日本代表FW浅野拓磨のアーセナル移籍で激変の広島攻撃陣~宮吉・佐藤・皆川・茶島等の新たな競争!

01_浅野拓磨
by SOCCER KING

現在はリオディジャネイロ五輪へ出場中の日本代表FW浅野拓磨選手がイングランドの名門・アーセナルへ移籍したサンフレッチェ広島。

昨年の明治安田生命J1リーグを制した広島でしたが、今季のJ1リーグでは第2ステージの第6節まで終了した時点では年間4位。明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ出場権のかかる年間勝点3位の鹿島アントラーズまで勝点9の差をつけられて苦しんでいます。

浅野選手だけでなく、今季を迎えるにあたっては昨季のリーグ戦で21得点を記録して年間優勝に大きく貢献したブラジル人FWドウグラス選手もUAE・アルアインへ移籍。2人合わせて29得点を挙げた優勝の原動力となったタレントが抜けました。

また、優勝した昨季も全試合先発出場を果たすなど、2005年の加入以来11年ものあいだエースFWとして君臨していた元日本代表FW佐藤寿人選手が今季はベンチスタートとなっているため、現在の広島は昨季とはまるで違うチーム構成となっています。

ただ、今季から加入した元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカ選手がリーグ15得点で得点王を快走するなど、ここまでの23試合で挙げた総得点はリーグで2番目に多い44得点。昨季34試合で73得点を記録した得点力はさほど落ちてはいません。

しかし、ドウグラス選手に続いて浅野選手までもがチームを去った攻撃陣は激変の時を迎えているのは確か。佐々木翔選手、水本裕貴選手の負傷、塩谷司選手のオーバーエイジでのリオ五輪派遣など、守備陣に戦線離脱者が多い中、攻撃陣に期待がかかります。

絶対的存在のウタカ&今季は「柴崎のチーム」


by LEGENDS STADIUM

得点ランク首位を快走するピーター・ウタカ選手ですが、15得点と共にリーグトップタイの8アシストも記録。点取り屋としてはもちろん、「最前線のゲームメイカー」的存在となって、多くの得点のお膳立て役もこなしています。

特に第1ステージの第16節・浦和レッズ戦以降、MF柴崎晃誠選手(上記写真)の3試合連続の合計4得点全てをアシストするなど、周囲との連携も向上。

昨季はドウグラス・浅野両選手の個人能力で打開する局面が多かったのですが、ウタカ選手の周囲との連携向上により、今季はチームとして組織的に崩す場面が急造。「広島スタイル」の原理主義的なパスワークからの崩しも多く披露されています。

そして、今季全試合フルタイム出場を続けるシャドーのMF柴崎選手。7得点7アシストの数字も見事ながら、それ以上の存在感を示し続けています。

チームは今季、主将MF青山敏弘選手が負傷離脱した期間に新たなシステム<3-1-4-2>を採用。ワンボランチ+2シャドーによる中盤の構成は攻撃過多ですが、それも元々はボランチだった柴崎選手が的確な状況判断とプレースタイルのさらなる拡大によってバランスを保てるからこそ、なせる業です。

青山選手やチーム最古参のMF森崎和幸選手が負傷もあって完調とは言えないパフォーマンスが続いているだけに、今季は「柴崎のチーム」になっています。

浅野退団で空いた1枠~2トップの選択肢を含めて多彩な人選


by SOCCER DIGEST WEB

広島のメインシステムとなる<3-4-2-1>の中で攻撃陣に枚数が割かれるのは、1トップ2シャドーの3枚。1トップのウタカ選手とシャドーの1角を担う柴崎選手が大活躍を続ける中、シャドーの1枠はポジションが空いています。

移籍するまでは浅野選手が務めていたものの、その適性や残した結果を吟味しても、あまりしっくり来ない印象が残っています。

しかし、浅野選手のラストマッチとなった横浜Fマリノス戦で、長身の元日本代表FW皆川祐介選手が豪快なヘッドで今季リーグ初ゴール。さらに佐藤選手も直後にゴール前のこぼれ球を押し込んで得点。共に途中出場から得点を記録するなど、ここへ来て出場機会の少なかったFW陣が猛アピール。

もともと森保一監督も今季開幕前には、「前線の1トップ2シャドーには3通りの組み合わせがある」と語っていただけあって、高次元での新たな競争が生まれています。

また、オプションとなる新システム<3-1-4-2>では2トップ+2シャドーの構成となるだけに、前線の組み合わせは多種多彩な選択肢が揃っています。

さらに、7月には22歳の若手ブラジル人FWアンデルソン・ロペス選手も緊急補強。左利き特有のボールタッチと強烈なシュート力を持つ現在のチームにはいないタイプのFWを、直近4年間で3度のリーグ優勝に導いた森保監督がどうチームに組み込んでいくのか?3度の年間最優秀監督賞を受賞した森保監督の手腕に注目が集まります。

存在感を増すプラチナ世代の元エリートFW宮吉拓実


第1S・第14節の福岡戦で移籍後リーグ初得点含む2得点を挙げた宮吉選手。by SOCCER DIGEST WEB

そんな中、ここへ来て浅野選手の代役として存在感を示しつつあるのが、J2・京都サンガから今季加入したFW宮吉拓実選手(上記写真)。浅野選手の移籍後初戦となる第2S第5節・ヴィッセル神戸戦で先発起用されると、自ら貴重な追加点を挙げる活躍ぶり。

開幕当初はベンチ入りメンバーからも外れる状況にあった宮吉選手ですが、過密日程下にAFCチャンピオンズリーグのアウェイ戦が組み込まれた事で試合出場の機会を掴みました。その後も安定した出場機会には恵まれてはいませんでしたが、少ない出場時間で守備戦術の徹底から地道に積み上げて来た成果が如実に出て来ています。

8月7日に24歳となる宮吉選手はもともと、日本代表FW宇佐美貴史選手(現・アウクスブルク/ドイツ)や宮市亮選手(現・ザンクトパウリ/ドイツ2部)といった将来有望なタレントが揃った『プラチナ世代』の選手で、世代別代表でもエース格になるようなエリート選手でした。

中学生から京都の下部組織に入った生え抜きで、16歳でJ1リーグにもデビュー。筆者もそのデビュー戦となるガンバ大阪戦を現地観戦したのですが、その年にアジア王者となるG大阪相手に鋭いドリブル突破やスルーパスを連発。全く臆することなくプレーしていました。

しかし、宮吉選手がいよいよ定位置を取り始めた2010年に京都はJ2に降格。以降、京都は未だJ1再昇格を果たせずにJ2で燻り続けています。また、チームの得点源としては後輩のFW久保裕也選手(現・ヤングボーイズ/スイス)が台頭。宮吉選手は170cmと小柄なため、高い技術力とスピード、運動量があった事でサイド起用やチャンスメイカーの役割を担う事が多く、器用貧乏な状態に陥ってしまいました。

もともとはボールを持っていない時の動き出しに特徴があるはずの宮吉選手。京都ではパスの出し手やお膳立て役まで務めましたが、パスサッカーが根付いて出し手が揃っている広島は、彼の本来の特徴やプレースタイルを思う存分に活かせるチームなはず。

海外の選手で例えると、バイエルン・ミュンヘン所属のドイツ代表FWトーマス・ミュラー選手(下記写真)、Jリーグでは川崎フロンターレで現在6試合連続得点中のFW小林悠選手のように、ドリブルやパス、シュートではなく、前線から少し引いた位置から「動き出しで違いを作る」宮吉選手が大きな化学反応を起こしつつある広島攻撃陣の今後が楽しみです。


「動き出しで”違い”を作るFW」トーマス・ミュラー選手。by UEFA.com

野津田、川辺のレンタル組まで調子を上げ始める


今季の広島攻撃陣の活躍状況(筆者調べ)

上記に各選手の活躍状況をまとめましたが、シャドーのポジションには昨年末のFIFAクラブW杯で小地味良いドリブル突破と正確なセットプレーから3アシストを記録したMF茶島雄介選手や、この広島特有のポジションの教科書的存在である「シャドーのマエストロ」MF森崎浩司選手、今季開幕後にリオ五輪出場を目指してアルビレックス新潟へのレンタル移籍を決意した生え抜きのMF野津田岳人選手など下部組織出身の多士済々な面々が揃っています。ジュビロ磐田へレンタル移籍中のMF川辺駿選手も磐田ではボランチを担っていますが、広島ではシャドーに適性があると言えるでしょう。

そんな面々が夏を盛りに調子を上げ、時を同じくしてレンタル組もレンタル先でポジションを掴み始めています。来季、レンタル移籍から広島に復帰するかどうかは分かりませんが、これだけの競争をチームを離れても意識しているのでしょう。

浅野選手のアーセナル移籍で巻き起こった新たな競争は、広島やその選手達に非常にポジティヴな変化をもたらしています!

モバイルバージョンを終了