2部・ASハリマ所属のFW千葉園子がなでしこジャパンの主力へ!無名選手の逆転物語!


昨年6月の米国戦で代表デビューを果たした千葉。2部所属ながら代表に定着し、アルガルベ杯では主力の座を狙う。
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2部所属の無名選手が代表に定着

 「あのお団子頭は誰?」見た目が印象的だった、その無名選手はすっかり代表に定着しています。

 2月9日、なでしこジャパン=女子日本代表は、来月初頭からポルトガルで開催される『FPFアルガルベカップ2017』に出場する代表選手23名を発表。この大会は昨年4月に就任した高倉麻子監督体制で初めて迎える国際大会となっており、そのメンバー選考に注目が集まっていました。

 全体的なチーム編成としては、新主将に選出されたDF熊谷紗希選手、MF宇津木瑠美選手、FW岩渕真奈選手と海外クラブに所属する選手が3選手のみとなり、30歳以上の選手が皆無。さらに昨年11月から開催されていたFIFA-U20W杯に出場し、高倉監督の指揮下で3位入賞を果たしたU20代表から4選手が招集されるなど、世代交代も意識したメンバー構成になっています。

 なでしこジャパンは1月20日から24日にかけて、フィジカル強化に特化した代表候補合宿を実施。特に元陸上日本代表で北京五輪の4×100mリレーのアンカーとして日本男子トラック競技史上初のメダル(先日、銅→銀に繰り上げ)を獲得した朝原宣治氏を特別講師として招聘し、股関節を含めた足や体の動かし方のレクチャーを受け、走るスピードの向上や負荷がかかりにくい効率的な走り方のトレーニングを行っていました。

 高倉監督の掲げるチームコンセプトや代表選手としての条件には「走力」が大きなテーマになっているとも考えられ、それゆえに若手選手が多くなる選考にも必然性が感じられます。

 そんな中、プレナスなでしこリーグ2部所属ながら代表に定着しているのが、お団子頭が印象的なASハリマ・アルビオン所属のFW千葉園子選手。昨年はDF高木ひかり選手も2部ながら代表に選出されていましたが、彼女の所属するノジマステラ神奈川相模原は今季から1部に昇格するため、千葉選手は2部所属で国際大会に参加する唯一の選手となっています。(代表メンバー23選手は以下の通り)
【アルガルベカップ2017 女子日本代表】
<GK>
1 山根 恵里奈 ヤマネ エリナ(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
12 山下 杏也加 ヤマシタ アヤカ(日テレ・ベレーザ)
23 平尾 知佳 ヒラオ チカ(浦和レッズレディース)
<DF>
3 鮫島 彩 サメシマ アヤ(INAC神戸レオネッサ)
2 有吉 佐織 アリヨシ サオリ(日テレ・ベレーザ)
5 川村 優理 カワムラ ユウリ(アルビレックス新潟レディース)
4 熊谷 紗希  クマガイ サキ(オリンピック・リヨン/フランス)※
18 中村 楓 ナカムラ カエデ(アルビレックス新潟レディース)
15 高木 ひかり タカギ ヒカリ(ノジマステラ神奈川相模原)
21 北川 ひかる キタガワ ヒカル(浦和レッズレディース)
<MF>
10 阪口 夢穂 サカグチ ミズホ(日テレ・ベレーザ)
6 宇津木 瑠美  ウツギ ルミ(シアトル・レインFC/アメリカ)
7 中島 依美 ナカジマ エミ(INAC神戸レオネッサ)
19 佐々木 繭 ササキ マユ(ベガルタ仙台レディース)
8 千葉 園子 チバ ソノコ(ASハリマアルビオン)
14 中里 優 ナカサト ユウ(日テレ・ベレーザ)
17 長谷川 唯 ハセガワ ユイ(日テレ・ベレーザ)
<FW>
9 菅澤 優衣香 スガサワ ユイカ(浦和レッズレディース)
11 岩渕 真奈 イワブチ マナ(FCバイエルン・ミュンヘン/ドイツ)※
20 横山 久美 ヨコヤマ クミ(AC長野パルセイロ・レディース)
16 田中 美南 タナカ ミナ(日テレ・ベレーザ)
13 増矢 理花 マスヤ リカ(INAC神戸レオネッサ)
22 籾木 結花 モミキ ユウカ(日テレ・ベレーザ)
※熊谷紗希選手は2月26日(日)、岩渕真奈選手は2月27日(月)より合流します。

『ポストプレーヤー兼、点取り屋兼、攻守のスイッチ役』


by h-albion
ハリマは昨年2部のリーグカップで優勝。千葉は準決勝・決勝でゴールを奪い、優勝に大きく貢献。

 千葉選手は所属するASハリマでは、前線でポストプレーをこなしながら得点に絡むアタッカーです。2部とはいえ、その存在感はまさに背番号10に相応しい異彩を放つ選手。

 加えて、彼女には身体能力の高さや体幹の強さが備わっており、相手に囲まれても失わないボールキープ力や、攻守両局面での球際にも強く、前線の選手ながらチームの”攻守のスイッチ役”としても機能。

 また、162cmと日本の女子選手としても平均的な身長ながらヘディングの強さも兼ね備えており、2015年シーズンのリーグ戦27試合の出場で挙げた13得点中の7得点をヘディングで奪っています。

 そんな千葉選手が所属するASハリマは2012年に創設された新しいクラブで、当時2部だった「チャレンジリーグ」に参入したのは2014年シーズンから。成績的にも直近2年は連続して2部10チーム中の7位に止まっています。

 ただ、昨年は新設された『プレナスなでしこリーグカップ2部』で優勝。千葉選手は準決勝と決勝でゴールを奪うなど、クラブ史上初タイトル獲得に大きく貢献しました。

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プラチナ世代の台頭も阻んだ”代表運”


宇佐美や柴崎等のプラチナ世代が代表に定着できないのは五輪イヤーを20歳で迎える”代表運”のなさにも起因。
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 しかし、彼女は年代別の日本代表に招集された事もない全国的には無名の選手。つまり、外国人選手との対戦経験がほとんどない選手です。

 ただ、それは”代表運”がなかったのかもしれません。

 男子サッカーでは五輪にはオーバーエイジを除くと23歳以下しか出場できません。この4年に1回の大きな国際舞台に最高年齢の23歳で迎えるか20歳で迎えるかでは、五輪のメンバーに選出されるかどうかにも大きな違いがあります。そして、それ以降の年齢制限のないフル代表へもその五輪代表としての実績が大きなステータスとなるため、五輪イヤーを何歳で迎えるか?は”代表運”として重要な要素です。

 FW宇佐美貴史選手(アウクスブルク/ドイツ1部)やMF柴崎岳選手(テネリフェ/スペイン2部)を筆頭とする男子の1992年前後生まれの世代は、高い技術と豊富なアイデアを持つタレントが勢揃いし、「プラチナ世代」と称されています。ただ、彼等はロンドン五輪を20歳前後で迎えたため、2009年のU17W杯に出場した選手から五輪メンバーに選出されたのは、宇佐美選手とFW杉本健勇選手(セレッソ大阪)の2名のみ。彼等がフル代表に定着できなかった理由はメンタル面などを挙げられる事が多いですが、筆者はその要因はこの”代表運”にもあると考えます。

 女子の五輪には年齢制限はありませんが、逆に20歳を過ぎると年代別代表での活動が実質的になくなってしまいます。つまり、高校卒業後の2年後までに圧倒的な実績を挙げるか、その年代別代表監督の志向するサッカーに余程の相性が合うかでないと、才能を汲み上げるシステムにはならない現実がそこにはあります。

 千葉選手の場合は、昨年3月に毎年スペインで開催されているラ・マンガ国際大会へU23代表として選出されたのが初めての代表戦で、当時はU23代表監督も務めていた高倉監督が見出した選手。U23代表は年間通した強化日程はなく、ほぼ「23歳以下のなでしこリーグ選抜」チームですが、そこで結果を出し、高倉監督のフル代表監督就任と共に、千葉選手も大抜擢に至りました。

 同期には猶本光選手(浦和レッズレディース)や田中陽子選手(ノジマ)のようなクリエイティヴなMFがいるとはいえ、高倉監督は2013年にU16代表を率いてから上の年代へと持ち上がっているので、あと2,3歳若ければ千葉選手もユース年代で国際経験を積めたのかもしれません。

FWの人選の変化で生まれた機会~アルガルベ杯で代表の主力定着へ!


年齢や実績に関係なく代表選手の選考を行い、千葉を代表に定着させた高倉監督。
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 そんな高倉監督が率いる新生なでしこジャパンは、佐々木則夫前監督時代の<4-4-2>から、<4-2-3-1>や<4-1-4-1>などの1トップシステムをメインに据えてチームを作っています。

 その1トップの人選自体もこれまでの主軸だったFW永里優季選手のような大柄でポストプレーが巧みなタイプではなく、FW岩渕選手や、FW横山久美選手のような小柄でも個人技で局面を打開できる選手が起用されています。これまでは守備負担の多かったサイドでの起用により、活かしきれていなかった彼女たちの”個”を全面に出すチーム作りが高倉監督のカラーとなっています。

 そして、それを支えるのが、代表ではトップ下に入る千葉選手。これまで2トップ制でFWがこなしていたポストプレーや空中戦、起点作りをこなし、1トップの個人技で打開できるタレントをサポートし、守備の負担を軽減させる。外国人選手相手にも競り負けないどころか相手が倒れるほどの身体能力の高さも活かせる千葉選手には、この役割が見事にハマっています。

 高倉監督体制初の合宿最初の練習メニューが1対1のトレーニングだったのですが、サッカーの根本的な部分の強さを持つ千葉選手は高倉メソッドに合致した選手。経験が少ない事で自信がない面もありますが、高倉監督は、「だからこそ、人の話をまっすぐに受け止める素直さや、自己犠牲をいとわないチームへの献身がある」と、プラス面として評価しています。

 3月のアルガルベ杯では、新主将の熊谷選手をセンターバックとボランチのどちらで固定するかにもよりますが、MFの阪口夢穂選手、宇津木選手という後方のセンターラインに続き、前線の構成や軸を定める見極めが行われると考えられる中、千葉選手には代表の主力にもなりえるチャンスが廻って来ています。

 ミスをもカヴァーできてしまう運動能力などは逆に課題で、まだまだ粗削りな千葉選手ですが、その特徴は他の選手にはない武器です。今後、経験を積んで自信を掴みながら精度を上げる事でプレーも整理していけば良い。それぐらい、彼女は試合の中で多岐に渡るタスクをこなし、日進月歩で成長を続けています。

アルガルベ杯日程


日本はB組に入るアルガルベ杯はフジテレビ系列で全国生中継。
by womenssoccerunited.
 そんな千葉選手も出場するアルガルベ杯はフジテレビ系列全国生中継(一部地域を除く)。

 彼女の活躍にも注目しつつ、高倉監督体制初の国際大会となる、なでしこジャパンを応援しましょう☆

【第1節】VSスペイン
2017年3月1日14:45(日本時間 2017年3月1日23:45)

【第2節】VSアイスランド
2017年3月3日14:45(日本時間 2017年3月3日23:45)

【第3節】VSノルウェー
2017年3月6日14:45(日本時間 2017年3月6日23:45)

【順位決定戦】VS 未定 
2017年3月8日14:45(日本時間 2017年3月8日23:45)

【プロフィール】
名前:千葉 園子
生年月日:1993年6月15日(23歳)
出身:大阪府大阪市
身長:162cm
体重:48kg
所属クラブ:FC:日ノ本学園高、姫路日ノ本短期大→ASハリマ・アルビオン(2013-)
ポジション:FW,トップ下
背番号:10(代表では8が定着)

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