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輝き放つ高卒ルーキー!湘南ベルマーレの鈴木冬一選手に注目だ

kurihara

2019/04/12 21:30

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NEWS

桜咲く入学入社のシーズン。街を歩けば新入生や新社会人らしきフレッシュマンが新たな装いに身を包み、自信に満ち溢れた表情を浮かべながら各々が選んだ未来への第一歩を踏み出そうとしている。

Jリーグも開幕から早1ヶ月が過ぎ、各クラブの新卒加入選手が次々とデビューを飾っているが、その中でも特に注目したいのが湘南ベルマーレに所属するMF鈴木冬一選手だ。

新体制会見にて挨拶

今季より長崎総合科学大学付属高校から湘南ベルマーレに加入。リーグ開幕二戦こそ出番は無かったが、3月6日のルヴァン杯長崎戦で今季初スタメンに抜擢。続くリーグ第3節鹿島戦では途中出場を果たし、湘南が早々に退場者を出し一人少ない劣勢を強いられる中で存在感を示した。その後はコンスタントにスタメンに名を連ね、4月9日の時点で今季リーグ戦4試合、カップ戦2試合に出場。高卒ルーキーながら既に欠かせない存在となっている。

自陣深くで守備に奔走

鈴木冬一選手の持ち味は何と言っても物怖じしないその度胸にある。高校時代は組み立て役と点取り屋の二つを担っていたという同選手は仕掛けの意識が高く、サイドでボールを受けると得意のドリブル突破で多くのチャンスを創出。筆者が彼のプレーを初めて生観戦したプレシーズンマッチ福島戦においても、出色のプレーで新加入選手随一のインパクトを残し、早くも大器の片鱗を見せ付けると共に今季の活躍に期待を膨らませる湘南サポーターも多かったはずだ。

福島戦に出場

上述した鹿島戦では右WBの位置で攻撃を牽引。屈強な相手DFに囲まれながら突破を試みる場面が何度か散見され、ルーキーらしからぬ強気な姿勢を全面に押し出したプレーで観客を唸らせた。

直近のリーグ第6節ジュビロ磐田戦では同サイドの大久保嘉人選手とマッチアップ。W杯に二度出場しJ1通算最多得点記録を持つ大先輩を前にしても全く怯むこと無く、球際で激しくぶつかり堂々と渡り合った。

対峙する鈴木冬一選手と大久保嘉人選手

実は両者には共通点がある。高校サッカー界で名将とうたわれる小嶺忠敏監督の教え子であり、かつて国見高校時代に指導を受けた大久保嘉人選手も試合前から鈴木冬一選手を意識していたようだ。弟弟子との対戦を終えた大久保嘉人選手は「小嶺先生の教え子ですよね。いいんじゃないですか。勢いがあって良かった」と一定の評価を示した。

湘南に加入するまでの経歴にも着目したい。大阪府出身でセレッソ大阪の下部組織に在籍していた鈴木冬一選手は、実はセレッソ大阪U-18所属時代にJ3でプロデビューを果たしている。クラブ側も未来を背負って立つ中心選手としてその将来を嘱望していたに違いない。

しかし、、U-17W杯代表経験もあり順風満帆な日々を過ごしているかに見えた同選手はその後、自身のSNSを通して長崎総合科学大学付属高校へ転入すると発表し話題を集めた。

Jクラブユースから高体連への移籍は、ここ最近では稀なケースでは無くなりつつある。実際、現・愛媛FC所属の神谷優太選手(東京ヴェルディU-18→青森山田高校)や現・ザスパクサツ群馬所属の中村駿太選手(柏レイソルU-18→青森山田高校)らが慣れ親しんだクラブから高体連へと移籍している。彼らに共通している点は、より厳しい環境の中に身を投じて自分を追い込み、更なる成長を求めるところにある。

鈴木冬一選手が高校サッカーへ身を転じたのも同じ理由からだった。

クラブチームの育成組織の第一目的は一人でも多くのプロ選手を輩出することだ。そのためにクラブは恵まれた練習環境を提供し、選手は質の高いチームメートと切磋琢磨しながら上を目指す。鈴木冬一選手もその一人だった。

だが、そのような恵まれた環境にいながら、鈴木冬一選手は焦燥に駆られていたという。U-17杯において自身と世界トップレベルとの実力差を肌で感じ、このままクラブに籍を置いたままプロになれるだろうか。仮になれたとしても目に見える結果を残せるだろうか。自問自答の日々が続いた。

そして悩み抜いた末、8年間過ごしたクラブを離れる決断を下し、遠く離れた長崎の地へと赴いた。数多くのプロサッカー選手を育ててきた小嶺忠敏監督の指導を受けられる事も転入理由の一つだろう。

見知らぬ土地での再スタート。クラブと部活との違いに戸惑いを感じながらも徐々に結果を出し、チームからの信頼を勝ち取り主力として活躍した。最初で最後の冬の選手権。帝京長岡高校との三回戦では自らゴールも決め、献身的なプレーでチームを引っ張る鈴木冬一選手に見入った人も多かっただろう。チームは惜しくも敗退してしまったが、同選手は試合後、自身のSNSで自分を受け入れてくれた監督とチームメートに感謝の意を示し、晴れやかな表情を浮かべながら自ら飛び込んだ高校サッカー生活に幕を下ろした。

これまでの環境を一度リセットし、自身の課題と真正面から向き合い、足りないものを少しずつ埋めながら着実に力を伸ばしてきた。そしてその活躍が湘南ベルマーレの目に留まり、雌伏の時を経てプロサッカー選手としての道を切り拓く。今季ここまでの活躍は、彼がこれまでに選んできた道のりが間違いでは無かった事の証左であろう。

プロとしての生活はまだまだ始まったばかり。いずれはプロの壁にぶつかる事もあるだろう。だが、これから先どんな挫折を味わおうと、困難な道のりをあえて歩んできた彼ならば、その度に乗り越え、更に強く逞しく成長した姿を我々に見せてくれるはずだ。

あくなきチャレンジこそが彼の生きる道。ハングリー精神の塊と言っても過言ではない鈴木冬一選手に目が離せない。今後の更なる活躍が楽しみな逸材である。

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