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『世界最高額のSB』アーセナルDFベジェリン~「変化」への適応が促す「進化」

hirobrown

2017/02/01 21:35

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NEWS

“お隣り”へのレンタル移籍


アーセナルの練習場と敷地が隣同士のワトフォードへレンタル移籍した2013-2014シーズン。by Squawka

 それがトップチームデビュー直後でのワトフォードへの短期レンタル移籍でした。ただ、ワトフォードの練習場はアーセナルの練習場の隣の敷地にあるため、毎日のようにアーセナルの選手とは顔を合わせました。

 当時は2部リーグに所属していたワトフォードは元イタリア代表でチェルシーのレジェンドでもあったジャンフランコ・ゾラ氏が監督を務めており、攻撃的なサッカーを志向するゾラ氏の下でポジションを掴んだものの、直後にゾラ監督が解任された事で状況は一変。

 その時に彼が気付いたのは、アーセナルには20年近く指揮を執る監督がいて、その指揮官は16歳からの自分の成長を見守ってくれている事

 2013年11月から翌年2月までの短期レンタルからアーセナルへ復帰したベジェリン選手。上記のようにその年の夏キャンプから本格的にトップチームに合流した上で40m走の記録を作った彼は、とにかくまずは自分の持ち味をアピールし続けました。

 キャンプからのアピールに成功したベジェリン選手はUEFAチャンピオンズリーグのボルシア・ドルトムント戦でチャンスをもらったものの、守備の脆さを突かれてチームも惨敗。

 それでもアーセン・ヴェンゲル監督は機会を見つけては彼を左SBやサイドMFとして起用し、その反応を見守っていました。

「変化」に適応する事が「進化」を促す


DFへのコンバートと同時期に出会った自己啓発書『チーズはどこへ消えた?』

 若手の発掘と育成手腕に長けたヴェンゲル監督が注視していたのは、「ストレスや重圧への対処の仕方」でした。ストレスを溜め込む事は不健康ですが、人間は突き動かされるような刺激がないと行動も起こせません。何をやっても試合では上手くいかない中、それでも諦めない姿勢でハードワークを怠らないベジェリン選手は、そのストレスへの対処が的確でした。

 バルセロナで将来に対する不安を感じ始めた頃、コーチから読書を薦められたベジェリン選手は、世界的に大きな反響を得た自己啓発本『チーズはどこへ消えた?』と出会いました。心理学者のスペンサー・ジョンソン氏が書いたこの自己啓発本は筆者も愛読していますが、「変化」に適応するための考え方や方法論を説いています。

 その頃、自身のSBへのコンバートや異国となるアーセナルへの移籍にも活かした「変化」への適応は「進化」を促し、彼の血となり、肉となって生きています。

 そして、「ハードワークは裏切らないし、自信にもなる」という彼のプロフェッショナルな考えにも繋がり、それがストレスへの的確な対処法となっているのです。

 ハードワークを怠らずに諦めない姿勢は、自身の裏のスペースを取られても1対1の対応での粘り強い守備へと活かし、裏を突かれた場合はその超絶スピードでファインプレーを連発する事で結果を示し始めたベジェリン選手は、2014-2015シーズンの後半戦からレギュラーに定着。

また、ベジェリン選手がレギュラーに定着した頃、逆サイドにはセンターバックも経験して守備力に秀でたスペイン代表の左SBナチョ・モンレアル選手、右側のボランチにも広範囲をカヴァーできるボールハンターのコクラン選手が定着し始めたのもタイミング的には最適でした。

固定概念に縛られない不世出の超攻撃的SBが『世界最高の右SB』へ


負傷明けの途中出場したストーク戦。ウォルコット(右)の同点弾をアシストして抱擁。by The Indian Express

 2014-2015シーズンはFAカップ優勝にも貢献したベジェリン選手。2015-2016シーズンには1年を通して定位置を守り、チーム唯一のリーグベストイレブンにも選出。公式戦46試合の出場で9アシストを記録するなど、より得点に直結する攻撃面での成長ぶりは凄まじいものがあります。

 それを印象付けたのが、今季のプレミアリーグ第13節のストーク・シティ戦。直前まで怪我で戦列を離れていたベジェリン選手はベンチスタートとなったものの、DFの負傷で前半から急遽途中出場。

 序盤から厳しい試合内容の中で投入直後に先制点を許してしまいましたが、彼のアシストから同点に追いつくと、その後も理想的な攻撃サッカーを披露したアーセナルが3-1で勝利。攻撃に「幅」も「深さ」を加えたのは間違いなくベジェリン選手でした。負傷明けの右SBの選手が途中出場でここまで攻撃の最終局面で「違い」を作れるとは・・・。その存在感の大きさを感じさせた試合でした。

 もっとも、攻撃参加するだけでなくぺナルティエリア内まで突破したり、クロスよりもグラウンダーのパスで得点をお膳立てするようなベジェリン選手は、固定概念に囚われないアーセナルとヴェンゲル監督のチームだからこそ誕生したサイドバックとも言えます。実際、アーセナルで活躍を始めてからもスペイン代表からはなかなか声がかからず、現在も招集されたとは言っても代表に定着も仕切れていません。

 代表歴が薄いにも関わらず、『世界最高額』のSBとして評価されるベジェリン選手。今後は『世界最高額』だけでなく、名実ともに『世界最高』を目指す!そんな彼のさらなる進化が楽しみです!

プロフィール

名前:エクトル・ベジェリン
生年月日:1995年3月19日(21歳)
出身:スペイン
身長:177cm
体重:74kg
所属クラブ:FCバルセロナ下部組織(2003-2011)→アーセナル(2011- ※ワトフォード(2013.11~2014.2)
ポジション:右サイドバック
背番号:24

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