開幕13戦無敗の8連勝中!ブンデス首位を快走する昇格組=RBライプツィヒの強さは本物か?
今季のドイツ・ブンデスリーガ1部で大きな異変が起きています。
昨季ブンデスリーガ史上初の4連覇を果たし、5連覇も容易と思われた絶対王者=バイエルン・ミュンヘンを差し置き、すでに中盤戦に差し掛かるこの時期に首位に立っているのは、今季初めて1部リーグに昇格してきたRBライプツィヒ。
先週末に迎えた第13節では、ホームに公式戦12戦無敗と完全復調した強豪シャルケを迎え、「12試合負けなし同士の好調対決」も2-1と制しました。これで実に10勝3分の無敗という圧倒的な成績を残しており、現在は8連勝の真っただ中。
開幕から13試合で勝点33を記録したチームは過去のブンデスリーガには10チームありますが、そのうちの9チームが優勝しています。
実に『優勝確率9割』という脅威の昇格チーム=RBライプツィヒ、とはいったいどのようなクラブなのでしょうか?
昇格組の記録を次々と塗り替え、優勝確立9割?
ブンデスリーガの歴史において、2部からの昇格組が初年度に優勝したのは、今から19年前のシーズンとなる1997-1998のカイザースラウテルンのみ。
昇格チームの優勝が起きる絶対条件ともなりそうなのが開幕からのスタートダッシュですが、当時の彼等も開幕9試合で勝点21のスタートでした。また、ブンデスリーガで昇格組の開幕からの無敗記録は、1993-1994シーズンのデュイスブルクによる10戦無敗。ライプツィヒはこれらを上回る記録で首位を快走しています。
加えて、カイザースラウテルンは1990-1991シーズンにも1部リーグ優勝を飾るなど、4度の国内1部リーグ制覇の経験がある名門クラブでもあるのに対して、ライプツィヒは今季が初の1部昇格クラブです。
現在のライプツィヒに近い現象が起きたのは、2008-2009シーズンに初めて1部昇格を果たしたホッフェンハイム。当時、前半戦を11勝2分4敗で首位ターンして「秋の王者」となったクラブを率いていたのは、昨季限定でライプツィヒの指揮を執り、2012年以降はライプツィヒの「スポーツディレクター(以下SD)」としてクラブの強化に携わっている、ラルフ・ラング二ック氏。
面白い事に、今季ここまで13節を消化したブンデスリーガには無敗を守るチームがライプツィヒの他にももう1チームあり、それがホッフェンハイムです。今年2月に28歳で「ブンデスリーガ史上最年少監督」となったユリアン・ナーゲルスマン監督が就任した事でも話題になりました。
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2009年のレッドブル社による買収で誕生したRBライプツィヒ
そんなRBライプツィヒの本拠地であるザクセン州・ライプツィヒは、ドイツ国土の中でも東の端にあり、南にチェコ、東にはポーランドが隣接する旧東ドイツ圏の美しい街にあります。
実は旧東ドイツ圏のクラブでブンデスリーガ1部に在籍するのは、2009年に2部へ降格したエネルギー・コットボス以来7年ぶりになります。
ただ、現在のRBライプツィヒは、2009年に当時5部リーグに所属していたSSVマルクランシュタットというクラブのライセンスを、世界的飲料メーカーのレッドブル社が買収して誕生した創設8年目の超新興クラブ。実に7年で4度の昇格を経て1部に昇格して来ました。
また、「親会社やその商品名をクラブ名に入れてはいけない」というドイツサッカー協会の原則がある事から、クラブ名の『RB』は、『RasenBallsport』という『芝生の上の球技』の略。とはいえ、レッドブルの略称を事実上クラブ名に示しつつ、「20年以上クラブを保有していないクラブオーナーは、最高でも49%までしかクラブのオーナーシップを保有できず、最低でも7名(7社)がオーナーシップを共同保有しなければならない。」という外資参入を防ぐ『50+1ルール』に対しては、オーナーではなく保有権を一部持つスポンサーの形を取り、巧みに規則抵触を回避しています。
また、レッドブル社はライプツィヒ以外にも、オーストリアのレッドブル・ザルツブルク、アメリカのニューヨーク・レッドブルズ、ブラジルのレッドブル・ブラジルも運営しています。
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ラングニックのメソッドと哲学による『世界最高の育成型クラブ』
by theScore.com
シャルケやシュツットガルト、ホッフェンハイムの監督を歴任し、ドイツサッカー界で『教授』の異名をとるラングニック氏が、2012年にライプツィヒとザルツブルクの共同スポーツディレクターに就任してから全てが始まったとも言えるこのプロジェクト。
ただ、彼等は単に多額の資金をスター選手獲得に費やすのではなく、世界でもトップクラスのトレーニング設備や環境を揃えたり、優秀な指導者を集める事に投資しています。
実際、現在ブンデスリーガを首位で走るチームにも他クラブで実績を上げた『完成された選手』はおらず、ラングニック氏が提唱するサッカーやそのメソッド(方法論)に共感した選手達のみが揃った精鋭達が集まっています。
また、クラブの哲学でもある「24歳以下の選手で、クラブを出る時に獲得時よりも市場価値を上げる野心のある若手選手」である事が獲得対象となる条件で、年棒も300万ユーロ(約3億6千万円)の上限を設定しています。
よく金満クラブのチーム編成は「寄せ集め集団」になってしまいがちですが、彼等はそれらの哲学により、「若手精鋭集団」であり続けています。金満クラブでありながら、『世界最高の育成型クラブ』を目指しているのです。
【次回予告】『ラングニックとパワーフットボール』乞うご期待!
これらの哲学やクラブの成り立ちはホッフェンハイムとも似ており、ホッフェンハイムはドイツ最大手のソフトウェア会社『SAP』の創始者の1人であるディトマー・ホップ氏が8部リーグ時代からパトロンとなり、3部リーグ時代からラングニック氏が監督を務めて、1部リーグ前半戦首位ターンにまで突っ走ったクラブです。
当時のホッフェンハイムは前半戦限りでエースFWのヴェタド・イビセビッチ選手(現ヘルタ・ベルリン)が大怪我を負った影響と、ウインターブレイク期間に他クラブからの徹底研究が進み、後半戦は失速。最終的には7位に終わりました。
ただ、現在のライプツィヒも、2008年のホッフェンハイムも、それぞれ13試合で29得点、17試合で42得点を挙げる攻撃的なサッカーを志向するチーム。
そんなRBライプツィヒについては、今回も含めて3回に分けた特集として当コラムで連載致します。
次回は、ラングニック氏が提唱し、現在はドイツを中心に「パワー・フットボール」と呼ばれ、「ゲーゲン・プレッシング」からさらなる拡がりを見せているドイツ発の新戦術について考察します!
お楽しみに☆