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偉大だった兄を監督として越える。ラツィオ率いる若き指揮官シモーネ・インザーギ

水上いろは

2017/11/08 08:29

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偉大なる兄フィリッポの陰に隠れた現役時代

 現役時代、偉大な兄の影に埋もれ国外までその名を轟かすような事はなかった。あまりにもその偉大な兄の存在が大きすぎて弟がいる事さえ知らない者も多くないのではないだろうか。
 その兄弟は今、現役生活から退きそれぞれ監督として第二のキャリアを歩んでいる。

 現役時代同様、兄の方が優れたキャリアを重ねる事を誰もが予想したが、虎視眈々と陽のあたる場所を目指し続けた弟はいま監督として、偉大な兄を一歩、いや数十歩リードしていると私は言いたい。

 元イタリア代表・屈指のストライカー、フィリッポ・インザーギの実弟、“シモーネ・インザーギ”こそその男である。

11年間現役生活を過ごしたラツィオの指揮官へ

 1994年、ユース時代から在籍していたピアチェンツァでプロデビューを果たしたシモーネはその活躍を買われ、1999年ラツィオへと移籍する。途中レンタルでの移籍はあったものの、2010年に現役を引退するまで11年在籍した事はラツィオからの信頼が高かった証しだろう。

 現役を退いた翌シーズンからはラツィオの下部組織を率いて指導者としてのキャリアをスタートさせた。U-20を率いた際には二度のコッパ・イタリアを制した事は名将への階段を一歩ずつ登りゆく序章であったと後に語られるエピソードになるのではないかと観測したい。

 2016年4月、知将ステファノ・ピオリが成績不振でラツィオを追われた際、暫定監督として下部組織率いるシモーネを昇格させるという決断をラツィオは下した。暫定監督としてチームの再興を任されたシモーネはシーズン終了まで安定した戦いぶりをみせたが、ラツィオはシモーネと契約を結ばず既に名のあるマルセロ・ピエルサと契約を結ぶ。

 ピッチ上で数々のドラマが繰り広げられるフットボールはとても面白いが、ピッチ外でもフットボールは実に面白い。
 契約締結からわずか2日後、クラブ上層部との意見の相違からピエルサは突如辞任を切り出したのだ。突然の出来事にラツィオは戸惑いを隠せない中、昨シーズン暫定監督だったシモーネを正式監督として迎える事となった。

絶対王者に2度土を付けたチーム力

 正式に監督の座に就任した2016—17シーズン、低迷に喘ぐチームを見事再興させ5位でシーズンを終え、ヨーロッパリーグの舞台へと導いた。
 今まで中位を彷徨う事の多かったラツィオだが、シモーネ体制2年目である今シーズンはさらに成熟した戦いぶりを披露し、スクデットを争う台風の目になる戦いぶりを見せている。

 本コラムを執筆時点で11試合を消化し9勝1分1敗の勝ち点28で4位につけている。1試合消化試合が多い首位ナポリに4ポイント差で迫っているのは十分スクデット争いに加わっていると言える。

 極めつけは絶対王者ユベントスに今季すでに2度も土をつけているのだ。この6シーズン、序盤は順調に勝ち点を重ねていたチームも絶対王者ユベントスとの直接対決で挫かれカンピオナートから撤退を余儀なくされてきた。

 しかし若き青年指揮官シモーネ率いるラツィオは、この絶対王者との対決に際し、勝利をつかみ取る為の研究と策を講じ、泥を見舞った。

 1度目は2017年8月13日のスーペルコッパ。中盤を支配する事に重きを置いたラツィオはその策どおり中盤を支配しエースであるチーロ・インモービレが2点を先制する。そのまま試合は進み試合終了のホイッスルを待つばかりであったが絶対王者が意地を見せる。85分、同じくチームを代表するエース、パウロ・ディバラに直接FKを決められると、90分には痛恨のPKを献上してしまい2−2の同点とされてしまう。
 この同点劇でも一つのドラマティックな演出に申し分ないのだが、ラツィオがもう一花添えてドラマを完結させる。後半ロスタイム、時計の表示は94分。青年指揮官シモーネが途中出場で送り出したアレッサンドロ・ムルジャの劇的なゴールでスーペルコッパのタイトル」を手中に収めた。

偉大なる兄より先にスクデットを

 トップチーム指揮官として初のタイトルを収めたシモーネの次に目指す先はスクデットであろう。セリエA第8節にユベントスの本拠地に乗り込んだラツィオはまたしてもチーロ・インモービレの2発で2−1で勝利を収めている。今季のユベントスも10勝1分1敗とさすがの戦いぶりだが、この唯一の敗北を喫した相手こそがシモーネ率いるラツィオである。

 ヨーロッパリーグでも順調に勝ち星を重ね、2つのコンペティションで戦う難しさにも立ち向かいつつも、結果を着々と積み上げている40歳の青年指揮官。

『インザーギと聞けば、みな頭に思い浮かぶのはフィリッポだった』
そのイメージを打ち砕く日はそう遠くないかもしれない。

少なくとも、いま私が“インザーギ監督”と聞いて頭に浮かぶのは、シモーネ・インザーギなのだから。

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