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ベンチ外の大学時代から、世界有数のサイドバックに。努力と献身の天才、長友佑都

水上いろは

2017/11/15 12:04

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夏のオフシーズン、プレシーズンマッチが行われ移籍市場が賑わう時期、イタリアのスポーツ紙面で毎年『戦力外』『移籍濃厚』とこぞって報じられるひとりの選手がいる。
 しかし、毎年のように囃し立てられているにも関わらず結局は残留し、開幕前は戦力外と報じられていたのが記憶の片隅からすら消えるように、気づくとレギュラーとしてジュゼッペメッツァのサイドを縦横無尽に駆け巡っているのだ。

 クラブ在籍8シーズン目、在籍選手では最古参のひとり。世界的名門インテルの背番号『55』長友佑都である。

ネラッズーリの左サイドにこの男あり

 選手への評価が厳しいイタリアで毎年のように長友がチームを離れると移籍が報じられるのはもはや夏の風物詩だ。今年の夏も例年のごとく騒がれた。
 サイドバックの補強が急務と言われた中、インテルはニースから長友と同じく左サイドを主戦場とするダウベルトを約25億円の移籍金で獲得し、コンドグビアとトレードという形で両サイドバックをこなせるカンセロをバレンシアから獲得した。
 シーズン開幕前の予想ではダウベウトもしくはカンセロのいずれかがレギュラーを務めるとメディアは報じたが、ルチアーノ・スパレッティ監督がファーストチョイスに選んだのは長友だった。

最後は信頼を勝ち取る不死鳥のサイドバック

 長友がチェゼーナからインテルに移籍し、今日に至るまでの約8年間の間に暫定監督も含めると、レオナルド、ベニテス、ガスペリ−ニ、ラニエリ、ストラマッチョーニ、マッツァーリ、マンチーニ、デ・ブール、ピオリ、ヴェッキ、スパレッティと実に11人の監督がインテルで指揮を執っている。そして14人ものサイドバックが獲得されてきた。
 いずれの監督も背番号55を背負う小柄なアジア人に当初は信頼をおかず、監督が替わる度、そして新戦力のサイドバックが獲得される度、ベンチが長友の定位置となった。
 しかし、そんな状況でも屈しないハートと、努力を惜しまない勤勉さ、そして与えられた少ない出場機会が訪れた際には、たとえ数分の短い時間だったとしても体力がゼロになるまで走り続ける献身的なプレーに、歴代監督たちは考えを改めざるをえなくなってきたのだ。
 メディアや地元サポーターからの酷評は少なくないが、チームメイトや指導してきた監督は誰一人長友を非難するものはいない。むしろ口を揃えて『献身的で、謙虚で、最高のプレイヤーだ』との賛辞を惜しまない。仲間から信頼されること、信頼され続けることがどれほど偉大で高貴なものか。その価値の高さ、人間性という大きな財産は高額な移籍金で他クラブから買えるものでは決してない。それはチーム最古参の一人として在籍しているその年月が物語っているだろう。

努力を続け、信じた者にだけ開かれる道

 『努力を続け、いつ出番が来ても最高のパフォーマンスを披露できるように準備するだけです。』

 背番号55が監督交代時など“いつも通り”ベンチを暖める日々が続いている時期に発してきた言葉である。一人の野心溢れる選手として、この言葉を捻り出すのにどれほど歯を食いしばった上での言葉なのかは察するに易い。
 本当は今すぐにでもピッチに立ちたい、俺を使え、と言いたい筈だろう。だがこの男はそういったエゴイズムを一切封じ、本当に言葉通り地道な努力を重ねてきた。いつ来るか確証もない機会を望みながらピッチを躍動する他の選手を眺めて過ごす日々が続けばモチベーションはいつ折れてもおかしくない。いや、むしろ折れたほうが“正常”とさえ言える。
 だが、折れずに自分の置かれた状況に向き合い、微かな機会を確実にモノにしてきた。11人の歴代監督たちは皆結局こう言ってしまうのだ。

『ユウトほどインテルにふさわしいサイドバックは見当たらない』と。

最古参からレジェンドへ

 大学時代ベンチどころかメンバー外でスタンドで太鼓を叩いていた青年が今は世界的クラブのレギュラーだ。努力は報われるという言葉を見事に体現している。
 そんな“努力の天才”は今シーズン12試合中9試合をスタメンで戦っている。チームも現時点で3位と好調を維持し、今シーズンのセリエAは例年以上に拮抗したレースとなっている。
 長友は以前二つの夢を語っていた。ひとつは“インテルでスクデットを獲得する”こと。そして、もうひとつは“インテルで現役生活を終えること”。
 インテルと長友の現行契約は2019年6月までとなっている。この契約満了時には33歳の年になっている。引退を意識することもおかしくない。

 契約満了まで残留を果たした2019年の夏のイタリアでは例年のごとく『ナガトモ移籍濃厚』や『ナガトモ引退決意』の見出しが賑わすだろう。
 だが、私は予言しておこう。その夏も“例年通り”この文字が紙面に躍る。

『ナガトモ、残留』と。

 あくまで希望だが少なくともあと一回契約延長を果たして、その雄姿を存分に披露し切ってから引退の日を迎えて欲しい。プレースタイル同様に、ゼロになるまでジュゼッペ・メッツァを駆け巡ってもらいたい。

 まずは今シーズン、どこまでスクデットに近づいてくれるのかを期待してみよう。

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