リスタートを共に。岩渕真奈が新生なでしこジャパンを牽引する
by newspicks
日本サッカー協会(JFA)は9日、アルガルベ杯2017に臨むなでしこジャパンのメンバー23名を発表しました。高倉監督にとって初の国際大会という意味でも、選出されるメンバーに注目が集まるところ。「色々な可能性を出して欲しい、新しい、魅力ある力が発揮できるようにしていきたい。」と語る高倉監督の言葉どおり、昨年11月のFIFA U20女子ワールドカップで活躍をみせた平尾知佳選手、北川ひかる選手(ともに浦和レッズレディース)、長谷川唯選手、籾木結花選手(ともに日テレ・ベレーザ)とアンダー世代の選手4名がメンバー入り。若い力に期待を寄せました。
2011年のFIFA 女子ワールドカップ ドイツ大会の優勝をはじめ、2012年 ロンドン五輪、つづく2015年 FIFA 女子ワールドカップ カナダ大会を共に準優勝を果たし、近年、国際舞台で結果を残し続けてきたなでしこジャパンですが、出場権を逃したリオ五輪予選以降、彼女らに向けての風当りも強くなってきている。その要因に挙げられるのが世代交代の停滞です。長年に渡り代表に君臨してきたレジェンド澤穂希。彼女の残像を追いかけるのはもうやめよう。「新しい」という言葉を繰り返す高倉監督のリスタートに賭ける決意は固い。
その中核を担うのが、上記に並べた全ての大会に出場し、現在はドイツの名門バイエルン・ミュンヘンに所属する岩渕真奈選手ではないでしょうか。
Team Bayern München in Edmonton ! war sehr schöne Zeit. Ich freue mich schon auf die neue Saison;-) pic.twitter.com/zzOFU4DZZO
— Mana Iwabuchi 岩渕真奈 (@buchi_mana) 2015年7月2日
岩渕真奈(いわぶち まな)
1993年3月18日生まれ
出身地:東京都武蔵野市
155㎝/52kg
ニックネーム:リトルマナ マナドーナ ぶっち
経歴:関前SC→日テレ・メニーナ→日テレ・ベレーザ→ホッフェンハイム(ドイツ)→バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
天才少女現る
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兄の背中を追うように、男子児童に交じってボールを追いかけていた少女は、12歳で日テレ・ベレーザの下部組織日テレ・メニーナに入団。その2年後にはトップチームに登録、同年、なでしこリーグ初出場を果たします。
岩渕真奈選手は、センセーショナルな国際舞台でのデビューを果たします。2007年にU16女子日本代表に選出、AFC 女子選手権準優勝。翌年に開催されたFIFA U17女子ワールドカップ2008出場メンバーに選出、チームは準々決勝でイングランドに敗れはしたものの、岩渕真奈選手は、大会MVPに匹敵するゴーデンボール賞を受賞しました。同大会での活躍が評価されて、アジア年間最優秀女子ユース選手賞を獲得。さらに翌年、中国で開催された2009年 アジア女子選手権のメンバーに選出、準決勝、決勝と立て続けに決勝ゴールを挙げ、大会MVPを獲得、同年のアジア年間最優秀女子ユース選手賞を2年連続で受賞しました。
天才ドリブラー”マナドーナ”
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2010年、岩渕真奈選手は、17歳の若さでなでしこジャパンデビューを果たします。2011年の世界制覇に湧いたメンバーにも名を連ね、途中出場が多いながらも、”試合の流れを変える選手”として重宝されるようになります。
試合の流れを変えると言わしめるその理由は、緩急を自在に操るドリブル、そしてスピード。研ぎ澄まされた嗅覚から生まれる決定力に他なりません。とくに”マナドーナ”と名付けられるその異名どおり、まるでマラドーナのようなボディーバランス、華麗なテクニックは、多方面からの評価は高い。「どんな相手でもドリブルで抜けちゃうような選手が理想」と語る岩渕真奈選手の視線の先はやはり世界なのでしょう。
相次ぐ負傷を乗り越えて
2012年まで在籍していた日テレ・ベレーザで、リーグ3回、リーグカップ3回、皇后杯2回のタイトル奪取に貢献し、代表でのキャリアも順調に積み重ねていった岩渕真奈選手は、2012年、活躍の場をドイツへと移します。ホッフェンハイムでブンデスリーガデビューを果たし、その後、バイエルン・ミュンヘンへ移籍。同年、39年ぶりのリーグ制覇に貢献しました。
しかし、一見、順風満帆なキャリアに映る岩渕真奈選手ですが、その背景には、度重なる怪我との戦いがありました。2015年2月に右膝外側側副靭帯損傷、リハビリを重ねて一度は戦列に復帰したものの、ワールドカップの直前合宿で今度は、内側側副靭帯を損傷。なんとか大会には出場しましたが、オフ明けのプレシーズンに外側側副靭帯を断裂。手術に踏み切りました。
「もうやだまたか」当時の思いをブログに綴っていた岩渕真奈選手ですが、文末には「前を向いて頑張ります。」と締めくくっています。帰国も考えたという彼女でしたが、無事バイエルンとの契約を延長、リスタートを決意します。
海外の選手と渡り合ってきた経験を持つ岩渕真奈選手は、日本人選手ならではの特徴を、足下の巧さと味方への気遣いだと語っています。傑出したチームワーク、そこから繰り出されるパスワーク。日本らしさ、日本の強みを知る岩渕真奈選手は、再び世界制覇へ向けてなでしこジャパンと共にリスタートする。