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日本のクラブ史上初・海外でのクラブ・ワールド・カップに臨んだ浦和レッズ戦記

扇ガ谷 道房

2017/12/22 17:00

2017/12/24 11:37

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NEWS

10年振り2度目のアジア王者として、今年のクラブ世界No.1を決するクラブ・ワールド・カップ(以降CWCと記載)に臨んだ浦和レッズ。
2戦を戦い、1勝1敗で世界5位という成績を残して。今年全ての戦いの幕を閉じました。
初戦となった2017年12月9日、開催国枠での出場となったアルジャジーラとのゲームの敗戦は、多くのサポーターの皆さんが悲しみ、ゲーム後は否定的な論調の記事やSNS投稿が相次ぎました。
一方、5位決定戦となった2017年12月12日、アフリカ王者のウィダート・カサブランカとのゲームは2対3で勝利する事ができました。
初戦に勝てば、ヨーロッパ・チャンピオンのレアル・マドリードとのゲームが待ち受けていた為に、多くのサポーターの皆さんがそのゲームの実現を心待ちにしていた事から、初戦の敗退によって今年のCWCの興味が薄れてしまった感がありました。
然しながら、過酷な一年間のACLを戦い、日本のクラブとして初めて日本開催ではないCWCに臨み、世界5位という成績を残せた事は、批判はあるにせよ、称えられる事だと筆者は考えています。
UAEのアブダビに飛んで、CWCに臨んだ浦和レッズに敬意を表し、2つのゲームの戦記をお届け致します。

そもそもCWCとはどんな大会なのか

CWCは、各大陸王者が集結して、世界No.1クラブを決めるFIFAの世界選手権大会です。各大陸の分類は、ヨーロッパ・アフリカ・北中米カリブ海・南米・オセアニア・アジアの6つ。
2007年からは、大会開催国の前年度優勝クラブが、開催国枠として参加する制度になりました。従って、6大陸王者と開催国枠出場クラブの合計7チームがトーナメントで世界No.1を目指す大会として運営されています。
今年の浦和レッズは、アジア大陸王者としての参加で、昨年出場の鹿島アントラーズは、アジア王者ではなく、開催国枠での出場でした。
CWCの前進は、ヨーロッパ・チャンピオンと南米チャンピオンが事実上の世界No.1クラブを決めていたインターコンチネンタル・カップです。
現在とは違って、ヨーロッパと南米の王者だけでの戦いながら、世界チャンピオンと称していました。それだけ、世界のサッカー・レベルがこの二大陸に集中していたからなのです。
1981年から、ヨーロッパと南米の中立地という事で日本が開催地に選ばれて、毎年日本で開催される様になりました。大会のメイン・スポンサーは日本のトヨタ自動車であったことから、このころから通称トヨタ・カップと呼ばれていました。
2005年に、トヨタ・カップを発展的に解消し、ヨーロッパと南米だけではなく、6大陸王者による完全なる世界大会に発展させて、現在のCWCの原型が開始されました。
現在も”TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップ”と呼ばれているのは、トヨタ・カップの継承大会である証明でもあります。
2007年から、現行方式となる開催国枠制度が始まり、2009年からは、開催地を中東と日本で2年おきとする事になり、現在に至っています。


by wikioedia

開催国枠出場クラブとの戦いという舞台

さて、今年のCWCにおける浦和レッズの戦いに戻ります。
浦和レッズは一回戦をシードされて、オセアニア王者のオークランド・シティを破った開催国枠出場のアルジャジーラと、準々決勝を初戦として闘いました。先ずこの相手の設定に、敗戦に繋がる伏線があったと筆者は考えています。
浦和レッズのゲームの入り方は落ち着いていて、アウェイの世界大会の初戦にありがちな緊張感は感じない入り方でした。多くの時間ボールをポゼッションし、ホームである相手にゲームをコントロールさせず、優位にゲームを進めていました。
しかし後半7分、全選手が攻撃的なポジショニングをしていた一瞬の隙に、相手の縦パスを通されて、カウンターで先制点を許してしまったのです。悪いときの浦和レッズの失点パターンとも言えます。
日本人ACL最多得点者である興梠慎三選手や、今期ACL得点ランク2位のラファエル・シルバ選手が決定機に決められなかった事から、優位に立っていたゲームを0対1というスコアで落とす敗戦となってしまったのでした。
巷では、「どうしてあの選手を使わなかったのか」、「大陸王者が開催国枠出場チームに負けるとは恥ずかしい」、「戦術の問題だ」など、当然ながら様々な意見が飛び交っているのは確かです。
敗戦には様々な要因が複合的に絡んでいるものです。確定的な断定もなじみません。このゲームはまさしくそういうゲームでした。筆者は、心身の問題が最大の敗戦原因だと考えています。
浦和レッズは、2006年のJリーグ初制覇、2007年のアジア制覇以来、覇権から遠ざかっています。昨年のJリーグでは、年間勝ち点一位という、本来ならば優勝の立場であったにもかかわらず、2シーズン制によるチャンピオン・シップに敗れて焦燥感を味わっています。
今年、Jリーグは不本意な成績ながら、平行していたACLを制し、10年振りのアジア制覇の達成に沸きました。ここ数年のジレンマから開放された選手スタッフにも同様に、アジア制覇の開放感と達成感がみなぎったでしょう。
その直後のCWCへの入り方が、心身共に万全ではなかったと思えるのです。
達成感の後のモチベーションの維持の難しさ。日本開催ではない中東の地での初戦への対応。次戦に待ち受けるレアル・マドリードの影。大陸王者では無い開催国枠出場クラブへの優越性。
全てに亘って、CWC初戦のモチベーション醸成にはとても難敵状況ではなかったか。
ACL決勝で闘ったアルヒラルは、従来パターンの中東チームではなく、ディアス監督が標榜するポゼッション・パス・サッカー・スタイルの戦術チームでした。いわばガチンコ勝負のできる相手で、浦和レッズとしては組み易い相手であったとも言えます。
一方のアルジャジーラは、いわゆる従来パターンの中東チームで、格上クラブには引いて入り、カウンターを奪取して逃げ切るスタイルのチームでした。
CWC初戦のモチベーションと、直近の中東チームとは違うパターンのアルジャジーらを相手にして、ピッチ上でうまくゴールを奪取できないジレンマが観て取れたのは筆者だけでしょうか。
選手の起用方法については、外野は如何様に言うことができますが、現場を預かり、間近で選手のコンディションをつぶさに観ている監督コーチに勝る外野はいません。
カウンター1本以外は、総じて相手に何もさせてはいないゲームだったのに、浦和レッズは敗戦してしまったのです。たらればはいくらでも言うことができます。結果は、相手が上だったという事に尽きるのです。
しかし、クリスチアーノ・ロナウドと対する槙野智章選手を観たかったので、この敗戦は本当に残念でした。


by arabic.sport360.com

大陸王者どうしの初戦という舞台

本来であれば準決勝でレアル・マドリードとの闘いが待ち受けていた筈の浦和レッズは、図らずも5位決定戦が2戦目になりました。相手は、本田圭祐選手が所属するパチューカとの初戦に敗れたアフリカ大陸王者のウィダード・カサブランカでした。
パチューカとのゲームでは、両チームの攻防がすさまじく、ボールは両陣営を何度も往復を繰り返すという、タフなゲームを展開していましたから、引いて入って来たアルジャジーラと違い、手ごわい難敵であると筆者は想像していました。
あにはからんや、パチューカ戦からスタメンを8人も交代させたウィダード・カサブランカは、意外な事に、パチューカ戦で見せた切り替えの激しい展開力が陰を潜め、浦和レッズのペースでゲームは進んで行きました。
この日センター・バックに入った浦和レッズのDFマウリシオ選手は、攻守に亘る大活躍で、前半18分には約30mの豪快なミドルシュートを決め、後半15分にもFKからのこぼれ球を押し込みます。
ゲームは3対2で浦和レッズが勝利します。スコアだけ見ると、拮抗したゲーム展開の様に感じますが、内実は違い、相手の得点は、誰も触れない事故の様なFKが決まってしまった1点目と、ビデオ・アシスタント・レフェリーが導入されていなければ取られなかったレベルのPKによる失点の2点のみで、ゲームは圧倒的に浦和レッズが支配していました。
勝因も敗因同様、心身の問題だと筆者は考えます。
初戦の敗戦を引きずったまま臨むか否かが最大のポイントでしたが、浦和レッズはスタメン2人を代えたものの、初戦に臨んだメンバーを含む全員が、このゲームに賭けて臨んでいることが、ピッチ上に表現されていました。
フィジカル能力の勝るアフリカ大陸王者が相手という事も、格下相手と臨んだ初戦のモチベーションとは違い、慎重さと攻撃的な意図の双方が高まったと言えます。
この勝利によって、浦和レッズは2017年世界5位という成績で大会を終えました。たかが世界5位と言うなかれ。されど5位と言うべきなのです。アジアを制して、この場にいる事だけでさえ難事なのです。
それにしても、初戦の相手が開催国枠出場クラブというのが、本当に悔やまれます。浦和レッズの甘さと言えば甘さなのです。格下チームに対する安易な優位性認識が、間違いなく根底にあった初戦だったのです。
たらればは禁物とは言え、初戦から大陸王者だったらと思うのも、筆者だけではない筈です。
最後に特筆したい事、現地に赴き応援していた浦和レッズ・サポーターの皆さん、見事な応援でした!300名そこそこと報道されていましたが、日本でテレビ観戦している我々にも応援の声がしっかり届いていました。
完全アウェイの平日の中東で、本当にご苦労様でした。埼玉スタジアム2002の様に、皆さんの声はスタジアムに響いていました。

  
2017年は浦和レッズにとって激動のシーズンでした。
2シーズン制の不運から、年間勝ち点1位ながらJリーグを制する事ができなかった前年の汚名を晴らすべく臨んだ2017シーズン。
当初は圧倒的攻撃力で推移しますが、5月に入ると失速し、7月末には前任監督のミハエル・ペトロビッチ氏が更迭されて、堀孝史監督が二度目の登板。
天皇杯、ルバンスカップに敗退するも、ACLはホーム・ゲーム全勝で10年振り二度目のアジア王者に!
ここ数年、JリーグとACLを平行するという過酷なシーズンを過ごしましたが、アジア王者に返り咲いて一区切り。
図らずも来シーズンはACLに出場できない為、久々にJリーグに専念できる環境に戻りました。
今年のACLとCWCの戦いは、間違いなく選手スタッフ全員に、大きな経験値を残しました。その貴重な経験を来年のJリーグに活かして、強い浦和レッズを魅せて欲しいと願ってやみません。
浦和レッズ世界5位、おめでとうございました!

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