【リオ五輪メダル候補国注目選手①】不思議なキャリアを選択したドイツ待望の本格派FWダビー・ゼルケ

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リオ五輪で開幕から2戦連発のドイツFWゼルケ。by ESPN FC

1カ月前にポルトガルの優勝で幕を閉じたEURO2016フランス大会。2014年のブラジルW杯を制した世界王者のドイツは、準決勝で開催国のフランスに2-0と完封負けを喫してベスト4に終わっていました。

ベスト4でも十二分な成績ですが、その敗れたフランス戦も含め大会を通して常に相手を凌駕するサッカーを披露していたドイツ。だからこそ、悔しい敗退となりました。

その敗因は、W杯通算最多得点記録を持つベテランFWミロスラフ・クローゼ選手がブラジルW杯限りで代表を引退した穴が埋まっていないと指摘されています。大会中は復活したFWマリオ・ゴメス選手が奮闘していたのですが、準決勝を前に負傷離脱。本職のFWがゴメス選手しか登録されていなかった事もあり、『ストライカー不足』が深刻な問題になっているのです。

そんなドイツに期待の新星が到来か?現在開催されているリオディジャネイロ五輪に参戦している”弟分”(23歳以下+オーバーエイジ3人)に、頼もしい本格派の点取り屋として期待されているFWがいます。

エチオピア人の父を持ち、驚異の身体能力で魅せる192cmの長身FW


2014-2015シーズンにブレーメンで9得点を挙げたゼルケ。チームの1部残留に大きく貢献したが・・・。by ESPN FC

ダヴィー・ゼルケ選手、21歳。エチオピア人の父とドイツ人の母を持つハーフで、身長192cmの長身でありながらスピードを兼備。クイックモーションにも優れるしなやかなFWです。

その実力は2014年の夏に開催された19歳以下の欧州選手権で大会通算6得点。得点王と大会MVPのダブル受賞で、ドイツの優勝に大きく貢献した事で実証済みです。

また、そのU19欧州選手権の直後から始まった2014-2015シーズンには、所属していたドイツ・ブンデスリーガ1部のヴェルダー・ブレーメンでも大活躍。前半戦は2部降格圏内で苦しんだ名門で、中盤戦以降に定位置を掴み取りました。

ゼルケ選手がレギュラーに定着したブレーメンは5連勝も記録するなどして一気に残留圏内に浮上。ゼルケ選手自身も20歳にして30試合の出場で9得点を挙げ、頭角を現したシーズンとなりました。

まさかの「ステップダウン移籍」~チーム最多得点も、2部で控えに回る


ゼルケを口説いたラングニック共同SD。ゲーゲン・プレッシングの進化形である「パワー・フットボール」の指導メソッドをザルツブルクとライプツィヒで共有・指導しているカリスマ指導者だ。by 1860 München

しかし、ドイツ1部で20歳にして確かな実績を挙げたゼルケ選手は他クラブへの移籍を決断。それも国内の強豪や上位クラブならステップアップとして理解できるのですが、彼が選んだクラブは2部で5位だったRBライプツィヒだったのです。

ライプツィヒは日本代表MF南野拓実選手も所属するオーストリアの強豪=ザルツブルグと同じく、飲料メーカーのレッドブル社が買収して経営しているクラブです。それゆえ、ゼルケ選手も「大金に目が眩んだのか?」と揶揄されました。

ただ、ゼルケ選手にとってはユース時代を過ごしたホッフェンハイムで、当時のトップチームの監督だったカリスマ指揮官=ラルフ・ラングニック氏のサッカーに惹かれて移籍を決断したのです。ラングニック氏はザルツブルグとライプツィヒで共同スポーツディレクターを務め、ゼルケ選手が加入した昨季はライプツィヒの監督を1年限定で自ら務めていました。

ボールを奪えば瞬時に縦へ速い攻撃を見せ、ボールを奪われた瞬間から激しく連動したプレッシングで奪い返し、ショートカウンターで攻め切るフルスロットルの連続。ドイツでは「パワー・フットボール」と呼ばれる最先端のサッカーに大きな魅力を感じていたのです。

しかし、成長著しいドイツ期待の新鋭FWが2部リーグでプレーすることを選択しただけでなく、ゼルケ選手はこのサッカーに適応しきれずに後半戦からはレギュラーを外されました。チームもクラブ史上初の1部昇格は果たしたものの、首位を独走しながらも失速し、2位に終わりました。ゼルケ選手は最初の10試合で6得点を挙げながら、最終的には30試合の出場で10得点。チーム最多得点者とはなりましたが、不完全燃焼のシーズンを過ごしました。

リオ五輪で開幕2戦連発~得点王の期待もかかるフル代表待望の本格派FW


ライプツィヒでチーム最多の10得点を挙げたとはいえ、不完全燃焼なシーズンを過ごしたゼルケ。リオ五輪ではパサーが揃うチームで得点を量産し、ドイツを優勝に導けるか?by weltfussball.at

そんな苦しいシーズンを経て、現在のリオ五輪へ参戦しているゼルケ選手。それも2部で21得点を挙げたFWニルス・ぺテルセン選手をオーバーエイジ枠で起用されて今大会を迎えました。

ただ、大会開幕からメキシコ、韓国という前回大会の金メダル、銅メダルを獲得した強者を相手にしながら、ゼルケ選手は2戦連続で先発出場して共に得点を挙げました。しかし、チームは2試合連続で引き分け。

その後、チームは第3戦でフィジー相手に10-0と大勝。グループリーグ突破を決めたチームにゼルケ選手の名前はなく、ぺテルセン選手が1人で5得点。ただし、明らかに数段の実力差がある完全格下のフィジー相手には、主力格のDFマティアス・ギンター選手や、MFレオン・ゴレツカ選手も温存されており、FWではゼルケ選手が休養を与えられたと考えられます。準々決勝のポルトガル戦の先発のピッチにはゼルケ選手が立っていることでしょう。

リオ五輪は欧州クラブが選手の派遣に消極的で、開催国のブラジル以外は各国共になかなかベストなメンバーを選出できていません。ただ、ドイツだけは「1クラブ2人まで」という条件で有力選手の招集に成功。特に中盤にはゴレツカ選手や、マックス・マイヤー選手という強豪シャルケで10代からレギュラーを担う2人を始め、昨季はレバークーゼンで9得点を挙げたMFユリアン・ブラント選手などタレントが揃っています。

アフリカの血も入った身体能力を活かし、アクロバチックなシュートも得意とするゼルケ選手。ワンタッチゴールも得意なだけに、決勝トーナメント以降は連携も向上し、さらなる得点量産が期待できます。U19欧州選手権時のように、得点王となってドイツを金メダルに導くのか?

2年前は”兄上たち”が世界制覇を果たしたブラジルの地で、”弟分”も続くのか?その鍵は、フル代表でも期待したいゼルケ選手の得点にかかっています。

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