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先日、長谷部誠選手が奥寺康彦氏の持つ、ブンデスリーガ日本人最多出場記録を更新したことは記憶に新しいと思います。
その他にも多くの日本人選手が戦いの場として選んでいるドイツのブンデスリーガ。
このリーグの魅力と言えば、球際の激しい攻防ではないでしょうか?屈強な男達が恐れることなくバチバチ競り合うシーンに惹かれるサポーターもきっと多いはずです。
今回はそんなブンデスリーガを象徴する、あるデータに注目していきたいと思います。
サッカーの試合中のデータと言えば、シュートの本数やボール保持率、パスの本数や成功率、走行距離などが主なデータと言えます。これらのデータは相手を上回ることで試合を優位に進めることは出来ます。
その中でもブンデスリーガ特有と言えるのが”Zweikampfe (ツヴァインカンプフェ)”日本語で”1対1の競り合い”のデータです。
日本代表のハリルホジッチ監督が選手たちに「デュエル(決闘)」という言葉を強調するほど、現代サッカーにおいて1対1の局面をいかに打開するか、もしくは守り抜くかが重要視されています。その状況の結果次第で勝負を左右すると言っても過言ではありません。
実際に3/10〜3/12に行われたブンデスリーガ第24節において、勝敗が決した6試合中5試合で”Zweikampfe”が上回ったチームが勝利しています。
“1対1を制する者が、試合を制す”と言ってよいほど、勝利に直結するデータのひとつとなっています。
以下で第24節に出場した日本人選手の”Zweikampfe”の勝利数を見ていきます!
原口元気はブンデストップレベル! 第24節日本人選手の数値と現地紙の採点。
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ブンデスリーガ第24節の日本人選手の”Zweikampfe”の勝利数と、kicker紙の採点(最高点1、最低点6)を振り返ってみましょう。
原口 元気(ヘルタ・ベルリン) 17回 90+4分途中交代 kicker採点 3.0 (チーム平均:2.82)
大迫 勇也(ケルン) 10回 フル出場 kicker採点 3.5 (チーム平均:3.86)
酒井 高徳(ハンブルガーSV) 9回 フル出場 kicker採点 3.5 (チーム平均:3.05)
香川 真司(ドルトムント) 7回 フル出場 kicker採点 3.0 (チーム平均:3.5)
長谷部 誠(フランクフルト) 5回 64分途中交代 kicker採点 4.5 (チーム平均:4.0)
武藤 嘉紀(マインツ) 0回 82分から途中出場 kicker採点 なし (チーム平均:3.79)
原口選手の勝利数は驚異の「17回」。バイエルンのラーム選手が「12回」、ドルトムントのギンター選手が「11回」と各チームトップの数字を記録していることから見ても、日本が誇るドリブラーは堂々たる成績を残しています。
原口選手と言えば、W杯出場に向けて戦う日本代表にとって欠かせない存在となっています。
持ち味のドリブルやゴールへの嗅覚だけではなく、献身的な守備や闘志剥き出しのプレーは、見ているすべての人に伝わるものです。
現代サッカーにおいては、ポジション関係なく攻撃も守備も高いレベルが求められています。
日本代表の中でこれを最も体現しているのは、原口選手ではないでしょうか?
3/23から始まるW杯アジア最終予選における最大のヤマ場とも言える2連戦。日本代表をプレーで引っ張り、6大会連続出場へと導くエースの活躍に期待しましょう。
巨額の資本で生まれ変わるJリーグへの提言。
先月開幕したJリーグ。イギリスの「Perform Group」が運営する、スポーツストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と10年間約2100億の放映権契約を結びました。
この契約によってJリーグの未来は明るいと考えている方は多いと思います。確かに、優勝賞金の増額や各Jクラブへの分配金増加がもたらす恩恵は大きなものです。
しかし、あくまでこの契約は”10年間”ということに対して危機感を持つべきではないかと思います。
「DAZN」にとってこの大きな投資は簡単な決断ではなかったのではないでしょうか?
これだけ大きな投資が失敗に終わってしまうことは決して許されません。
Jリーグを世界屈指のリーグに成長させるためには、2026年以降もこの大型契約を延長する必要があります。
そのためには、今以上にサッカーのレベルを高め、魅力あるリーグにしていかなければなりません。
今回注目したブンデスリーガや、イングランドプレミアリーグの魅力といえば「バチッ!」と音が聞こえてくるようなフィジカルコンタクトの激しさではないでしょうか?
正直、現在のJリーグでは少し物足りない要素と言えるでしょう。
フィジカルコンタクトを激しくするためには、相手選手に立ち向かうスピードが不可欠です。対してボールを保持している側からすると、激しいコンタクトをかいくぐってゴールを奪わなければなりません。そのためには判断の速さやボールスピード、スプリントの回数や質を高めなければなりません。
両チーム共に、これらのプレーレベルが上がってくることで、観客や視聴者を楽しませることが可能となり、魅力あふれるリーグになるはずです。
日本サッカー界が以前から抱える問題を解決する可能性も秘めています。永遠の課題として挙げられる定番と言えば、「決定力不足」や「消極的なバックパス」。これは日本人の気質のひとつである「協調性」が生んだ負の産物であると思います。
もちろんサッカーは11人で行うスポーツであり、「協調性」は重要となります。しかし、サッカーには1人で状況を打開しなければならない場面に多々遭遇することも事実です。そのような状況を打破できる人間、つまりメッシやネイマールのような1対1の局面を突破する能力に優れた選手は、現在日本サッカー界には居ないに等しいでしょう。またそのような選手は「エゴイスト」であればあるほど好ましい。ここでも「日本人の良さ」が邪魔してしまい、野心を持った”ギラギラ”した選手がなかなか現れません。
このままでは、世界に通用する日本人ストライカーが出現することはないでしょう。
そこでJリーグにおいても”Zweikampfe”のデータの良し悪しが評価される文化を築き上げることが必要であると思います。
実際、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で日本勢が苦戦を強いられているのも、フィジカルコンタクトや1対1の強さが、中国・韓国の各クラブに比べて劣ってしまっていることが現状です。
アジアでの復権を果たすためにも、この問題の解決に取り組んでいかなければならないでしょう。
そして、この文化をJ最高峰の舞台だけではなく、育成年代でも重要視することが、将来サッカー日本代表が世界の強豪と肩を並べるために必要不可欠なものになると信じています。