過激な論調でネット上を賑わしているレジスタンス集団がいる。彼らは自らを錦糸町フットボール義勇軍と名乗る。
錦糸町フットボール義勇軍を率いるのは、赤いヘルメットを被り、ティアドロップのサングラスと赤いタオルマフラーで顔を覆う、何とも怪しい風貌のロック総統。そしてロック総統が従えるのは、ライト曹長とオットナー参謀長である。
時にSNS上で、時にポッドキャストで、時に全国各地のサッカースタジアムに乗り込み、Jリーグ原理主義者と罵り、日本サッカー真の発展を声高に叫ぶ。一見突飛押しのない主張に受け止められがちだが、彼らの主義主張は実に的を得ている。
「今そこにあるサッカーを愛せ!」核心を突くメッセージをユーモアたっぷりに発信する蹴球革命は、瞬く間に全国を席巻し、全国各地に信奉者を生み出すことになる。そして遂に彼らの想いは結実した。
著書『KFG蹴球文化論』のサッカー本大賞2017優秀作品賞受賞を皮切りに、ラジオNIKKEIでレギュラー番組『蹴球革命ラヂヲ』を配信。そして、雑誌『フットボール批評』で連載を開始。
今回のインタビューは、近日発売された、最新刊『KFG蹴球文化論(参)〜革命行脚編〜』の見所を紹介。シリーズ最高傑作と豪語するロック総統の肉声をお届けする。
〜同志諸君 結集セヨ コレハ革命デアル〜
→新刊『KFG蹴球文化論(参)〜革命的行脚編〜』と特設WEBページ
新刊『KFG蹴球文化論(参)』ここが見所!
――さっそくですが、『KFG蹴球文化論(参)〜革命行脚編〜の見どころを教えてください。
(ロック総統)基本的に、この本を売り物にするためにラジオを始めた訳ではないので、最初は本になることに反対だった。だけど参謀長が本にしたいという想いの中に、「こういった紙にすることで総統の言っていることが形として残るから、絶対にやった方が良い」と言っていて、だからこの本は参謀長の思いの形だ。だから、正直なところ、僕はこの本を作るにあたって一銭もお金を出してません。
この本が売上目的ではないという証拠に、この本にはバーコード(書籍JANコード)が入ってません。これが入ることで、増版や本の売り上げ管理ができるのですが、その反面、本の値段が高くなってしまう、ページ数も減ってしまうんですよ。
だから最初から売り切ってしまえばいいやと。なので儲けは殆どありません。費用対効果に置き換えると微々たるものです。前書きを書いたライト曹長やまた、本を作ってくださった編集者さんの粋な心遣いで作ってくれていますから。そう意味ではみんなの気持ちで作った本です。
このシリーズ(参)の一番の見所は、何といっても僕が唯一書いた『革命的 スタジアム診断』です。(笑)敢えて自分で言いますがかなり秀逸です(笑)。ここに挙げたスタジアムは全て自分の足で行ったところしか載せていません。なかなか見応えがある箇所なのでお勧めしたいですね。
実を言うと、僕は建築に造詣が深いのですが、日本の建築こそ世界一だと思っています。特に公共施設は公団的かつ画一的で面白味はないのですが、その分しっかりしたものを作る、無駄にお金を掛けているところがある。だからこそスタジアム建設は慎重に進めなければならない。自治体に多額のお金を出してもらわなくてはいけないのですからね。
よく立派なスタジアムを作ればお客さんは来ると言いますが、果たして本当にお金を出す側の市民が納得しているのか。「この街にはサッカースタジアムが必要だよね。」市長さんも議員さんも全員が賛成、市民も全員が賛成、作るんだったら俺も金出すよ。そういう風になってきてはじめて新しいスタジアムができるべきなのかなと思う。
先にスタジアムを『えいやっ!』って作って、Jリーグを目指すチームがあと付けで入る。そのやり方ではなく、たとえ不恰好なスタジアムでも満員になる。アクセスが悪くても満員になる。Jリーグを目指さなくても満員になる。「ここら辺、渋滞するからいい加減、新しいスタジアム作ってよ、市長!」こういう声が溢れてから新スタジアムは出来上がるものかなと思う。それが僕の言う”熱”です。
その熱がないのに、スタジアム建設に何億円もかけて。そういう話をよく聞くじゃないですか。特に地方では。もうアホですね。ガソリン代1円でも安いところ探すくせに、税金の使い道は無頓着。スタジアム作る金で老人ホームを10個作った方がよっぽど田舎には良いですよ。サッカーなんて原っぱでいいんですよ。たかだかサッカーするのに見るのに何でそんなに高額なスタジアムが必要なのか。それがないとJ1に行けません、それがないとJ2に行けません、アホかと思いますよね。その矛盾をサッカーファンが言わなきゃ社会に対してのエゴになるんです。
『ロック総統の革命的スタジアム診断』
――ロック総統が見どころに挙げている章、『ロック総統の革命的スタジアム診断』について話を進めていきたいと思います。特にJリーグファンには馴染みの薄いスタジアムについて伺っていきたいのですが、まずは『徳島市球技場』ここはJ2 徳島ヴォルティスの現ホームスタジアム『鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム』ではないですよね?
(ロック総統)違いますね。ココは徳島ヴォルティスが大塚製薬サッカー部だったころ、旧JFL時代に使っていたスタジアムです。Jリーグにつづく2部リーグがJFLの頃に使っていました。ボクが初めて見たローカルスタジアムですね。何にもない山の上にボン!とある専用スタジアム。コレは素晴らしかったですよ。
――やはりムサリク『武蔵野陸上競技場』も載っていますね。
(ロック総統)実際に訪れてもらうと分かりますが、メインスタジアムの真横に体育館がくっついていて、一旦外に出なくても、メインスタジアムと体育館を行き来できる設計になっているんですよ。
その体育館の奥がプールになっていて、プールの横が野球場とテニスコートになっている。よく地方では、だだっ広いところにドーンドーンと建てられている無駄に広い総合運動公園がありますけど、一つ一つが遠いんですよ。ココは全てコンパクトにまとまっている。東京っぽいなぁと思いましたね。
――どうして『町田市立野津田陸上競技場』が入っているのでしょうか。
(ロック総統)野津田は抜群にブサイクなんです。そこを無理くりに”頑張ってセーフにした感”。ちょっといじってみましたけどイケてますか?的な。ブルゾンちえみみたいに、ブスが化粧をしてギリギリOKみたいな感じが実に可愛らしい。あのスタジアムは中々味がありますね。(笑)
――鳥取県のスタジアムが紹介されてますが、これはとりぎんバードスタジアムではないですよね?
(ロック総統)ハイ、 バードではないです。ガイナーレ鳥取というチームは、元々、米子市のチームでした。Jリーグに上がる時に鳥取市に移転したんです。
そもそも鳥取市と米子市は50キロくらい離れていて藩も別だった。因幡と伯耆で別れていて、それぞれに異なる文化があった。
元々は米子の人たちがお金を集めて作ったチームだったのに、Jリーグに上がった瞬間に鳥取のチームになってしまった。全県支援ですからという謳い文句で。
そうなると、米子の人たちは、せっかく育てたのに鳥取に持っていかれたという想いがあるので釈然としない。米子は商業の街ですから鳥取より潤ってるんですよ。やはり鳥取だけではお金が厳しいから米子も入ってよ、だったら米子でもホームゲームやってよ。そういう経緯があった。
――それに米子市は元来のサッカーどころですよね?
(ロック総統)そうなんです。だから未だに、自分たちのプライドもあるのに、「何で鳥取市でやんなきゃいけねーんだ!」というところがあるんですよ。
その後、Jリーグから、常設の練習場を作りなさいという要請があったのですが、今度は鳥取市が協力してくれなかったんですよ。それなら米子で作ろう、それが『チュウブYAJINスタジアム』なんです。
このスタジアムはスゴイですよ。ゴルフ場だったところの山を削って、削ってるところに椅子を埋めてるんですよ。
――サウルスコスのホームスタジアム『テクノポート』に似ている感じですかね?
(ロック総統)そうですね。あそこをシャア専用ザクとすると、かなり安いバージョンの量産型ザクみたいな感じ。しかも、その椅子も、神戸ウイングスタジアム(現ノエビアスタジアム)をW杯仕様に増設した際に作ったものを譲り受けて使ってるんです。すごくリサイクル感があるし、すごくコンパクトにまとまっている。
普通、選手が入場する時は、メインスタンド中央の下からピッチに入って来るじゃないですか。でもこのスタジアムは掘って作ってるからメインスタンドの下に控室がなく上にある。だから上から入場して来るんですよ。神さま達が降臨するかのように。(笑)選手が神々しく見えますよコレがまたカッコイイ!
それを自治体から金を出してもらっていなくて、市民の寄付で作ってるんですよ。街の道路のところに寄付に協力した人の名前が刻まれた煉瓦が埋めてあるんですよ。知恵出せばこれくらいのものできる!それが『チュウブYAJINスタジアム』のカッコイイところなんですよ。本には書ききれなかったですけどね。
――これは静岡県にあるスタジアムですよね?
(ロック総統)これはJFL所属のHondaFCのホームスタジアムですよ。HONDA自前の土地に自分のチームのスタジアムを作っている。行けばわかりますが選手との距離が極めて近い。ラインズマンの尻を叩けるくらい。(笑)
僕がサッカーに目が肥えてきたのは、このスタジアムのおかげでもあります。試合が終わった後のフレッシュな感覚の中で、「あのプレーにはどういう意図があったの?」って直接選手に聞けるんですよ。「いや、あれはもうちょっとこういうイメージだったんですけど、スパイクが引っかかっちゃって。」あー、だから短かったんだとか、あー、ホントだピッチ削れてるわとか。だからヤジの言いっ放しにはならないんですよ。選手に直接聞けるし、分析ができる。コレはJリーグでは絶対にあり得ないことだし、これこそが下部の魅力ですね。
――静岡県のサッカー王国たる所以を感じますね。
(ロック総統)さっき僕はこのスタジアムは実業団の自前だと言いましたけど、ココはJリーグが発足した当時のオリジナル10の前からあるスタジアムなんですよ。オリジナル10の一つ前のJSL時代にもココを使ってましたし、本当に伝統のある下部のスタジアムなんですけど、こんなところで呂比須ワグナーがプレーしてたんだ、こんなところで北澤豪がプレーしてたんだという歴史も感じます。当然、カズも来てるわけですよ。そこが静岡のスゴイところですね。
――やはり『小林総合運動公園陸上競技場』も入ってるんですね。
(ロック総統)小林は特筆すべきところは大してありません。一応ホンダロックSC贔屓なので。(笑)ココは本当に田舎なので、携帯の電波も届かないし。
――あれ?解説終わりですか?(笑)では最後に『長崎県立百花台公園サッカー場横の多目的芝生広場』をお願いします。
(ロック総統)百花台は高校サッカー、国見高校の練習場として知られているところですね。山を真っ直ぐに登ったところに練習場があります。ココで国見高校が練習しているので、九州中の強豪校が練習試合をしに来ます。
高校サッカーのホームグラウンドというのはあまりないんですよ。しかもココは公園です。ただの芝なんです。休憩中は木陰で汗を拭いてポカリ飲む!みたいな。外国に行くと、こういうだだっ広い芝生でサッカーができる場所が多い。日本のほとんど公園はサッカー禁止と書いてあるじゃないですか。「何だ!このサッカー禁止って!」せっかくの芝なのにサッカー禁止だなんて勿体無い。そんな国、W杯でブラジルに勝てるわけがない。
――高校サッカーの選手にとって思い出深い場所なんですね。
(ロック総統)九州の強豪高校でサッカーをやっていたら絶対にココでプレーしていると思います。今は人工芝のグランドが多いですけど、ココはまだ天然芝ですから。いかにも九州らしい場所ですね。
――九州推しですね。
(ロック総統)自分が見て来たスタジアムだとどうしてもこうなりますよね。本当はこの本に載せたかったスタジアムはたくさんあったんですよ。それは四巻でお届けしようかと。
(ロック総統)そして最後の章では生々しい、ある緑色の東京のクラブが無くなるかもしれないといった危機感を持った時の話が書いてありますのでこちらもお楽しみに。結構引きますよ。
――あのクラブの伝統は本当に魅力的ですよね。Jリーグにとっても失いたくないクラブではないでしょうか。
(ロック総統)そうだと思いますよ。それだけの伝統がありますので、それに東京のクラブというだけでも外資からしてみれば魅力的ですよ。もしかしたら、そういう生き残る道はあるかもしれないですね。だから例えばですけど、ソフトバンクの孫さんがクラブを買おうかと検討した時に、集客のことを考えればやはり東京のクラブは魅力的に映るでしょうし、もし僕がクラブを買うなら断然このクラブですね。大金持ちだったらの話ですけどね。(笑)よし!本をめちゃくちゃ売るしかね~。(笑)
→新刊『KFG蹴球文化論(参)〜革命的行脚編〜』と特設WEBページ
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
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錦糸町フットボール義勇軍
2014年春、日本のフットボールカルチャーに『革命』を起こすべく立ち上がった革命戦士。偉大なる伝道師『ロック総統』、その忠実なるしもべ『ライト曹長』、策士『オットナー参謀長』を中心とする、居住地域と支援蹴球団の枠に囚われない全国の同志義勇兵の総称。今夜も人知れず地下アジトで傷をなめあう非力なレジスタンス集団。その崇高なる理想は他ならぬ日本サッカー全体の『エンタメ的発展』。経費は録音用革命電池と革命飲料のみ。Podcast収録のために、都内の雑音なき録音可能スポットを求めて日夜さまよう。おじさん達。体力なし。
著書『KFG蹴球文化論』ラジオNIKKEIレギュラー番組『蹴球革命ラヂヲ』雑誌『フットボール批評』で連載。[ブログ]革命! 錦糸町フットボール義勇軍
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今回のインタビュアー勝村大輔氏のサイトで多数、ロック総統のインタビュー記事を掲載しておりますので、そちらもご閲覧くださいませ。