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【連載】ワールドカップ初心者向けマニュアル 第4回 日本代表における現状考察

Dr.Wildcat

2018/05/21 08:30

2018/05/20 22:26

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NEWS

前回の記事で予告させて頂いた通り、連載4回目は我らが日本代表に関する現状とグループリーグに向けた考察を纏めていく。
まず、日本代表の予備知識として前回2014年のブラジル大会からハイライトでご説明する。

2014年のブラジルワールドカップ大会から現在までのダイジェスト

アルベルト・ザッケローニ氏を代表監督として据えた2014年のブラジルワールドカップは、コートジボワール(●1-2)、ギリシャ(△0-0)、コロンビア(●1-4)の3カ国と闘い、1分2敗という結果でグループリーグ敗退となった。

2010年の南アフリカ大会で大活躍し、ベスト16進出の立役者となった本田、長友、岡崎といった選手がキャリアの最盛期を迎え、日本サッカーにおける史上最強の日本代表と称されるチームであったが、ワールドカップで結果を残すことは出来なかった。

大会終了後に2018年ロシアワールドカップを目指す再スタートとして、JFAはメキシコの名将であるハビエル・アギーレ氏を新監督に招聘。過去のワールドカップでも結果を出していた同氏は、これまでに未招集であった若手を積極的に招集し新たな血を代表に入れた。
しかし、2015年のAFCアジアカップでは1993年のJリーグ発足後最低タイであるベスト8止まり。同時期に、過去の経歴で八百長疑惑が浮上したこともあり同年2月で解任されることになる。

予定外の出来事で再スタートを余儀無くされたJFAは、2015年3月にブラジルワールドカップでアルジェリアを率いベスト16に導いたヴァイッド・ハリルホジッチ氏を後任監督として招聘した。
初陣となった同年3月のチュニジア、ウズベキスタンの2連戦で勝利し、意気揚々とワールドカップアジア2次予選に臨んだがここでサポーターにとっては予定外のことが起こる。

初戦の相手は、格下のシンガポールであったのだがなんとスコアレスドロー。それを引きずってか、同年の東アジアカップ(現:E-1)でも北朝鮮に敗北し韓国と中国にはドローといまいち波に乗れない時期が続く。

その後はマッチメイクの都合上格下か同格のチームとの試合が続く中で、2016年9月にワールドカップアジア地区最終予選に突入。なんとここでも初戦のUAE戦に敗北し、近年の日本代表ではあまり見られなかった「最終予選敗退」の文字が現実味を帯び始める事態となった。

その後は最終予選でなんとか結果を重ね、2017年8月に宿敵・オーストラリアにホーム開催で勝利。6大会連続6回目のワールドカップ出場を果たし「予選突破」の最低ノルマを達成する。

しかし、その後は同年12月のE-1での韓国戦における大差での敗戦や、本大会を想定した強豪国相手に苦労する状況が続き、2018年4月にJFAはワールドカップ本大会前2ヶ月の段階でハリルホジッチ氏を解任。
この件は未だにマスコミを通じて多くの報道がなされているが、日本にとってはワールドカップ出場決定後に監督が解任となる異例の事態となった。その後、JFAは協会の技術委員長(※代表監督を評価査定するポジション)であった西野朗氏を後任として現在に至っている状況である。

本大会メンバー入り争いの最終局面を迎えるガーナ戦

5月18日(金)に日本サッカー協会(以下、JFA)は、30日(水)に開催されるキリンチャレンジカップ2018 ガーナ戦のメンバーを発表した。なお、一部メディアの報道の仕方で少し初心者向けに気になる点として、このメンバーがワールドカップ本大会に出場するメンバーのように見える印象もあるため、あくまで現状では「候補」であるという点は強調しておきたい。ワールドカップ本大会メンバーの候補として選出されたメンバーは以下の通りである。

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【5/30(水)キリンチャレンジカップ2018 ガーナ戦(開催地:日産スタジアム)メンバー】
 
■GK(ゴールキーパー)
 川島 永嗣(FCメス/フランス)☆
 東口 順昭(ガンバ大阪)
 中村 航輔(柏レイソル)

■DF(ディフェンダー)
 長友 佑都(ガラタサライSK/トルコ)☆
 槙野 智章(浦和レッズ)
 吉田 麻也(サウサンプトンFC/イングランド)☆
 酒井 宏樹(オリンピック・マルセイユ/フランス)☆
 酒井 高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)☆
 昌子 源(鹿島アントラーズ)
 遠藤 航(浦和レッズ)
 植田 直通(鹿島アントラーズ)

■MF(ミッドフィルダー)
 長谷部 誠(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)☆
 青山 敏弘(サンフレッチェ広島)☆
 本田 圭佑(CFパチューカ/メキシコ)☆
 乾 貴士(SDエイバル/スペイン)
 香川 真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)☆
 山口 蛍(セレッソ大阪)☆
 原口 元気(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
 宇佐美 貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
 柴崎 岳(ヘタフェCF/スペイン)
 大島 僚太(川崎フロンターレ)
 三竿 健斗(鹿島アントラーズ)
 井手口 陽介(クルトゥラル・レオネサ/スペイン)

■FW(フォワード)
 岡崎 慎司(レスター・シティ/イングランド)☆
 大迫 勇也(ヴェルダー・ブレーメン/ドイツ)☆
 武藤 嘉紀(1.FSVマインツ05/ドイツ)
 浅野 拓磨(Vfbシュトゥットガルト/ドイツ)

※選手の所属クラブは5月18日(金)現在
※☆マークはワールドカップ出場歴ありの選手
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総勢27名(Jリーグ所属:10名、海外クラブ所属:17名)のメンバーが選出された。
メンバーの印象として特に大きな驚きはなかったが、一部選手の落選で疑問に思うところはあった。
それについては後述するが、就任間もない西野監督は大きな博打を打つことは無かったと言えよう。
あと、筆者の意見として一部マスコミはサプライズ選出が無かったことをさも残念なように取り上げるが、サッカーはどんな選手がいようと集団でやるものであり極めて無意味な議論のような気はしている。

ガーナ戦候補メンバーを基にした最終メンバー予想

仮想セネガルとしてのガーナ戦ではあるが、選手にとっては本大会メンバー最終試験となる。
西野監督はメンバー選考のポイントとして「ポリバレント」という言葉を強調した。
これは今でこそさまざまな解釈はあるが、大筋は「異なる複数のポジション、役割をこなせる選手」という意味である。

わかりやすく本田を例にすると、彼はパスを出して周囲を活かす司令塔ポジションや最前線でパスを受けてシュートを打つセンターフォワードの役割もできる。
前線を3人にした際のフォーメーションでは右側に位置しながら、中央に切り込んでいくウインガーのような役割もできるなど攻撃面では非常にポリバレントな選手である。

西野監督がどのような基本フォーメーションを敷くのかは正直まだ見えてこない部分もあるが、現状の選出メンバーにはワールドカップという舞台でシステムにこだわらず、戦術面で柔軟な変化を受け入れることを求めているのは見て取れた。
ちなみに西野監督はゴールキーパー以外のポジション表記はしない予定であったようだが、考察の便宜上ここからは各ポジションに分けて説明する。

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■GK(ゴールキーパー)
 川島 永嗣(FCメス/フランス)
 東口 順昭(ガンバ大阪)
 中村 航輔(柏レイソル)

【予想】
 本大会登録が3人で固定されることを考えると、怪我がない限りこのメンバーは動かないといえる。レギュラーは現状の実績、コンディションを考えて川島であろう。東口は4月の試合で顔面の負傷という致命傷を負ったが驚異的な回復力を見せた。中村は若手ゴールキーパーの急先鋒として今後の代表でも大きな期待がかかるのでベストな選出である。もしものバックアッパーとしては、西川周作(浦和レッズ)、林卓人(サンフレッチェ広島)が予想される。
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■DF(ディフェンダー)
 長友 佑都(ガラタサライSK/トルコ)
 槙野 智章(浦和レッズ)
 吉田 麻也(サウサンプトンFC/イングランド)
 酒井 宏樹(オリンピック・マルセイユ/フランス)
 酒井 高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)
 昌子 源(鹿島アントラーズ)
 遠藤 航(浦和レッズ)
 植田 直通(鹿島アントラーズ)

【予想】
 一昔前の日本代表と比較するとディフェンダーの層は厚くなった。イタリアの名門インテル・ミラノで長期にわたりレギュラーを張った長友は言うまでもなく、プレミアリーグで活躍する吉田は日本史上最高のセンターバックであるといっても過言ではない。サイドバック専任型の酒井宏樹と酒井高徳、センターバックサイドバック両方対応可能な、槙野、昌子、遠藤、植田と非常にポリバレントな選手が揃っている。この8名は試合感の欠落もなく、実力も担保されているので怪我以外では落選は無いと予想する。
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■MF(ミッドフィルダー)
 長谷部 誠(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)
 青山 敏弘(サンフレッチェ広島)
 本田 圭佑(CFパチューカ/メキシコ)
 乾 貴士(SDエイバル/スペイン)
 香川 真司(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)
 山口 蛍(セレッソ大阪)
 原口 元気(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
 宇佐美 貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
 柴崎 岳(ヘタフェCF/スペイン)
 大島 僚太(川崎フロンターレ)
 三竿 健斗(鹿島アントラーズ)
 井手口 陽介(クルトゥラル・レオネサ/スペイン)

【予想】
 日本代表におけるポジションとして相変わらずの激戦区である。主将である長谷部は不動であるとして、各選手をクラブにおけるポジションに沿って以下のように分けることができる。

 (攻撃的MF)
  本田、乾、香川、原口、宇佐美、柴崎  

 (守備的MF)
  長谷部、青山、山口、大島、三竿、井手口

 ほぼ両方のともちょうど同じくらいになった。柴崎はクラブで守備的MFだが、代表では司令塔的ポジションに入ることが多いので攻撃的MFに振分けを行った。現状のコンディションを考えると攻撃的MFの中からは2月の負傷からようやく復帰した香川、守備的MFでは海外移籍後の出場機会に恵まれていない井手口は落線の可能性が高いのではないだろうか。残るメンバーは、みな平等な位置にありガーナ戦の活躍次第での選考となるだろう。
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■FW(フォワード)
 岡崎 慎司(レスター・シティ/イングランド)
 大迫 勇也(ヴェルダー・ブレーメン/ドイツ)
 武藤 嘉紀(1.FSVマインツ05/ドイツ)
 浅野 拓磨(Vfbシュトゥットガルト/ドイツ)

【予想】
 ドイツ・ブンデスリーガで1年闘い、代表でも不動のレギュラーとなった大迫は確実。武藤も怪我に悩まされながら徐々にコンディションを上げリーグ8得点でチーム得点王となった。岡崎はここ最近コンディションを落としているが、ワールドカップにおける経験が群を抜いておりフォワード陣をまとめるベテラン枠のスーパーサブとして残しておく価値はある。浅野については今年に入ってからの試合出場が1試合も無く、試合勘が特にモノを言うフォワードとしては落選の可能性はかなり高い。
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■未招集の本大会メンバー候補
 久保 裕也(KAAヘント/ベルギー)
 森岡 亮太(RSCアンデルレヒト/ベルギー)

【予想】
 ハリルホジッチ体制でレギュラーの座を掴み取り、リーグでも10ゴール2アシストを記録している久保については、ベルギーリーグがまだ終了しておらずクラブへの配慮もあり未招集となったことを西野監督が明言した。同じくリーグで13ゴール14アシストを記録している森岡も久保と同じ状況に置かれており、この2人においては追加招集となる可能性が十二分に高い。ベルギーでこれだけ結果を残した選手がワールドカップに出れなくて一体誰が出るのかという気持ちもあるので、ぜひ選出してほしいと感じている。
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実際のところ、本大会はどうなるのか?

現状、西野監督のサッカーは30日のガーナ戦で見えてくるだろうが、そこで支配率を高めるポゼッションサッカーを取るのか、2010年で苦肉の策としながらも成功した堅守速攻のサッカーを取るのか、はたまた状況に応じた可変的なフォーメーションを取るのか、本大会前の時間が無い中で少なくとも中途半端にだけは終わらせてはいけない。

なお前段でも少し触れた選手選考について、これまでも選考内容が100%支持された試しなど無いが、結果を残した選手が落選した一方、長期で試合に出ていない選手が選出された点は疑問に感じた。
選手発表の記者会見でも勢いのある中島翔哉(ポルティモネンセSC/ポルトガル)の落選について質問が飛んだが、試合でこの上ない結果を出したのに招集されなかったらそれはもう不本意であることは間違いない。
その点、ハリルホジッチ前監督は自身の選考した選手で結果が伴わない時期がありながらも、試合に出続けている選手を選ぶことについては一貫していた。

ワールドカップというのはどれだけ下馬評が悪くとも勝ち上がったケースはいくらでもあるし、無敵と呼ばれた強豪国が音を立てて崩れていく場面は何度も見てきた。
今大会の日本代表メンバーは決してレベルは低くなく、本当にベストを尽くせばグループリーグ突破は可能であると考えている。むしろ、サポーターが思わなくて誰が選手を信じるのか。

感情的になってしまったが、最後に前回保留したグループHの予想を立てて今回を終える。これは決して不可能な未来ではない。

【順位予想】
 1位 ポーランド 2位 日本 3位 コロンビア 4位 セネガル

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