SNSの活用によりサッカーの”今”を正確に理解する
SNS、とりわけTwitterが発達した現代のサッカー界では、クラブが公式アカウントを持ち、選手、サポーター、マスコミ関係者、更には多くのサポーターが情報発信出来るようになってきています。これはサッカー界にとって1つの変わり目だと筆者は感じています。今回は最近話題になった2つのモデルを参照しながら、考えていきたいと思います。
1:DAZNとTwitter
現在、Jリーグで一番話題を博しているといっても過言ではありません。2017シーズンから10年間の放映権を約2100億円という巨額で買い取った、英パフォーム社が提供するライブストリーミングサービス「DAZN」。その第一歩となった開幕節は、G大阪対甲府の試合が違うチャンネルで配信されるなど、トラブル続きで波紋を呼びました。
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そんなDAZNは、公式Twitterの他に「DAZN ダ・ゾーン ヘルプ」というアカウントを運営しています。ここはお問い合わせ受付となっており、不都合が出た際の連絡や、契約者からの質問に目に見える形で答えるという機能を持っています。一般的にもお問い合わせ内容をそのまま掲載しているサイトは殆どなく、特にサッカー界においては目新しいものとなっていますね。ユーザーは他の方の質問を見ることができ、それによる早期解決や手間の省略も期待されます。契約者との丁寧なやり取りからは「批判を受け入れ、改善を繰り返す」という意志が感じられ、それを最もやりやすいのがTwitterだというのにも合点が付きます。
【お知らせ】ブンデスリーガのケルンvsバイエルン、ドルトムントvsレバークーゼンの2試合において、映像を受信するまでの過程に起きた問題により、後半からの配信となりました。見逃し配信は試合開始からの映像を配信できるよう準備を進めております。大変申し訳ありませんでした。
— DAZN ダ・ゾーン ヘルプ (@DAZN_JP_Help) 2017年3月4日
ただし、お問い合わせというのは「分からない人が聞く場所」ですから、どうしても批判的なコメントが増えてしまいます。これが世論として読み取られる(現在は合致していますが)というのがデメリットですが、DAZN側は百も承知でしょう。これらを踏まえた上で、システムの向上や不具合の全力を注ぐといった姿勢だと思います。ですが、改良の余地はまだまだあります。謝罪会見を開いたとはいえ、その都度不具合が発生してしまう現状では、いくら大金を落としていても契約者を満足させることはできません。
2:競技規則とTwitter
3月1日のACL川崎対イースタンSC戦での、奈良竜樹選手の退場シーンについてもかなり話題に上がりました。Twitter上には問題のシーン動画が次々にアップされ、「これは厳しすぎる!」だとか「せめて警告だろ!」といった審判への非難が大多数を占めていたと思います。
JFA審判委員会は、Youtubeに「2017シーズン競技規則スタンダード」といった動画を投稿しています。これは、審判の判定基準を示すもので、実際のプレーを参照しながら、JFA審判委員会副委員長の上川徹さんが解説をしているものです。片方を応援している人が大勢であるサッカーにおいて、感情的な判定への批判は絶えませんが、このような基準が例示されている事自体、どのくらいの方が知っていたでしょうか。その再生数は、3月9日現在で29436回です。
実際、今回の論争中に知った方は多いと思います。ですので、今回は議論が発生したことがサッカーへの正しい理解に繋がった良い例でした。プレーについても動画内の「競技者が相手競技者を押さえる、引っぱる、または押す反則をして、相手競技者の決定的な得点の機会を阻止」という記述に基づいて考えると、ファウルならば退場という判定が妥当だと筆者は考えます。逆に警告を叫ぶならば、その理由は「反則を犯した競技者はボールにプレーしようとしていた」以外にはあり得ないわけです。判定への不満は「試合の流れを左右する」という意味でペナルティーエリア付近で多く沸き上がりますから、決定機阻止についての解釈が出回ったのは大きな出来事だと思いました。
このようにSNSの発達、またその活用法が工夫されている事で、情報を受動的に獲得する事が可能となってきています。勿論、そこにある弊害とは上手く関わっていかなければなりませんが、SNSが運営側とサポーターの架け橋になれれば、サッカーの深みをより知る事が出来るでしょう。