今シーズン、クラブ発足以来初めてJ2での戦いに臨むことになった清水エスパルス。サッカー王国静岡の名門クラブが目指すのは、1シーズンでのJ1復帰です。そしてこの目標を達成するためにとりわけ活躍が期待されているのが、エースストライカーの大前元紀選手。では、この大前選手のこれまでのキャリアはどのようなものだったのでしょうか。
雌伏の時を経て4年目に覚醒
高校時代は全国屈指の強豪校として知られる千葉県の流通経済大学付属柏高校(以下 流通経大柏)でプレー。3年時には不動のエースストライカーとして得点を量産し、流経大柏の高円宮杯と全国高校サッカー選手権での二冠達成の原動力となっただけでなく、上記2大会の他に全国高校総体でも得点王に輝きました。
こうした高校時代の輝かしい実績とともに鳴り物入りで清水に入団したものの、加入当初から周囲の期待通りの結果を出せたわけではありませんでした。入団1年目での公式戦出場は6試合のみ。2年目もプロ入り初ゴールこそ決めたものの公式戦でのプレーは2試合しかありませんでした。
転機が訪れたのはプロ入り4年目の2011シーズン。ゴドビ監督が就任し、それまでのチーム編成が大きく変わった中で大前選手は右ウイングのレギュラーに定着します。結局このシーズンはリーグ戦全34試合に出場し、チーム最多となる8得点を記録。更に翌2012シーズンもリーグ戦全試合に出場しただけでなく持ち前のテクニックと決定力を活かして13得点を決め、完全にチームの主軸としての地位を確立します。
異国での挫折、そして再び清水へ
by エスパルスキー
清水での活躍が評価され、大前選手は2012年12月にドイツ・ブンデスリーガ1部所属(当時)のフォルトゥナ・デュッセルドルフへの完全移籍を果たします。しかし、シーズン途中での加入だったことやチームの戦術に馴染むことが出来ず、翌2013年8月にはデュッセルドルフからのレンタル移籍という形で清水への復帰が決まります。大前選手の海外挑戦は、約半年間で公式戦9試合出場して無得点という不本意な結果で終わることになりました。
清水に復帰後は再びチームの主力として活躍。2014シーズンからは背番号10を背負い、名実共にエースとしてチームを牽引しました。しかし清水に復帰して3シーズン目となった昨季、大前選手自身はリーグ戦で11得点を記録したものの、チームは勝ち星に恵まれず、クラブ史上初のJ2降格。そしてシーズン終了後、J1の複数のクラブが獲得に乗り出すなど、大前選手の去就が注目されることになりますが、大前選手は清水への残留を決断。クラブと共にJ2で戦う決意を示しました。
主将として臨む決意の2016シーズン
今年2月には主将に任命された大前選手。シーズン開幕前に行われた取材では、「J2優勝を達成して、(ホームグラウンドの)日本平でサポーターと一緒にシャーレを掲げたい」とコメントし、1年でのJ1復帰だけでなくリーグ優勝も目標として掲げました。今季は既に8試合に出場して5得点を決めるなど、チームの大黒柱として変わらぬ存在感を示しています。名門復活を懸けて戦う大前選手。今後もその戦いぶりに注目です。