EURO2016で確認したい!「ストライカーの需要と必要性」

皆さん、眠れてますか?6月10日から開幕しているEURO2016です。今大会は前回大会までの16カ国から24カ国へと出場国が増えたため、総試合数は31試合から51試合へと激増します。今までより確実に睡眠時間が減ります。この時期に急に目の下に隈を作ったりする同僚・同級生がいれば、それは”EURO病”患者さんです。察してあげてください。処方箋はサッカーの話題かもしれません。
そんな今大会。筆者が注目している選手は、特定の個人というよりも、各国のストライカー全員です。というよりも、ストライカーは本当に必要なのでしょうか?

「前回王者」スペイン、「世界王者」ドイツで「ゼロトップ化」が進む


by Offizielle Website des Fussballers Mario Götze

ポーランドとウクライナの共催で開催された前回のEURO2012は、スペインの大会2連覇で幕を閉じました。しかし、彼等には”本職FW”がいませんでした。正確にはフェルナンド・トーレス選手(現/アトレティコ・マドリー)がいて、3ゴールで大会得点王も獲得したのですが、彼は大会を通してレギュラーではありませんでした。
スペインの最前線を担ったのは、本来はMFのセスク・ファブレガス選手(現/チェルシー)。当時所属していたバルセロナでもFWを務める事はありました。そのバルセロナのパスサッカーを軸にするスペインが、前線には固定したFWを置かずにDFラインから流動的なパスワークで攻めるスタイルを極限まで突き詰めた結果、「ゼロトップ」のチームが大会を制したのです。
スペインのパスサッカーは世界中の憧れです。そんな理想的な攻撃を魅せるチームにFWはいなかったのです。
その後、ブラジルW杯を制したドイツも、本来はMFのマリオ・ゲッツェ選手(上記写真/バイエルン・ミュンヘン)を最前線に置く「ゼロトップ」を取り入れ始めました。

日本代表はいつの時代にも「ストライカーがいない」と嘆くような批判が続いてますが、欧州ではストライカー自体の必要性が問われているのです。

超万能FWのレヴァンドフスキとイブラヒモビッチ


by Telegraph

そうは言っても、バルセロナを率いて昨今のゼロトップ推奨の流れを作ったジョゼップ・グアルディオラ監督(来季からマンチェスター・シティ監督)は、バイエルンでポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキ選手(上記写真)に絶対的な信頼を置きました。レヴァンドフスキ選手自身も、グアルディオラ監督との出会いで新たなプレーの幅を加えて、今や自他共に認めるような世界最高のストライカーとなりました。
そして、今大会が最後のEUROになるスウェーデン代表のズラタン・イブラヒモビッチ選手(前パリ・サン・ジェルマン)もまた、レヴァンドフスキ選手と同じく絶対的存在のストライカーです。彼もグアルディオラ監督がバルセロナ時代に獲得を希望した選手です。確執を理由に1年でお別れになりましたが。
2人とも速さ、巧さ、高さ、強さの全てを兼ね備えています。その上で、イブラヒモビッチ選手はゲームメイクも兼任する「最前線の司令塔」であり、レヴァンドフスキ選手もポストプレー以上に組み立てに参加できてチャンスメイクも得意な「超万能型」のFWです。
ただし、2人ともスウェーデンとポーランドという所謂「強豪国」の選手ではありません。育成年代から練習メソッドを固めて選手を育てる強豪国には、「全てを可能にする」ような型破りなストライカーは生まれて来ないのかもしれません。

東欧から誕生する新たなストライカー像~ウクライナの26歳コンビに注目!


アンドリー・ヤルモレンコ選手by The Independent

東欧諸国にルーツを持つ選手から現代サッカーのニーズに沿った選手が出てくると考えると、ウクライナのアンドリー・ヤルモレンコ選手(上記写真/ディナモ・キエフ)とイェウヘン・コノプリャンカ選手(セヴィージャ/スペイン)の両ウイングにはドリブル突破だけでなく得点にも期待しています。
共に26歳で、UEFAヨーロッパリーグで上位進出の経験値も豊富です。正規のストライカーではありませんが、「得点が量産できるウイング」として新たなストライカー像を生むのではないか?と楽しみにしています。

果たして「ストライカーは本当に必要なのでしょうか?」
筆者の考えでは、今大会の東欧勢、またはイブラヒモビッチ選手のようなその血統にある選手の活躍に目を向けていく先に答えがあるのではないかと思います。
EURO2016を「ストライカーが必要なのか?」を念頭に置いて観戦するのも楽しみの1つになるのではないでしょうか?

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