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ロシアでの無念を晴らすべくベルギーの地へ!シント・トロイデンVVの遠藤航選手

扇ガ谷 道房

2018/10/12 08:13

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NEWS

ロシアW杯が明けて開幕した2018-2019サッカー欧州リーグ。今シーズンも多くの日本人サッカー選手が欧州各国リーグに所属しリーグ戦にチャレンジしています。
その欧州リーグの中で、日本人サッカーファンが注目したいリーグとなったのがベルギー1部リーグのジュピラー・プロ・リーグ。
中でもシント・トロイデンVVというクラブに注目が集まっています。何故ならば5人もの日本人選手が所属しているからです。
その日本人選手の中で最も注目したい選手が浦和レッズから移籍した現日本代表の遠藤航選手。リオデジャネイロ五輪キャプテンだった遠藤航選手には、次期W杯日本代表のキャプテン就任も期待されています。
その遠藤航選手を追ってみました。

屈辱的な経験をしたからこそ

結局出番は無かった!
日本代表として臨んだ晴れの舞台で、とうとうピッチに立つことができなかったのです。
2006年ドイツW杯。ガンバ大阪の遠藤保仁選手は、結局一度もピッチに立つことなくW杯を終えたのでした。屈辱的な想いだった筈です。
  
しかしその後の遠藤保仁選手は、日本代表の司令塔として絶対的に欠かせない中心選手となり、岡田武史監督からは「チームの心臓」と呼ばれるまでの存在になった事は、多くのサッカーファンの皆さんがご存じの事だと思います。
その遠藤保仁選手のエピソードを髣髴させる経験を、同じ苗字の遠藤航選手も体験したのです。
日本代表として選出されながら、ロシアW杯で日本代表が戦った4ゲームで、一度もピッチに立つ事ができなかった。
  
奇しくも同じ遠藤姓の二人の日本代表経験者が、サッカー選手であれば誰でも夢見るW杯代表チームに選出されながら、一度もピッチに立てなかったという経験をしているのです。余りにも奇遇な関係性に驚くばかりです。
  
サッカーの世界に限らず、屈辱的体験は、その後の人生に大きな変化をもたらすもの。遠藤保仁選手も屈辱的な経験が、その後サッカー選手として大成する事ができた要因の一つにある筈です。
つまり、遠藤航選手の今後のサッカー選手としての行く末も、遠藤保仁選手の事例をなぞらえる可能性を秘めていると筆者は思うのであります。  

旅立ちは突然に

屈辱的な経験をしたからこそ!
ロシアW杯明けのJリーグ初戦第16節。浦和レッズは本拠地埼玉スタジアム2002で名古屋グランパス戦に臨みます。
ゲームは3対1で浦和レッズが勝利しますが、3得点の内2点を遠藤航選手がヘディングで叩き出したのです。正にロシアW杯に出場できなかった想いを叩きつけているかの様な見事なゴールでした。
  
その直後の事でした。突然の移籍報道。ベルギーのシント・トロイデンVVに遠藤航選手が移籍する報道が流れたのです。
翌17節のアウェイでのセレッソ大阪戦が、浦和レッズでの遠藤航選手の最終戦になってしまいました。
サッカーに限らず何事もタイミングを逃すか捉えるかで、人生は大きく変わってしまうものです。
ファンには唐突感があるにせよ、海外クラブからオファーを受けた当事者にとっても、唐突のオファーにどう対応するかは大きな決意が必要です。
  
遠藤航選手には、このオファーが自身の人生にとって大事であり、必要な選択だと判断できたからこそ下した結論だった筈でしょう。
ロシアW杯の屈辱的な経験を浦和レッズで活かして欲しいと願った浦和レッズファンも多い筈ですが、ベルギーでの経験を日本代表として次期W杯に活かして欲しいと願う考え方もあります。
何れにしても、短いアスリート人生で海外を経験できる選手もごく僅か。旅だった遠藤航選手は意外にも早く成果を発揮することになりました。

欧州初ゴールも突然に

2018年7月22日Jリーグ第17節セレッソ大阪戦を終えた遠藤航選手は、ベルギーに旅立ちます。移籍先はベルギー・ジュピラー・プロ・リーグのシント・トロイデンVV。
2018年8月5日ジュピラー・プロ・リーグ第2節ゲンク戦。遠藤航選手は、初めてベンチ入りを果たすや否や、後半24分に投入されて欧州リーグにデビュー。
その3分後には初ゴールを決めてしまいました。電撃移籍、初ベンチ、初得点と、瞬く間のプロセスでした。
幸先良いデビュー戦初ゴールにより、ベルギーのサッカーファンに存在感を示す事ができたのです。
  
2018年8月11日第3節ロケレン戦では初スタメン。その後2018年8月18日第4節ワースラント・ベフェレン戦で2ゴール目の得点を記録。
筆者執筆時点で第8節まで終了し、全試合に出場、5試合にスタメン出場、2得点という事で、スタメンに定着し、中心選手として活躍しています。
順調な滑り出しで、初の欧州リーグ選手としての地盤を固めようとしているのです。

ボランチとキャプテンシー

遠藤航選手はディフェンダーとしての印象が強い選手ですが、ミッドフィールダーもこなす事ができるなど、ポリバレントな選手と言えます。
守備的な能力が評価されており、ボランチやデイフェンダーとして、監督や戦術によって複数のポジションをこなしています。
良く言えば対応力があるとは言え、一方では器用貧乏とも言えます。つまり、どのポジションのプロフェッショナルなのか、衆人に認知されているとは言い難い経歴だからです。
  
その点はご本人もよくよく承知しているからか、今回の移籍ではボランチで勝負したいと公言する様になりました。
折しも、長らく日本代表のキャプテンとしてチームを支えて来られた長谷部誠選手が代表引退を決めました。必然的に次期W杯に向かうべくチームのキャプテンを誰にするのか、多くのサッカーファンが注目しています。
  
リオデジャネイロ・オリンピック・サッカー日本代表のキャプテンであった遠藤航選手には、次期日本代表キャプテンを期待する声が少なからずあります。筆者もそう期待している一人です。
  
海外クラブに移籍し、ボランチとして日本代表チームをまとめ上げた長谷部選手の存在とプロセスが、遠藤航選手に重なるのです。
  
W杯でピッチに立てなかった遠藤保仁選手、海外クラブに所属しボランチとして日本代表キャプテンを務め上げた長谷部選手。二人の先輩の過去のプロセスと同様の道のりが、奇しくも遠藤航選手にはぴたりと適合しています。
    

エレベーター・クラブと経営者

遠藤航選手が移籍したシント・トロイデンVVは、ベルギーのサッカー界ではエレベーター・クラブと言われています。1924年創設のクラブですから歴史を有していますが、2部と1部を行ったり来たりしているクラブだからです。
リーグ自体も、プレミア・リーグ、ブンデス・リーガ、セリエAという欧州ビッグ3リーグの格下で、Jリーグと大差があるとも言えないリーグです。
  
ところが、ドイツ、フランス、オランダに囲まれ、イギリスにも近いエリアに所在する国のリーグであり、各国ビッグ・クラブのスカウトが頻繁に訪れるなど、プロ・サッカー選手として飛躍を遂げたい若手にとってはチャンスを広げる可能性があるリーグでもあります。
  
遠藤航選手は25歳。プロ・サッカー選手としては若手ともベテランとも言える微妙な年齢に至っています。欧州初デビューという位置付けからは、若手として次を狙うチャレンジャーに位置付けられるのでしょうか。
  
又、ベルギー・リーグには、各国のサッカー・リーグと大きく違う点が存在しています。選手の国籍により所属を規制する外国人枠が無いリーグなのです。
つまり、世界各国から選手が集まる環境ですから、W杯を見据えていればいるだけ、世界各国の選手とプレイする事により、外国人に対する苦手意識を払拭できる環境と言えます。プレイスタイル、気性、フィジカルコンタクト、戦術感など、Jリーグ環境では得られない多くの経験を体得できる訳です。
  
一方で心配な点もあります。それはシント・トロイデンVVに5人もの日本人選手が所属しているという点です。
サッカーに限らず海外という異文化圏で仕事をするのは大変です。しかし、その困難な壁を乗り越える事で大きく成長することができます。
最大の障害は言葉です。日本語が通用しない場所と人の環境の中で仕事をしなければならないのです。必然的にその国の言語を覚える事になります。緊急性、重大性が高ければ高い程、その国の言葉を覚えるスピードは高まります。
  
ところが、複数の日本人がいる海外の仕事現場では、どうしても日本人どうしで塊りやすくなり、現地の人たちとコミュニケートする時間も、言葉の習熟度も下がってしまいます。
困難とはいえ、折角海外に行くのであれば、日本人が一人もいない環境の職場に身を置くことで、逆に成長スピードが上がると言えるのです。これは海外駐在員だった筆者の経験論です。
  
しかも、現在クラブは日本企業のDMM.comが経営しています。ベルギーのクラブでありながら、経営主体は日本企業なのです。経営者が日本人で、チームに5人もの日本人が所属している海外クラブですから、初の海外クラブ移籍として適切だったのかという点は、疑問符を付けざるを得ません。
  
良し悪しが混在するシント・トロイデンVV。しかし、エレベーター・クラブと揶揄されるチームは、現時点で全16チーム中7位と健闘しています。遠藤航選手もそのクラブに貢献した結果、この順位があるのです。

浦和レッズではサイド・バックが所定ポジションだった遠藤航選手は、新天地では希望してたボランチのポジションを掴み始めています。
先ずはスタメンに定着し、ボランチを確保して、守備力のみならず攻撃の起点としてのスキルを高め、ゆくゆくは日本代表でもボランチでありキャプテンとして定着する選手に育ってくれる事を期待したい選手です。

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