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理想のホームタウン&ストーリー戦略(J1松本)

策山 経義

2019/04/16 07:40

2019/04/15 22:38

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地域の宝、公共財としてホームタウンをはじめとする地元地域から熱烈な支持を受けているJクラブがある。それは松本山雅(J1松本)。J1に復帰し、今季から再びトップリーグで戦う地方クラブの雄。その強さは地域に完璧に根が張られたホームタウン戦略と、今まで培ってきたストーリーにある。

J1松本のホームタウン

J1松本がある長野県の県庁所在地である長野市にはJ3長野があり、面積が広い県とはいえ、首都圏以外の地方県に2つJクラブがあるのは珍しい。当然全県ホームタウンとする県民クラブにならないため、J1松本は県内の限られた7市町村(松本市、塩尻市、山形村、安曇野市、大町市、池田町、生坂村)をホームタウンとしている。一方のJ3長野は16市町村(長野市、須坂市、中野市、飯山市、千曲市、坂城町、小布施町、高山村、山ノ内町、木島平村、野沢温泉村、信濃町、飯綱町、小川村、栄村、佐久市)。
長野県の面積は広く、北部(大北・長野・中野飯山の3地域)、中部(乗鞍・松本・上田・諏訪・佐久の5地域)、南部(木曽・上伊那・下伊那の3地域)に分けることができ、J1松本は中部の松本・乗鞍地域と北部の大北地域、J3長野は北部の長野・中野飯山地域と中部の佐久地域で現在ホームタウンを構成している。地図を見ると、長野県(信州)の北半分の東西で住み分けているイメージである。南部と中部の上田・諏訪地域は空白であり、今後どうなるのか個人的に気になる。

山雅後援会 岡谷支部さんの投稿 2019年2月28日木曜日

松本山雅後援会岡谷支部公式FBページ:

ホームタウン入りを陳情されるクラブ

現在、Jリーグには55クラブあるが、J1松本ではちょっと他では見られない現象が起きている。それは、地元地域からホームタウン入りの陳情を受ける立場になっているというもの。岡谷市にある山雅後援会岡谷支部からは岡谷市のホームタウン化に向けた「おかやホームタウン計画」(グリーンプラン)が発表され、陳情運動が続いている。岡谷市はちょうどJ1松本のホームタウンの東南に隣接した地域で、J3長野に影響ない位置。この「おかやホームタウン計画」ではホームタウン化による効果として、「地域商業への直接的な貢献」「市(特産品や産業)の全国的なPRと広域連携」「豊かで夢のあるまちづくりへの貢献」の3項目が挙げられており、もはやJクラブが地域貢献のシンボルとなっている。

by 映画「クラシコ」公式HP

信州ダービー

 もう一つ、ここまで高みを目指してきたJ1松本について欠かせないものが「ストーリー」。J3長野と長年繰り広げてきた「信州ダービー」である。長野との対戦は、2009年までは地域リーグで行われており、ともにJリーグを目指すライバルとして、地域リーグ時代から大きな盛り上がりを繰り広げている。地域リーグからJFLへ舞台が続いた。両クラブともにJリーグ加盟を実現したが、2012年以降はカテゴリが違うために、公式戦での信州ダービーは2011年以降は行われていない。このストーリーはドキュメンタリー映画「クラシコ」として2010年に公開され、盛り上がりに拍車をかけている。
 この信州ダービーを象徴する松本市と長野市の地域間対立には、実は歴史的背景も存在している。つまり信州ダービーは実は明治時代から続いているというもの。その昔は松本市は筑摩県、長野市は長野県の県庁所在地だったが、明治9年の第2次府県統合により、筑摩県は長野県に吸収されて消えてしまい、松本市は県庁所在地で無くなってしまった。それ以降、松本市民と長野市民の間には歴史的な要因によるライバル心が存在し続けている。

 

長野県にある2つのJクラブ

 ホームスタジアムをJ2基準に改修するという事で、長野がJリーグ(J3)に参入したのが2014年。松本がJ1昇格を決めたのも2014年。まるで、「同じカテゴリには絶対ならない」という意思表示のように強い気持ちが松本にはあるのかもしれない。その後、松本は1年でJ2に戻ってくるが、昨季J2で優勝し、2度目のJ1昇格を決める。一方の長野はJ3のままである。いつか、どこかのカテゴリで両チームは同席し、信州ダービーが再現されるかもしれないが、今季は第9節を終わって松本はJ1で12位。一方の長野はJ3で16位となっており、現在の順位では同じカテゴリになる可能性は高くはないが、シーズンは終わってみなければわからないもの。
 クラブ社長が以前に「松本山雅FCが成長した3つの理由」をコメントしている。
①「クラブは誰のために存在するかが明確に共有できた。」
 「たまたま松本に「アルウィン」という球技専用スタジアムがあって、街を盛り上げたいという地元の「JC(青年会議所)」経済団体があって、それにプラスして「プロサッカーチームを創る会」という任意団体があって、その三位が一体となってこの活動に結びつけていった」
②「松本山雅FC を取り巻く松本山雅ステークホルダーが私利私欲なく行動し続けた。」
③「長野県にライバルのクラブが存在した。」
 このように、J1松本を成長させた外部要因の中に、はっきりとライバル(J3長野)の存在を肯定している。逆にJ3長野が無かったら、今とは違った立ち位置にいたかもしれない。


by 山雅後援会公式HP

「語り合い」などの付加価値の高さ

 J1松本は、県庁所在地ではない二番目の都市をホームタウンとして、県庁所在地をホームとするJ3クラブと県内で同居しているためか、その地域密着度、地域貢献度は限りなく高いと言える。特にファン・サポーター、地域との距離間はJクラブの中でもトップクラスだと言える。ホーム平均観客動員数も昔からほとんど1万人を切る事はなく、J2時代もその動員数の多さは際立っている。
J1松本の今までの活動を見てきて、際立って目立ち、評価できるのが、ホームタウンの中でファン・サポーターや地域住民と徹底的にクラブの未来について語り合っていること。これは「公共財」としてのJクラブの理想的な姿である。
「山雅ドリームサミット」では、ホームタウン住民、ファン・サポーター、自治体、企業、スポンサー、メディア、ボランティア等、様々なステークホルダーと共にクラブの課題とその解決策について語り合い、「松本山雅ホームタウンサミット」では各ホームタウン自治体関係者、クラブ、山雅後援会、ホームタウン、ボランティア、ファン・サポーターでお互いが持つ情報交換・報告を行っていて、お互いの距離感が本当に近いと実感する。


by J1松本公式HP

今後の期待

 サッカー以外にもNPO法人松本山雅スポーツクラブでは、「スマイル山雅」事業で健康増進事業を積極的に推進しており、他にもB2リーグ信州との相互交流や、選手による病院訪問など目を見張る事例が数多い。
Jクラブの中でもJ2以下ではどこも慢性的に、観客動員対策に頭を悩ませている。県民クラブになれない市民クラブがどうやってJ1で2度目の挑戦ができているのか。J2時代から平均1万人以上の観客をなぜ動員できているのか。J1松本にはそれらを実現できる様々な事例が満ち満ちている。今後も地方の市民クラブの優等生としてJ1で奮闘し、1シーズンでも長くJ1で戦い続けて欲しい。

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