Shooty

10年振りのACL決勝進出決定! 浦和レッズvs上海上港戦観戦記

扇ガ谷 道房

2017/10/21 01:25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

NEWS

アジアのサッカークラブの頂点を目指すアジアチャンピオンズリーグ(ACL)。
日本勢で唯一ベスト4に勝ち残っていた浦和レッズがやってくれました!
準決勝2nd Leg上海上港戦に1対0で完封勝ちを収め、2試合合計2対1として、決勝進出を果たしました!
2007年に日本のクラブとして初めてアジアを制覇してからちょうど10年。
さながらあの時の勝ちあがり方を踏襲するかの様に、逆境を克服して、最終決戦の場までたどり着きました。
2017年10月18日の準決勝2nd Leg上海上港戦に参戦して来た筆者の観戦記をお届け致します。

©︎Shooty

単なる戦力だけで無いクラブ総合力の闘い

平日水曜日の夜。ACLのゲームは、各国リーグの狭間にゲームが設定される為、各国関係者は観客動員に悩みを抱えています。しかし、ここ埼玉スタジアム2002は別格の観客動員を誇ります。
  
そうは言っても、今シーズンのJリーグにおける浦和レッズは、自力優勝の可能性が消滅しており、直近のヴィッセル神戸戦もドロー。しかも連日秋雨が続いていた天候で、気温も低く、流石の埼玉スタジアムであっても、観客動員はままならないのではないかという懸念があった中、メインスタンド二階席以外はほぼ席が埋め尽くされたのは流石というべきか。44357人という観客動員を記録しました。
  
レッズ創設から25周年。ACL初制覇からちょうど10年目。節目の年を戦っている浦和レッズを象徴するかの様に、熱烈な浦和レッズサポーターの終結する北ゴール裏では、選手入場時に”THIS IS URAWA”と言う圧倒的なコリオグラフィーが出現して、数少ない上海上港サポーターを威圧していました。
  
北ゴール裏以外の全ての観客に、この日のサポーターの想いを象徴させる赤い小旗が配布されて、スタジアムが赤一色に染まりました。これぞアジア最高のスタジアムとサポーターを誇る浦和レッズとばかりに、キックオフ前にムードを作り上げる、浦和レッズのホームゲームとしてのパワーが充満していました。
  
選手を鼓舞し、相手を威圧し、サポーターの想いを共有させるという、ホームスタジアムのアドバンテージが、浦和レッズサポーターによって最も効果的に表現されていたと言えます。
  
選手のゲームにおけるパフォーマンス以前に、ホームアドバンテージを最大限に発揮する埼玉スタジアム2002の環境は、浦和レッズのチームやゲーム内容のみならず、アジアに誇るサッカー文化だと筆者は考えています。
  
特にACLという、観客動員の難しい大会においては、こうしたホームタウンとサポーターの想いは、ゲームに必ず好結果をもたらすものと言えます。
  
時としてクリティカルな浦和レッズのサポーターがあって、浦和レッズはレベルアップして来た歴史を有しています。熱く厳しく心あるサポーターが、浦和レッズを作り上げて来たのです。
  
高額な移籍金と年棒で集めた数名の外国人選手によって、急激に伸して来た中国のクラブとは違う、深く地域に根ざしたサッカータウンである浦和(さいたま市)の誇りが、PROUD OF URAWAという言葉となっているのが浦和レッズの魂です。
  
そういう意味で、クラブの戦力分析とは別に、浦和レッズと上海上港の比較は好対照であり、総合力を相手に知らしめる事の意味も大きかったゲームだったと筆者は思うのです。

©︎Shooty

許さじアウェイゴールという気迫

ホーム&アウェイの2ゲームで雌雄を決し、上位に勝ち上がる方式は、長丁場の各国リーグとは必然的に闘い方に違いが現れます。
特にJリーグと違って、アウェイで得点すると二倍の得点価値があるアウェイ・ゴールという存在が厄介な存在であり、有利な存在でもあるのです。
既に準決勝1st Legでアウェイ・ゴールを決めて1対1というスコアを得ていた浦和レッズにとって、2nd Legのミッションは明確でした。それは相手に得点を許さない事でした。
  
1st Legで2点の価値があるアウェイ・ゴールを決めていた浦和レッズは、実質的には2対1という有利な状況で迎えた2nd Legだったのです。相手に得点させずにゲームを終えれば、決勝進出が決まります。
相手に1点を許し、自らは無得点の場合は、実質2対3で敗退。相手に1点を許しても、自らも1得点すれば、両チームがイーブンになり延長戦に突入。決着がつかなければPK戦という状況でした。
  
つまり、勝利の為には、相手に得点を許さない事が、チーム全員の最大のミッションというゲームだったのです。故に、浦和レッズがディフェンシブにゲームを進め、上海上港がアグレッシブに来る事は、自明の理でした。
  
しかし、ディフェンスの意識だけでは、守りきれないのがサッカーの常でもあります。如何に失点せずに得点するか。つまり細心の注意を払いながらバランス良くゲームを進める事が求められるゲームでした。
今シーズンの浦和レッズが最も破綻してしまったポイント。それがバランスの欠如でした。ですから、このゲームのミッションは明確だったものの、シーズンで余り実現できていないゲーム展開でもありました。
  
その上、超攻撃的なブラジル人トリオを並べた相手です。このゲームのポイントは、超攻撃的に向かって来る上海上港相手に、守りきった上に得点できるかという点でした。
  
実際キックオフされると、得点させてなるものかという浦和レッズの強烈な気迫がひしひしと伝わって来ました。
   

©︎Shooty


  

ミッションを貫徹した勝利

キックオフされると、案の定の展開に。前段で記載した通り、上海上港は果敢に攻撃を仕掛けて来たのです。GK一人を自陣に残して、DFを含めてFP全員が浦和レッズ陣内でプレイする時間帯が多々見られます。
  
一方で、得点許さじとの気迫みなぎる浦和レッズも、コンパクトな陣形をを崩さず、上海上港の攻撃を食い止めます。
ボールポゼッションは圧倒的に上海上港だったものの、かと言って決定的な場面も作らせません。そして迎えた前半12分。浦和レッズ初のCK。
左コーナーからMF柏木陽介選手の蹴り上げた綺麗な弧を描いたボールに、FWラファエル・シルバ選手が見事にヘディングを合わせて相手ゴールを揺らしました。
アウェイ・ゴールを狙って来た上海上港に対して、その戦意を削ぐ先制パンチを浦和レッズの方からたたきつけたのです。これは大きなアドバンテージになりました。
  
一方突出した個人技を際立せていたのは、やはり上海上港のFWフッキ選手。再三再四、めまぐるしくポジションを変えながらゴールを伺いますが、マンマークしていたDFの槙野智章選手の必死のディフェンスでことごとく潰されます。
  
槙野選手はフッキ選手相手に闘志溢れるマッチアップを見せてくれました。筆者としてはこのゲームのMOMは間違いなく槙野選手だったと認定します。
  
又、MFの青木拓矢選手とDFの遠藤航選手は、どちらかというと左サイドに流れ気味の上海上港のFWオスカル選手に自由を与えず、ほとんど仕事らしい仕事をさせませんでした。
  
上海上港3トップのもう一人エウケソン選手は全く存在感を感じず、とにかくフッキ選手が孤軍奮闘しているという印象で、やはりこのチームはフッキ選手のチームという事が明白でした。
浦和レッズでは、MF長沢和輝選手が中盤右サイドで躍動感溢れるプレイを魅せてくれていました。又、GKの西川周作選手は、何度と決定的な場面を死守していました。
  
そしてキャプテン阿部勇樹選手は、いつも通り必要な場所で的確なプレイに徹し、フッキ選手の強烈なミドルシュートをハンブルした西川選手のボールに、突進してシュートしたエウケソン選手のボールを捨て身でクリアするなど、キャプテンらしい献身的なプレイを魅せてくれました。
武藤勇樹選手、興梠慎三選手、槙野選手は三人共に、得点できなかったものの、ゴールと紙一重のヘディングでスタジアムを沸かせました。
  
後半、柏木選手と交代した梅崎司選手は、高速ドリブルで相手ゴールに迫り、ゴールできなかったものの、左足で強烈なシュートを放ちました。
ポゼッションは圧倒的に上海上港であったとはいえ、再三浦和レッズもチャンスを作り、後半終了間際は両チームのボールがピッチを行き交い、見ごたえあるゲーム展開でした。
  
やはり最も言及すべきは、勝利した浦和レッズの選手全員が、このゲームのミッションを貫徹したという点です。つまり相手にアウェイ・ゴールを許さない事。見事に貫徹していました。その気迫に満ちていました。
  
この一点に全員が集中していた上で、ディフェスに集中せず、慎重にバランスを見極め、攻撃もしかけていたというゲームだったのです。
  
ゲームを観戦していた日本代表のハリルホジッチ監督は、観戦後のインタビューで「ポゼッションでは相手が上回っていたが、浦和が勝った。これがモダンフットボール」と述べられていました。
  
最近ハリル監督がしきりに述べている、日本サッカーのポゼッション至上主義への典型的なアンチテーゼゲームだったという事だったのでしょう。
  
確かに、上海上港は、ポゼッションしていましたが、出し所が無く、仕方なくボールを回していたというのが実態でした。打開できない事態にじれたフッキ選手が突破を試みるも、槙野選手ががっちり受け止め、仕事をさせなかった。
  
ポゼッションが悪いとも思えないし、必要な戦術であることは間違いありませんが、このゲームを見る限り、ハリル監督の言う通り、ポゼッションしなくても勝つサッカーを浦和レッズは実現していました。それがモダン・サッカーかどうかは議論の分かれる所だと思います。
  
それにしても、浦和レッズ決勝進出は見事で、何と言っても準々決勝1st Legに1対3で敗れた川崎フロンターレ戦後、2nd Legで4対1という劇的な勝利を挙げた事が、最大のポイントだったと筆者は考えます。奇跡的でした。しかし、現実だったのです。
  

©︎Shooty

2017年9月15日に筆者がしたためました「2007年以来のアジア制覇目前!日本勢で唯一4強入りした浦和レッズ」の末尾で、準決勝2nd Legは浦和レッズが完封勝利するはずであると予想した通りの結果になりました。
2008年のガンバ大阪のアジア制覇以降絶えていた、Jリーグクラブのアジア制覇。そして浦和レッズにとっては10年振り二度目のアジア制覇まであと2ゲームです。
サウジアラビアまで応援に駆けつける方には想いを託し、決勝2nd Leg、つまり最終決戦の場は、埼玉スタジアム2002で11月25日(土)です。
浦和レッズのサポーターの皆さんのみならず、Jリーグファンの皆さん、11月25日は埼玉スタジアムへ集結しましょう!

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう