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【闘犬から闘将へ。ガットゥーゾ監督率いるミランに、また陽は昇るのか—-。】

水上いろは

2018/03/18 11:30

2018/03/17 23:55

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NEWS

各順位争いも熾烈を極め、来シーズンどのコンペティションに参加するか各クラブの未来が決まるリーグ終盤戦。今、もっとも面白いのがセリエAだろう。
 
とりわけ、ここ数年チャンピオンズリーグから遠ざかっている名門ACミラン。今季も前半戦を10位という不甲斐ないかたちで折り返し、来年もまた“いつも通り”チャンピオンズリーグの舞台はお預けをくらう様相であった。
 
しかし、クラブのレジェンドであるジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾが監督に就任した後半戦、名門は夜明けの兆しを見せ始めた。

当初寄せられた、“OB監督”への疑念

 2017年11月、フロントはヴィンチェンツォ・モンテッラ監督を解任し、ガットゥーゾを新たな監督に据えた。かつて、クレランス・セードルフ、フィリッポ・インザーギなど現役時代にミランで活躍したレジェンドたちに大きな期待を乗せて、クラブの指揮を任せては解任を繰り返してきたフロントのこの選択には当初、決して少ないとは言えない疑いの目が向けられていた。

 加えて付け加えるならば前述の二名は初のトップチーム指揮ということで『成功するかもしれない』というポジティブな未知数さがあったが、ガットゥーゾに関しては過去に指揮した4クラブ全てで成績不振もしくはフロントとの衝突という形で途中解任されてきた経歴を持っていたから尚更である。

闘う意志を植え付ける

 期待を裏切られ続けたミランサポーターは、この前評判に対し今度は“嬉しい裏切り”を受ける形となった。ガットゥーゾ監督が就任して以降、公式戦14試合連続無敗を達成し、前半戦終了時にはチャンピオンズリーグ出場圏まで15ポイントと開いていた差も11試合を残して6ポイント差まで迫り背中を捉えた恰好だ。

 ここまで復調してきた要因はなんであろうか。いくつかの要因が挙げられるが大きく変わった部分は“運動量の飛躍的向上”と“守備の組織化による安定性”だろう。
 これまで前線の選手は守備に参加はしているものの孤立した守備であった。前線からプレスをかけるものの中盤でボールを奪いきれないことが多く、結果ゲームを支配されて失点を喫するというのがお決まりであった。
 
 しかしこの後半戦、チーム全体として1選手あたりの平均走行距離は1.2kmも増加し組織立った守備が見られる。これは現役時代に豊富な運動量と闘志溢れるプレーでバイタルエリアに君臨し、闘犬と恐れられたガットゥーゾ監督の“意志”がチームに宿った賜物であろう。

負けないチームから勝ち切るチームへ

 その闘志は“結果”という形でも実を結んでいる。どことなく失われていた勝利を諦めない姿勢、勝者のメンタリティーが再び今のミランには感じられる。

 ガットゥーゾ監督がまずチームに植え付けたのは“負けないフットボール”である。前半戦のミランは先制を許すと顕著に乱れ始め、試合をひっくり返す事ができなかった。そして、たとえ先制をしたとしても最後まで集中を保つ事ができず、逆転を許してしまう事が多々あった。

 就任当初引き分けでゲームを終える事が多かったが、新しいチームとしての土台を築き上げるには“負けない”という結果で試合を終える事を常習化させる必要性が、一つの大きなミッションであったが、これを見事短期間で成し遂げたと言っていいのではないだろうか。

 そして先日行われたセリエA第28節ジェノア戦。0-0で迎えた後半アディショナルタイム94分、このまま引き分けに終わると思われた一戦にてFWアンドレ・シウヴァの執念のゴールで勝ち点3を手に入れた。この試合でガットゥーゾミランは“負けないフットボール”から“勝ち切るフットボール”へと更に一つの進歩した事を披露し、夜明けの兆しを感じさせた。

再び、欧州最高峰の舞台へ

 とはいえ、ガットゥーゾ監督が現役時代だった頃のような欧州の舞台を席巻したミランの姿からはまだほど遠く課題も多い。しかしながらこの後半戦、ここ数年の失望にまみれたミランの姿とは別物のように見える事も確かだ。
 リーグ戦も残り11試合。最大の目標は4位以内でフィニッシュし、チャンピオンズリーグの舞台で輝かしい陽の光をまた浴びる事だろう。
 闘将へと進化した闘犬が振るうタスクを見守り、一人のフットボールファンとして共に夜明けを眺めてみたいものだと、私は思う。

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