「アジアの壁」と呼ばれた男がいた。
連続試合出場の記録に名を連ねる「鉄人」と呼ばれた男がいた。
現在では世界最高峰のリーグで戦う屈強な男が体を張り続ける。
プロリーグ発足から急速に成長を続けてきた日本代表にはどの時代にも圧倒的な存在感で海外のアタッカーを凌駕する強固な「門番」が君臨した。そしてこれからの日本サッカーにおいて、若くしてその重責を担うであろう男がいる。ベルギー一部リーグ・シントトロイデンで活躍する冨安健洋だ。
【ハーフタイム】ボリ選手の2ゴールで攻勢に出るも、38分に失点し試合は拮抗した展開のまま前半終了。#シントトロイデン#鎌田大地#冨安健洋 #関根貴大#木下康介#コトシハSTVVモハンパナイ pic.twitter.com/hBZUD0yreu
— シント=トロイデンVV (@STVV_JP) 2019年2月24日
悔しさと共に刻まれた躍動の記憶
準優勝に終わった2019UAEアジアカップ。20歳の冨安はレギュラーとしてピッチに立つ。初戦のトルクメニスタン戦ではダブルボランチの一角として、その後は決勝のカタール戦まで本職であるセンターバックとして日本代表を支えた。
吉田麻也や長友佑都らベテランをはじめ、酒井宏樹や槙野智章らワールドカップ出場経験のある日本のデフェンス陣の中で堂々たる存在感を発揮する。身体能力のみならず経験も重要視されるポジションにおいて、年上のプレーヤーたちに臆することなく自らを表現し、アジア強豪国の攻撃陣から日本のゴールを守り続けた。準々決勝のサウジアラビア戦では決勝ゴールを挙げる等、攻守にわたるプレーを海外メディアからも高い評価を受ける。
優勝したカタールの台頭などアジアの勢力図にも変化がみられた大会として記憶される2019アジアカップ。我々にとっては悔しさと共に、青いユニフォームの新たな「門番」が誕生した戦いの場としても心に刻まれる大会でもあった。
日本サッカーを支える冨安の成長
初の世界大会となった3年前の韓国で行われたU20ワールドカップ。冨安はこの大会でも全試合に出場、センターバックとして相手の攻撃を跳ね返す役割をこなし続けた。 堂安律、小川航基、久保建英ら攻撃陣が大いに話題となったが「支柱」は冨安だった。
昨年、10代にして欧州クラブへの移籍やA代表へ初選出されるなど、センターバックとしては前例にないスピードでステップアップを続けている。年代別代表でも活躍し、早くから海外移籍を望んでいた冨安が見据える未来は壮大な野望に満ち溢れているはずだ。
現在所属するシントトロイデンではプレーオフ1へ出場を果たすべく最終盤を迎えたリーグ戦の真っ只中だ。今シーズンは開幕からレギュラーとして、出場した試合では全てフル出場を果たしており、クラブではもはや欠くことのできない重要なピースとなっている。自身も「(残り試合を)集中を切らさずにやりたい」と熾烈なプレーオフ圏内での戦いが続く中、気持ちを緩めることは無い。
この先、さらなる成長を遂げ、欧州をはじめ冨安健洋の名を世界中に轟かせるとともに日本代表でもより大きな存在となっていくことは間違いない。代表史に名を連ねる歴代のセンターバックに劣らない存在感、そして若くして誰よりも豊富な経験を持つ「ゴール前の門番」に牽引され、日本サッカーは更なる飛躍を果たすはずだ。世界での戦いを続ける冨安健洋が「日本の最大のストロングポイント」と呼ばれる日もそう遠くないはないだろう。