地域力で快進撃を見せるオルカ鴨川FCの新たなる挑戦
振り返れば、戦国時代のようだったと語り継がれるであろう近年のなでしこリーグ。特に、伝統を受け継ぐ強豪チームが君臨する1部リーグよりも、下克上を果たすべく、新興勢力の台頭著しい2部リーグの盛況ぶりが、女子サッカー界全体の勢力図を塗り替えようとしている。その担い手として期待されるのが、2014年に設立され、わずか3年というスピードで2部昇格を果たしたオルカ鴨川FC。
千葉県房総半島南部に位置する鴨川市を本拠地に置くオルカ鴨川FC。初年度にあたる2014年に地域リーグ2部から参戦。千葉県女子サッカーリーグで2位となり、参加チーム増加というレギュレーションの変更に背中を押され1部昇格を果たします。翌年、地域リーグ1部優勝を成し遂げたオルカは、またしても改革の波に煽られることになる。これまで1リーグ制だったなでしこリーグが2部制に拡大、なでしこリーグ昇格を賭けたチャレンジリーグを含む3部制への移行により、トップリーグ参入への門戸が大きく開かた。与えられた好機を逃さず、見事、チャレンジリーグ参入を勝ち取ったのが、オルカだった。
こうして迎えた2016年、オルカ鴨川の勢いは止まらない。危なげない戦いぶりで勝ち星を積み重ねていったオルカは、チャレンジリーグEASTを優勝。つづく東西を交えた順位決定プレーオフを3戦全勝、悲願の2部リーグ昇格への道を最短距離で走り抜けた。その原動力となっているのが、スポンサーとサポーター、そしてチームが、三位一体となって地域を盛り上げようとする姿勢ではないだろうか。
スポンサー:地元企業からの惜しみない支援
オルカ鴨川FCは、2014年、千葉県房総半島の南部の鴨川市に拠点を置く亀田総合病院を母体に創設。メインスポンサーの亀田総合病院は、多額の運営費を拠出するだけでなく、選手の雇用を確保することで、サッカーに打ち込みやすい環境づくりを全面的にバックアップしている。
“高齢化、人口減が進む地域に若者を呼び寄せたい。”医療を学びながらプレーし、選手のセカンドキャリアを積極的に受け入れる仕組みづくりを推進する亀田総合病院が打ち出す地域活性化への試みがチームの後押しとなっている。
by かずさ暮らし
サポーター:小さな町から湧き上がる一体感
オルカ鴨川の最大の魅力は、下部リーグでありながらも、ホームスタジアムをチームカラーに染め上げる、熱狂的なサポーターの存在。
行政が練習場の整備に奔走し、地元の学生がボランティアに勤しむ。彼らの地道な活動が、次第に市民を巻き込んでいく。鴨川で働き、鴨川を背負い戦う彼女たちを、家族のように支える住民たち。地元企業による実業団というチーム形態にもかかわらず、地域住民が積極的に支援に回ることで、新たな地域性が芽生える。小さな町だからこそ湧き上がる一体感がチームに力を与えている。
チーム:北本綾子監督の人間力
「鴨川が活性化するのが最大の目的」とチーム立ち上げ当初に語っていた北本綾子監督。元なでしこジャパンのメンバーであり、浦和レッズレディースのエースストライカーとして、チームの初優勝に貢献した経歴を持つ彼女は、これまで培ってきた人脈により、積極的な選手補強に一役を買っている。
オルカ鴨川の充実した戦力の背景には、北本が持つ人脈に加え、彼女が持ち合わせる人間性による影響が大きい。その人間性に表れるのが、彼女がチームに伝え続けてきたプロ意識。それはサッカーに取り組む姿勢であり、応援を力に変えるスピリットでもある。日本随一のサッカー熱狂地帯、浦和での長きに渡る経験が、チームとサポーター、そして地域をも巻き込み鴨川を新たなサッカータウンへと引導していく。
そしていよいよ、オルカ鴨川の新たなステージでの挑戦が始まる。今季、新たに7名の選手の補強に成功し、さらなる進化を遂げようとしているオルカは、果たして、なでしこリーグ2部でも快進撃を続けることができるのだろうか。彼女たちの華麗なる下克上を見届けたい。
北本綾子(きたもと あやこ)
1983年6月22日生まれ
北海道札幌市出身
現役時代のポジション:FW
所属チーム:オルカ鴨川FC GM兼監督
経歴:さいたまレイナスFC(2004年)→浦和レッズレディース(2005年~2010年)→オルカ鴨川FC(2014年~)
元女子日本代表(17試合4得点)