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大阪から世界へ 興國高校サッカー部 内野智章監督 インタビュー

Kai Kadomatsu

2018/02/21 07:50

2018/02/19 22:44

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過去5年で7名、2018シーズンからも大垣勇樹(名古屋グランパス)、西村恭史(清水エスパルス)、島津頼盛(ツエーゲン金沢)の3名をプロの世界に送り込んだ興國高校サッカー部。

全国経験がないものの、内野智章監督を中心に繰り広げられるフットボールは年々注目度を増している。

今回は内野智章監督にプロのスカウトに評価される育成の哲学や現代フットボール界への想いを伺った。

指導者への経緯

©️Shooty

——よろしくお願いします。内野監督ご自身が現役の時はどういう思いでプレーされていましたか?

(内野)そうですね・・・やはりプロになりたいという気持ちが一番でしたね。

——実際、大学を卒業された後、JFLの愛媛FCに行かれて、そして引退された後に教員として働かれたのですよね。

(内野)辞めたというか、辞めさせられた感じなんですよね。元々、一年契約みたいなもので、来季は構想外と告げられました。どうしようかなあと思っている時に、半月板の怪我をして大阪に戻ってきたんです。教員免許は持っていたので、サッカーに関わる仕事をするなら教師になるしかないなと。サッカーの仕事はやりたいからやれるっていう仕事ではないんで、コーチ登録もしていたんですけど音沙汰は全くなかったんで、知り合いのところでアルバイトをさせてもらいながら、公立の高校がサッカーの外部コーチを探しているという話を聞いてそこに行ったんですよ。

——そこから内野先生の指導者としての人生が始まったんですね。

(内野)そうなんです。足の怪我も治ったので、高校生にサッカーを教えながら、高田FCという社会人チームがJFLを目指すということなんで、そこに所属していたんですね。そうしたら、そこにいた教員の方が非常勤講師を紹介してくれたんですよね。当時は公立の採用の1次試験も合格して2次試験を受けようとする時期だったんですけど、公立に行く前に私立を経験してみたいという面もあって興國高校に行くことにしました。

——それがもう十数年前ですよね。興國高校に来られた時はサッカー部が12人程だったとお聞きしました。

(内野)そうなんです。高校からサッカーを始めたやつも半分くらいでした。

興國フットボールの誕生

©️Shooty

——そこから今では日本を代表するサッカー部となったんですけど、最初はどういう志でサッカーの指導をされていたのですか?

(内野)最初はここにいるのは一年だと思っていたので、自分の持っている技術を教えることが出来たらいいなと考えていました。でも、理事長に「続けてほしい」と言っていただいて、監督になりました。大阪の私立の中では強化しようとも(他に多くの学校があるので)選手は集まらないやろうなと思ったので・・・。私が高校生の時は、技術を高めるというよりは基礎をしっかり固めたり、相手としっかり向かって行ったりみたいな、私が当時憧れていたテクニカルなサッカーとは真逆のサッカーをしていたんです。大学はキャプテンがヘッドコーチみたいなもので、キャプテンが変わればサッカーも変わるといったすごい自主性があるものでした。そのようなスタンスで頑張っていたのですが、関西や関東の強いチームと戦うと自分たちの理想としたものが出来ないんですよね。その中で、何故フィジカルや蹴るサッカーを高校でやっていたのかとか、その中でも理想のサッカーで勝ちたいし、色んなことが見えてきますよね。

——当時は理想と現実のサッカーに大きなギャップがあったということですよね。もちろん勝ちたい気持ちがありながら、負けないためのサッカーをするという。

(内野)おっしゃる通りです。僕はサッカーオタクみたいな気があって、大学の時もバイト代でスカパーを契約して海外のサッカーをひたすら見るという生活していたんです。大学に入ってからも、教育学部の中でスポーツ科学コースって言うのがあって、卒論もサッカーの研究をしていました。そして何より昔からクライフのファンだったんです。バルセロナやオランダに興味を持っていたという背景があって、ただ実際自分が指導する番になると、勝とうとすると高校の時にやっていたサッカーをしないといけないのだよなという葛藤がありました。理想を追い求めた大学でのサッカーでは結果が出ませんでしたし。ですけど、高校の時は選手権の3位になったんです。その当時は全国でも5本の指に入る程の強さを持った高校にも関わらず、私を含めて5人しかプロになれなかったんですよね。そこに疑問を持っていて、多分チームの勢いとか型にハマったパターンだけで勝ち進んでいたので、卒業して自分一人で別のステージに進んだ際に戦える武器が少ないのかと。勝つだけならそういう手段を使うべきという心情と、自分はもっと技術とかを勉強してプロになりたかったという心情と、プロを目指している子たちがプロになれない3年間を過ごしていいのかという想いがあります。今の大阪でシンプルに勝つサッカーをしても限界があると思ったし、大阪は仮に1番強くても優勝できるとは限らないですし。じゃあ、まず大阪にないサッカーをやろうと思いましたし、そこで勝つためのサッカーよりも理想を追い求めるサッカーをやろうと決めました。とにかくテクニックを高められるスタイルを指針として人数を増やして大阪にないことをしたいというのが一番強かったですね。

——そのような想いから今のスタイルが構築されたんですね。それはいつ頃から始められたんですか?

(内野)そうですね、中学校の時にトレセンで教えてもらっていた人に監督をやると報告しに行った際に今でも覚えている言葉があって、「お前のところに行ったらどうなるか明確にするべきだな」って言われました。どう意味ですかって聞いたら、「静岡学園に行ったらとりあえず試合に出る出たじゃなくて、めっちゃリフティングが上手くなってくるぞって言う感じで、興國行ったらこうなるぞって明確やったらそういうことをしたい奴はとりあえずは集まるはずや」と。なるほどなって思って、それで不確かな方向性が明確になりました。

育成の哲学

——今まで躓いたポイントってどういうところがありますか?

(内野)一番苦い思い出としては、最初の頃に全く選手を送ってもらうことが出来なかったことですね。なぜ弱小校に良い選手を送られないといけないんだと思われていたんでしょうね。

——そんな苦い経験もあったんですね。育成におけるジレンマを持たれていますか?

(内野)究極的に言えば、常識を変えたいというところですね。どういうことかって言うと、全部が全部ではありませんけど、やっぱりサッカーはビジネスなんですよね。例えば、岡崎慎司選手がレスターでプレミアリーグを優勝しましたけど、優勝をしたという事実で連帯貢献金っていう制度で、岡崎選手が所属していた学校やユースチームに巨額のお金が入ってくるんですよ。海外はこういう制度がありますから、優秀な選手を輩出すればするほど、お金もチームの環境も良くなります。こういう風に選手を育てて輩出することがチームを大きくも小さくもします。向こうではいい選手を作ることが利益があって関わった人の評価が上がるんですが、それほどリーグ戦を勝ち抜くことは育成年代の指導者では重視されていないんですよね。そういうリーグ戦を勝たす指導者って言うのは日本で言うJリーグを戦う指導者だと思います。

——そんな制度があったんですね。確かに育成世代とプロ世代で求められる仕事は区別されるべきだと思います。

(内野)海外の育成では選手が全てですが、日本の育成では選手より監督が目立つなと思いますね。結局は良い指導者だから良い選手が集まるのは自明の理でありますけど、良い選手がいるからこそ監督は結果を出せると思うんですよね。そうであるならば、高校サッカーで監督の名前は知らないけど選手は知っているとか、選手権で優勝をするよりも欧州で活躍をする選手を輩出するほうが良いってことにパラダイムシフトしたいんですよ。常識を変えたいっていう事はそういう事です。最近は中学生と喋る機会が多いのですが、大体みんなプロになりたいと言っているんですよね。しかし、その高校で過去どれくらいプロになれているのかという事を知らずに進学したり、所属するユースチームのトップチームがどんな選手が欲しいのかを調べずにユースチームを選択してしまったりなどなど。そして、大学に進学して腐って辞めてしまう場合もありますよね。他のチームなら上に行けたはずだったかもしれないのに・・・。プロになるという目標に対して、どの手段が良いのかという事を知らなすぎるんですね。これに関しては周りであったり、監督やコーチもよく分かっていない場合がまだまだ多い気がします。もちろん僕も選手権に出たいですが、そこを我慢して選手たちを教えていったら、大学1、2年から芽が出たり、プロで活躍し始めたりする人たちもいるんですよね。そして、近い将来に興國高校を卒業してプロになった人が欧州で活躍したり、日本代表に選ばれたりして、いつか日本サッカーの価値観が逆転してくれないかなあと思う事がモチベーションとしてあります。

——今できる出来る事ではなくて、もっと大きく将来を見た世界レベルや日本代表を見据えた育成を行っているんですね。

(内野)知り合いのスカウトも言っていたんですが、日本は強化部が変わるとスタッフも一気に変わってスタイルも変更されるんですが、欧州だとお金を使っていい選手を呼んでクラブを強くしていくサイクルを回すであるとか、選手を育てて売り出してある一定の地位を保っていくであるとか、こういうサッカーをしたいねんというスタイルの一本軸があるんですよね。それはポゼッションであるとかカウンターであるとか、それをクラブとしてはっきり持っていて、クラブのオーナーや監督が変わっても関係ないんですよね。日本だとサンフレッチェ広島や鹿島アントラーズのようなクラブですね。上が変わる度にスタイルが変わるなら、下についているスタッフたちがその独自のことを見出すことは難しいですよね。

——すごく納得できます。軸の固まっているアイデンティティのあるクラブやチームはまだまだ少ないですよね。

(内野)スペインに行った時に向こうのトップリーグの監督から、どうしてそんなに90分間走り続けることが出来るのか、どんな練習をしているのかい?と質問されたことがあるんです。でも、僕らは素走りゼロなんですよね(笑)絶対ボールを使った練習をすると言ったら、そんな馬鹿なと驚いていました。海外に行ったら日本人ってすごい褒められるんですよね、数的不利の状態になっいぇも愚直に文句も言わずに走り続けるなんてどうかしてるって、向こうなら絶対選手が文句を言うはずなのに。戦術的にはまだまだだけど、あの愚直さっていうメンタリティはすごいって。だから、臨機応変に戦術を変更しながら、その運動量を持っているなら絶対に欧州を上回れるはずじゃないですか。ただ、その臨機応変さがないんですよ。

——それで興國高校ではその辺の臨機応変さを学べるような指導をされているということですか?

(内野)そうですね。日本は本当にいろんなところが足りていないんですよね。もっと海外とやり合って色んなことを学んでいけたら、日本は絶対良くなるはずです。なぜなら、日本には良い選手がたくさんいますから。だから、世界のトップ10に入れるはずの力はあると思いますよ。まだまだ戦術に臨機応変に対応する能力が足りませんが。

フットボール界への提言

©️Shooty

——内野監督の話を聞いていて、日本の若者や指導者が海外でサッカーを学べるような仕組みを増やすべきだと思いました。

(内野)不可能に近い話ですが、指導者が1、2ヶ月ではなくて年サイクルで欧州に行くべきだと思います。時間をかけながら、選手を見てどういう成長をして、相手に対してどういう分析をして対策をしたか、それに対して自分のチームがどんな風にやっていくかっていうのを知らないと意味がないです。前から思っているのは、どうして海外で活躍する選手は増えてきたのに、海外で活躍する監督は皆無なのかってことです。海外でやったのなんて岡田武史さんぐらいですよね。スペイン然りブラジル然り海外の強いところは監督も有名なんですよね。僕は選手のレベルが良くなったらFIFAランクが上がるんじゃなくて、監督のレベルがFIFAランクと同等にならないと真に日本が強くなったとは言えないと思います。だって、選手に教える監督のレベルが低かったら選手が良くなるはずがない。だから、指導者が欧州で評価されるようにならないと世界に肩を並べることは出来ないと思います。
 

——確かに日本人監督が海外で活躍する姿はありませんし、想像がつかないというのも素直な感想です。

(内野)技術の教え方も日本の場合は選手の判断を尊重してあまり言わずに黙って見守ろうというスタンスなんですけど、海外だとU-8でもすごい勢いでグワーッってコーチングしてるんですよ。ほんで何をしているかというと選手に「今は2対1やどうする!2対2やどうする!そのエリアはディフェンシブゾーンどうする!パスでええんか!?」と常に判断を問いかけているんですよ。

——海外は引き出しをたくさん教えてあげて選択させる能力を育てている、日本は言われたことを忠実にやるという事を教えられている、自分での判断が出来る状態までいってないということですね。

(内野)そうですね。バルセロナにいたシャビは100個引き出しがあって、それからベストな選択を選ぶこと0.5秒かからないんですよ。これが彼の凄いところですが、日本人は引き出しが3個ぐらいしかない。そして手詰まりになって自分で考えろって言われても結局はパニックになって最後蹴っちゃうんですよ。海外は引き出しを強制的に持たしてくるんですよ、そこから選択することを教えるんですが、日本の場合は、引き出しを作り出すことから自分でやらせるんですよ。そりゃ差が生まれますよね。だから、僕は選手に向かって何で今それ出したねん!何で今の状況でそうなんねん!ってめっちゃ言うんですよ。だから選手を育てると言ってるくせに、めっちゃ口うるさいやんってよく言われるんですよ(笑)

——選手を育てるために!ですよね(笑)すごく勉強になる話でした。内野先生、ありがとうございました。

リンク先:
【興国高校 ホームページ】
【興国高校 サッカー部 Facebook】

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