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【リオ五輪メダル候補国注目選手③】ブラジル悲願の金メダル獲得の鍵を握るDFマルキーニョス~5試合連続完封を牽引する守備の要の覚悟

hirobrown

2016/08/18 21:30

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01_ネイマール、ルアン、マルキーニョス
開幕から2戦連続ドローだった開催国ブラジルの攻守の歯車を噛み合わせたキーマン3選手。左からネイマール、ルアン、マルキーニョス。by Daily Mail Online

リオディジャネイロ五輪男子サッカーもいよいよ決勝と3位決定戦を残すのみとなった中、開催国にして『サッカー王国』ブラジルの攻守の歯車が噛み合って来ました。

今大会のブラジルはフル代表のエースにしてバルセロナでも主軸を担うFWネイマール選手を始め、他国が有力選手の派遣を拒否する中でも要所要所に欧州クラブ在籍のタレントを揃える事に成功。ホームアドバンテージや戦力面を考えれば、優勝候補の本命中の本命です。五輪に至っては今まで優勝経験がないブラジルでしたが、悲願の金メダル獲得に向けて順調な準備が進められていたかに見えました。

しかし、開幕戦の南アフリカ戦は相手に押し込まれる時間帯もあり、後半は数的優位になった時間が長かったにも関わらず無得点の引き分け。続くイラク相手にもスコアレスドローを喫してしまい、ネイマール選手等がスタンドに謝りながら引き上げる事態にまで陥っていました。

そんな中で迎えた第3戦のデンマーク戦。前の2試合から先発メンバーを2名入れ替え、システムもワンボランチの<4-3-3>から、ブラジル伝統のダブルボランチを置く<4-4-2>へマイナーチェンジ。これが功を奏し、デンマーク戦には4-0で勝利。決勝トーナメント1回戦ではコロンビアを2-0で勝利、準決勝ではホンジュラスに6-0で大勝し、決勝に駒を進めています。

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カウンター戦略に切り替えて復調~現陣容を考えればベストな選択

02_ジェズス
ブラジル国内リーグで得点ランクトップを走る19歳のFWジェズス。来年1月からのマンC移籍が決まった超逸材だが、今大会は左サイドMFに回って黒子的な役割でもチームに貢献している。by Dono da Notícia

攻守の歯車が噛み合い始めた現陣容へとメンバー変更があったのは中盤。イタリアのラツィオでプレーするMFフェリペ・アンデルソン選手と国内でプレーする守備的MFチアゴ・マイア選手の2人に替えて、FWのルアン選手とMFウォレス選手が先発に抜擢されました。

この先発メンバーの変更により、ウォレス選手とオーバーエイジ枠のMFレナト・アウグスト選手の2人がダブルボランチでコンビを組み、最前線にはネイマール選手と共にルアン選手が入りました。それまで3トップのセンターに入っていたFWガブリエル・ジェズス選手は左サイドMFにポジションを移し、右ウイングに入っていたFWガブリエル・バルボサ選手はやや下がって右サイドMFの役割を担う事となりました。

プレーに柔軟性のあるFWルアン選手と年長者のネイマール選手が組む2トップにはかなり自由が与えられていますが、彼等2人は攻守のバランスを整える役割も担っており、どちらかがパスを受けに下がったり、相手の攻撃の起点を潰しに下がって来る事もしばしば。そして、両サイドに張る「19歳の2人のガブリエル」を活かすプレーも目立っています。

こうして周囲の選手に活かされる協力体制を採ってもらっている「2人のガブリエル」選手ですが、その代わりとしてDFとMFの<4+4>の守備ブロックを組む際の両サイドにプレスバックして来るハードワークを担う事でチームに貢献しています。

それまで起用されていたフェリペ・アンデルソン選手は「ロナウジーニョの後継者」のようなアイデア豊富なファンタジスタ然としたプレーをする選手なのですが、理想とする『3トップ+F・アンデルソン選手』による魅惑の攻撃サッカーでは思うような結果を残せず。カウンター路線に切り替えました。

ただ、ネイマール選手やジェズス選手、バルボサ選手は3人ともスピードに乗ったドリブル突破を武器としているため、相手陣内にスペースがあるまま一気に攻撃を仕掛けるカウンター攻撃の方が、現在のこのチームには向いているのです。

5試合連続無失点~鉄壁の守備を見せるDFマルキーニョス

03_マルキーニョス
ビルドアップに定評があるマルキーニョスは、クラブでは右SBやボランチとしても起用されている。by 欧州サッカー 移籍市場情報・噂まとめブログ

そして、それを可能にするのが今大会全5試合無失点を続けている鉄壁のDF陣があってこそ。4バックを組む4選手は全試合先発出場を続けており、個々の対応はもちろん、大会を通して連携も緻密になって来ています。

その堅守の要となっているのが、センターバックを担うDFマルキーニョス選手。フランスの強豪パリ・サン・ジェルマンでプレーする選手ですが、守備者として希少価値の高いスピードを兼備している事はもちろん、守備面よりもボールの持ち運びやゲームの組み立てに絡める技術力を高く評価される22歳のDFです。

今大会ではカウンターサッカーに切り替えた後ではマルキーニョス選手の持ち味が消えるはず。実際、クラブではセンターバックとしてポジションを獲得した事はなく、右サイドバックやボランチなどにも対応可能な守備のマルチプレーヤーとして起用されています。ブラジル代表歴が豊富で、共に代表のキャプテンマークまで巻いた経験があるDFチアゴ・シウバ選手とダビド・ルイス選手がいるとはいえ、身長も180cmのマルキーニョス選手にはまだまだセンターバックとしての強さに難があったためです。

しかし、今大会のマルキーニョス選手は個々の対応に滅法強く、準々決勝・コロンビア戦ではオーバーエイジ枠のエースFWテオフィロ・グティエレス選手に全く仕事をさせないアプローチを個人としても組織としても完遂する事に成功。間違いなく5試合連続無失点を続ける守備の要となっています。

マルキーニョス選手の今大会への派遣にはクラブは拒否反応を見せていたものの、本人の強引な希望で参戦が決まるなど、相当な覚悟を持って今大会に挑んでいるのは、試合中に見せる気迫溢れる表情や集中力を切らさない姿勢から強く伝わって来ています。

もともと2011年にブラジルの名門コリンチャンスでプロデビューして以降、僅か1年半でコパ・リベルタドーレスで優勝して南米王者となり、そのままイタリアの強豪ASローマへ。ローマでも1年プレーしただけで速さに対応できる技巧派のDFとして欧州の移籍市場で話題を集め、2013年に19歳にしてパリへ40億円規模の高額な移籍金で加入したマルキーニョス選手のキャリアはとんとん拍子に上手く行き過ぎていたのかもしれません。

少し挫折も味わった逸材が貪欲になり始めた時に本当の進化が起きる。それがマルキーニョス選手の現状なのでしょう。

準決勝ではさらに得点も決めて勝利に貢献。表看板のドリブルを得意となるアタッカー陣に注目が行きがちですが、今大会無失点を続ける守備の要に注目しましょう!
決勝は8/21 5:30〜。相手は2014年W杯で惨敗したドイツ。地元で悲願の優勝となるのでしょうか。

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