Shooty

ガラパゴスな制度?日本と海外のコーチングライセンスの違い

大野元春

2017/10/07 12:01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

NEWS

©︎Shooty

はじめまして、筆者は今シーズンよりオーストラリア二部リーグのナショナルプレミアリーグ所属Monaro Panthers FCというチームでU18の監督をしています。
ロンドンにてイングランドサッカー協会コーチングライセンスを取得後、帰国し、日本の高校にてサッカー部コーチを務めた、昨年オーストラリアに移り、コーチングライセンス取得を目指しながら現地のチームで監督をしております。

筆者は2つの異なる国でコーチングコースを受講しているのですが、読者の方はサッカーコーチに資格があるというのはなんとなく聞いたことがあっても、実際に指導に携わっていない限りはあまり馴染みがないでしょう。
今日はそんなコーチングライセンスについて説明します。

チームの運転免許証であるコーチングライセンス

©︎Shooty

車を運転するのに運転免許証が必要なのと同じように、サッカーの監督になるには資格が必要です。その資格がコーチングライセンスになります。
車の免許が原付、普通、大型自動車などに分かれているように、コーチングライセンスも指導するチームの対象によってライセンスが異なります。
日本のコーチングライセンス制度ではD、C、B、A、S級となっており、Jリーグの監督になるにはS級が、Jリーグのサテライト、JFL,なでしこの監督になるにはA級ライセンスが必要となります。

B級ライセンスは高校生以下のチームの指導者が、C,D級は小学生以下のチームの指導者が対象です。
また、ライセンスを取得するにはC級から順に取得していかなければなりません。
D級はあまりサッカーに馴染みのない人が対象となる入門編のような資格になっており、それ以外にも、育成年代のプロになるためのA級U15、A級U12やゴールキーパーコーチ専門の資格などもあります。

上記で説明したのはJFA(日本サッカー協会)のコーチングライセンスになるのですが、コーチングライセンス制度は国によって、呼称は異なります。しかし、基本的には似たような制度になっています。
また、B級以上の資格になると所属するサッカー連盟公認のライセンスとして有効になります。日本のコーチングライセンスであれば、AFC(アジアサッカー連盟)域内であれば有効ですが、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)域内では有効ではありません。
その逆も同様で、ヨーロッパで取得したライセンスはAFC域内では有効ではありません。

では、なぜJリーグにはたくさんの外国人監督がいるのでしょう?
それはJFAが特別に認めているためです。
このように地域の異なるライセンスはその国のサッカー協会によって、認められることがあります。

日本人監督inオーストラリア

上記のおさらいとして、筆者の実例で説明しましょう。

昨年はオーストラリアのNPL(ナショナルプレミアリーグ)のU15で監督をしていたのですが、NPLのU15で監督をするにはオーストラリアサッカー協会Cライセンスが必要です。
筆者はロンドンにてFA(イングランドサッカー協会)コーチングライセンスLevel1,2(日本のD,C級相当)を取得していたのですが、イングランドはアジアサッカー連盟ではないので、オーストラリアではFAコーチングライセンスは有効ではありません。
ただし、オーストラリアサッカー協会(FFA)はFAコーチングライセンスをFFAのコーチングライセンスに切り替えることを認めているので、FAコーチングライセンスをFFAのコーチングライセンスに切り替える手続きを行い、FFAのCライセンス(日本のC級相当)を取得しました。

そして、今年からNPLのU18の監督になったのですが、U18の監督になるにはFFAのBライセンスが必要です。
筆者はFFAのCライセンスを保持したことにより、Bライセンスコースの受講資格を得ることができましたので、Bライセンスコースをを受講しました。それによりU18の監督をする資格を得ることができました。
そしてFFAのBライセンスが正式に発行されると、オーストラリアはAFC所属なので、日本でも認められるAFC公認Bライセンスとなります。

日本のコーチングライセンスの問題点

では、なぜ日本ではなくオーストラリアでBライセンスを取得したのか?
それは、日本のコーチングライセンスはB級以降は、受講するために地域のサッカー協会からの推薦等が必要となり、間口が非常に狭くなります。
A級はより狭くなり、不可能ではありませんが、サッカー界に深い繋がりがない人にとっては非常にハードルが高いです。

その一方、コーチとしての経験が浅い元プロサッカー選手がS級を取得し、それを活かすことなくテレビや雑誌で活躍しているというのはあまり公平とは言えないでしょう。
そのため、Jリーグの監督の中には指導経験があまりない状態でプロ監督になる人も珍しくありません。

それに比べ、海外のコーチングライセンスは事前に明確な受講基準が明記されており、元サッカー選手でなくてもしっかりとステップを踏んでいけばS級ライセンスまで辿りける可能性があり、実際多くの日本人指導者が海を渡り海外で指導者として活躍をしています。

海外組日本人指導者

現在、多くの日本人選手が海外組として注目を集めますが、海外組の日本人指導者にも目を向けてみると、将来の日本代表監督を見つけることができるかもしれません。
是非、今後は監督の経歴にも注目してみてください。

©︎Shooty

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう