リーグ・アンに「オールスターゲーム構想」が浮上!オールスターの起源と問題点を考察しました

01_T・シウバとベン・アルファ
今季からPSGでチームメイトとなるT・シウバとベン・アルファ。オールスターが実現し、両者共に出場すれば再び敵同士に。by Twitter@FootAddictFR

12日、フランス『L’equipe』は「リーグ・アンがオールスターゲームを計画か」と報じました。
SOURCE : Foot – Un All-Star Game des joueurs de Ligue 1 en projet

「国内選手vs外国籍選手という対戦形式で、ウィンターブレイク中に開催される計画で新シーズンにも導入か?」という内容。
サッカーのオールスターゲームは、過去にはJリーグで東西対決や日韓対決といった形式で開催されてきました。MLSのオールスターチームが欧州強豪クラブと親善試合で戦ったりしたりとサッカー新興国に於いては開催例がいくつかあります。ただ、欧州5大リーグでは例がなく、フランスで開催されれば初の例となります。
なぜ欧州で開催された例がないかというと、アメリカ発祥のイベントで、欧州での浸透度が低いことが理由として挙げられます。元々はメジャーリーグ・ベースボール(MLB)で1933年に始まった祭典です。

オールスターゲームの起源


今年のMLBオールスター・ホームランダービーの様子。イチローとチームメイトであるジャンカルロ・スタントン(写真)がダービーを制した。by Twitter@mlb

オールスターゲームの起源は、ある幼い少年の投書が発端だったという説があります。

「ベーブ・ルースとカール・ハッベルの対決が見たい」

皆さんご存知であろうMLBの歴史的大スター、ベーブ・ルースはニューヨーク・ヤンキースに所属するホームランバッター。一方のハッベルはニューヨーク・ジャイアンツ(現在はサンフランシスコに本拠を置き、近年では現マリナーズの青木宣親が所属)のエースピッチャーでした。同じニューヨークに本拠を置く両チームだが、ヤンキースはアメリカン・リーグ所属。一方のジャイアンツはナショナル・リーグ所属で、ジャイアンツの対決はインターリーグ(交流戦)が無かった当時、ワールドシリーズ(MLBシーズン王者決定戦)に両チームが進出する他がありませんでした。そのため、この二大巨頭の対決は実現する見込みが薄かったのです。少年の投書が実際にあったかは確かではありませんが、少年の望みに共鳴したとされるシカゴの新聞記者がオールスターゲームの実現に動きました。そうして1933年、第一回オールスターが開催されています。

その後、バスケットボールなどでも開催されるようになったオールスターゲーム。しかし、欧州トップレベルのサッカーシーンでは未だこのようなイベントが開催されたことはありませんでした。

開催に向けてはやはり選手の貸し出しに抵抗感を持つクラブとの交渉がカギになります。興行面では悪い話ではなく、中小クラブにとっては選手を高額で売却するための”ショーケース”にもなりえます。しかし、選手を”売る側”ではなく”買う側”の強豪クラブは選手を出し渋るでしょう。では、どうすれば良いでしょうか。これには日本プロ野球(NPB)が採用している解決策を提案したいです。「オールスター出場を辞退した選手はオールスター終了後最初のレギュラーシーズン10試合に出場することが出来ない」という規約。リーグ・アンで開催する場合に於いてもこのような罰則規定を設ければ選手の出し渋りを抑えることは可能だと考えられます。もっとも、NPBで既に見受けられています、強行出場という弊害を生み出しかねませんが、それを恐れるなら「出場辞退選手の所属チームから代替選手を出す」のみなどに止めれば良いでしょう。そもそも規約の制定が合意に達するかは難しいところですが、絶対数の多い中小クラブの支持を取り付ければ問題ないでしょう。

もう一つ開催に向けての難点を挙げるとすればやはり野球などに比べて1試合に於ける負担が大きい点。ただし、これは選出選手の量を増やせば解決出来る問題です。Jリーグのオールスターが事実上消滅した原因であるスポンサー不足も、サッカーが人気ナンバーワンスポーツであるフランスに於いては問題ないと思われ、やはり最大にして唯一の難点はクラブとの折り合いでしょう。この構想の今後の進展に、リーグ・アン機構の説得力に期待したいです。

レギュレーション

次にレギュレーションの問題について。国内選手vs外国籍選手の振り分け方がどうなるかが見所なのですが、筆者の予想は2つあります。

①「フランス国籍を有する選手」を「国内選手」に分類
②「フランス代表資格がある選手(フランス国籍保持者で、他国代表を選択した選手は除外)」を「国内選手」に分類

どちらになるかの予想は難しいですが、戦力均衡、移民選手の扱いを考慮すれば①がベターでしょうか。国内組をフランス国籍保持者として「最高の11vs11」を予想してみたら次のようになりました。

次ページ:予想イレブン

国内組

GK

アルフォンス・アレオラ(パリ・サンジェルマン=PSG)

DF

セルジュ・オーリエ(PSG)
マプ・ヤンガ=エムビワ(リヨン)
ニコラ・ヌクル(マルセイユ→リヨン)
レーバン・クルザワ(PSG)

MF

ラサナ・ディアラ(マルセイユ)
ヴァンサン・コジエロ(ニース)
ブレーズ・マテュイディ(PSG)

FW

ソフィアン・ブファル(リール)
アレクサンドル・ラカゼット(リヨン)
アテム・ベン・アルファ(ニース→PSG)


欧州屈指のドリブル技術を駆使して昨シーズンのニースを躍進へと導いたベン・アルファ。今シーズンの活躍にも期待です。by Twitter@euro2016

システムは4-3-3。GKには新シーズンPSGに復帰するアレオラがウナイ・エメリ新監督の信頼を勝ち取ればオールスター級の活躍をするだろうと予想します。次点は経験豊富なサンテティエンヌの巨漢GKステファン・リュフィエでしょうか。

右SBはセルジュ・オーリエとクリストフ・ジャレに絞られると予想し、昨季前半戦のような活躍をするという条件でオーリエを選定しました。CBはヌクルとヤンガ=エムビワの新リヨンCBコンビで鉄壁でしょうか。テクニカルなアラン・ペラン(サンテティエンヌ)が割って入ってくるかどうかです。左SBはアレオラ同様、新シーズンのレギュラーを期待してクルザワとしましたが、マクスウェルの牙城を崩せなければマルセイユからモナコへ移籍したバンジャマン・メンディが入ってくるでしょう。

アンカーは多士済々。筆者が選定したラサナ・ディアラの他にもジェレミー・トゥララン(モナコ→ボルドー)、リオ・マブバ(リール)などいぶし銀が揃う充実セクションです。インサイドハーフはマテュイディとコジエロで決まりでしょうか。新シーズンの出来次第ではコジエロの所にモンペリエの若きゲームメーカー、モルガン・サンソンが入ってきてもおかしくありません。

FW陣も充実しています。新シーズンの得点王候補最右翼のアレクサンドル・ラカゼットにニースで復活し、PSGへ移籍しました”ドリブルキング”アテム・ベン・アルファ。もう1人はもしかすればプレミアリーグへと旅立ってしまうかもしれない技巧派ソフィアン・ブファル。その他にもベン・アルファと共に昨季のニースを引っ張ったヴァレール・ジェルマン(モナコに復帰)にラカゼットの相棒ナビル・フェキル。更にはユナイテッドが狙う逸材アダム・ウナス(ボルドー)、トゥールーズのエースに君臨するウィサム・ベン・イェデルとタレントの宝庫と化したセクションです。


ボルドーが生んだ”新たな逸材”アダム・ウナス。by Twitter@a_ounas22

外国籍選手組

GK

アンソニー・ロペス(リヨン)

DF

ファビーニョ(モナコ)
チアゴ・シウバ(PSG)
ダビド・ルイス(PSG)
ハビエル・マンキージョ(マルセイユ)

MF

グジェゴシュ・クリホヴィアク(セビージャ→PSG)
セルジ・ダルデル(リヨン)
アンヘル・ディ・マリア(PSG)
ハビエル・パストーレ(PSG)
ベルナルド・シウバ(モナコ)

FW

エディンソン・カバーニ(PSG)


ELトロフィーを掲げるクリホヴィアク。かつてボルドーとスタッド・ランスでプレーしておりリーグ・アン経験は豊富。by Twitter@grzegkrychowiak

システムは4-2-3-1。GKはA・ロペスとケビン・トラップ(PSG)の対決。トラップがアレオラから守護神の座を守り切ればトラップがそのまま海外組の守護神となるでしょう。

右SBは今夏移籍しなければファビーニョ一択。今リーグ・アンで最も優れたSBで、非の打ち所がありません。CBはPSGの花形ブラジリアンコンビで決まりでしょう。左SBは左へのコンバートを機に評価を上げたハビエル・マンキージョと、クルザワとのポジション争いを制すればの条件付きでマクスウェルとの2択となります。どちらも派手さはないが堅実なSBです。

中盤は額面通りの活躍を見せればクリホヴィアクが当確でしょうか。ただ、PSGの中盤は多士済々で、クリホヴィアクではなくチアゴ・モッタが入ってきても違和感はありません。司令塔役は通常ならマルコ・ヴェッラッティなのでしょうが、怪我で出遅れることがほぼ確実で、代わりにリヨンの司令塔ダルデルを選出しました。

2列目以降はPSGの”無双状態”。ディ・マリアと得点王候補のカバーニは何らかのアクシデントが無ければ選ばれるでしょうし、華麗なテクニックでファン人気の高いパストーレも選出可能性が非常に高いでしょう。ここにルーカス・モウラまで入って来かねないことを考えればやはりPSG攻撃陣のレベルの高さが窺い知れます。ルーカスを入れる選択肢もあった左サイドにはモナコの10番ベルナルド・シウバを選出しましたが、ルーカスにも、またボルドーのウルグアイ代表ディエゴ・ロランにも可能性はあります。


昨季は低調だったロラン。実力は十分なだけに今季にかかる期待は大。by Twitter@diego_rolan

結局予想では強豪クラブの選手に面子が固まりすぎてしまいましたが、ファン投票を想定すればここまで実力通りにはいかないでしょう。どうなるかは実際にオールスターが開催されたらのお楽しみです。中小クラブの王様や重鎮など「目立たないけどいい選手」が出て来ることに期待したいです。

ちなみに、今年のクリスマスイヴはリーグ・アンが通常開催されている土曜日。もし、初のオールスターが「聖なる夜の祭典」となったら、「クリスマスライブ」ならぬ「クリスマスマッチ」となったら…。記念すべき第1回に相応しい、美しい夜になるのではないでしょうか。

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