた下平新監督~クラブの哲学と愛弟子の能力を適材適所で活かす
J1リーグ開幕から僅か3試合で監督交代が発生した今季の柏。急遽監督に就任した下平監督の下でV字回復したチームですが、それほどミルトン・メンデス前監督体制下のチームから主力選手が変化したわけでもありません。強いて言えばドリブル突破を武器にするFW大津祐樹選手やゴール前の点取り屋タイプのFWエデルソン選手の序列が下がり、ボランチや中盤のセンターで激しく動き回れる選手をピッチ上に1人増やしたぐらいのマイナーチェンジに止まっています。
それで結果を即座に引き出せたのは、下平監督が2010年から5年間をクラブの高校生年代に相当するU18チームの監督として指揮していたから。クラブの哲学を深く理解している下平監督が実際に育成年代で直接指導して来た選手が多いチーム編成になっているのです。先発11選手の平均年齢が22歳代になることもあり、そのうちの7,8人が下部組織出身選手で固まっているのも偶然ではありません。
戦術的には選手間の距離が近くなった事でチーム全体がコンパクトにプレー。パスワークにも冴えを見せると同時にプレッシングが連動できるようになったため、ボール際の競り合いでも強さを発揮するようになりました。現代サッカーで重視されるインテンシティ(プレー強度)が高くなったとも言えます。ボランチをこなせる選手が増えたのもこの辺りに必要性があったのでしょう。
注目はリオ五輪世代の両ワイド~右の伊東、左の山中ら若手が躍動中
by 日立台広報日記
3バックと4バックを併用するなどシステムも柔軟に使いこなす下平監督ですが、どんなシステムでも両ワイドに陣取るポジションに入る右の伊東純也選手(上記写真)と左の山中亮輔選手を活かす約束事も活きています。具体的にはどちらかのサイドが後ろを全く気にせずに最前線まで駆け上がって攻撃参加すること。ただし、逆サイドの選手は完全に後方に止まるカヴァーリングが原則です。
これにより、右サイドを務める新加入の伊東選手は自慢のスピードを持ち味とした攻撃力を遺憾なく発揮。サイドバックとは思えないほど多くの得点に直接絡んでいます。昨年まではヴァンフォーレ甲府でFWとしてプレーしていた選手なので攻撃力を押し出すのは当然ですが、それを活かす術を下平監督は導入したと言えるでしょう。左サイドの山中選手はセットプレーのキッカーとしてやクロスなど、左足の精度の高いキック力を活かし、逆サイドの伊東選手がドリブル突破やスルーパスに走りこむ”ラン”に特徴があるのとは違うのもアクセントとして効果的です。
この両ワイドで存在感を発揮する23歳の2選手が、共にリオディジャネイロ五輪代表候補のU23日本代表に選ばれたのですが、ともに代表合宿で負傷してしまったのはチームにとって痛かったでしょう。幸い軽傷にとどまっていますが、今季から守護神を務めるGK中村航輔を含めて彼らのリオ五輪メンバーへの選出次第ではチームに大きな変化が出るでしょう。
他にも下平監督就任後にレギュラーに定着したMF小林祐介選手や大幅に出番を増やしているMF中川寛斗選手は共に21歳の下部組織出身選手。彼らは技術力の高さを活かして中盤で変化を加えながらも、運動量の多さで攻守の切り替えを繋ぐ重要な役割を現在のチームで占めています。
by 日立台広報日記
また、リオ五輪代表候補のGKの中村選手(上記写真)は昨季J2だったアビスパ福岡にレンタル移籍。出場したのは20試合だったものの、レギュラーに定着した9月には「J2月間MVP」に選出。以降は12試合で9完封。2010年以降J2で1000分以上出場したGKの中でトップとなるセーブ率87.3%を記録し、見事にチームのJ1昇格に大きく貢献しました。
その中村選手と同様に、中川選手や山中選手、FW武富孝介選手らは下部組織出身ながらもレンタル移籍を経験してから柏に復帰して定位置を掴んだ選手であるのも特徴です。
得点数以上に存在感を示す優良ブラジル人FWディエゴ・オリベイラ
by Jleague.jp
そして、何といっても最前線に陣取る新加入のブラジル人FWディエゴ・オリベイラ選手。179cmと長身ではありませんが、屈強なフィジカルを持つ彼のポストプレーとキープ力が若いチームに粘り強さをもたらしています。両足、ヘッドと強烈なシュート力を持っていながら未だ3得点と目立った数字は残していませんが、守備でも献身的な姿勢を見せているディエゴ・オリベイラ選手は今後も日本で長くプレーすることになる名物外国籍選手になりそうです。
ディエゴ・オリベイラ選手以外の外国籍選手は活躍できていませんが、チームには大津選手やFW田中順也選手のように海外移籍を経験してから戻って来た選手がおり、彼らが”助っ人”のような経験者としてチームを支える力となってくれています。
J1リーグの第1ステージも残り5試合。ナビスコカップのグループリーグも残り2試合。ここでシーズンの途中経過がはっきり出ます。監督交代の劇薬は投じましたが、その「通信簿」は10段階で8以上にはなるだろう若手集団の今後に注目です!