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宇佐美獲得成功と古豪復活へ確かな手応え<フォルトゥナ・デュッセルドルフ会長インタビュー>

岩崎 充

2017/09/23 11:40

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NEWS

宇佐美選手の加入により注目が集まるドイツ2部所属のクラブ、フォルトゥナ・デュッセルドルフ(通称F95)。
1895年創立と長い歴史を持ち、過去にはドイツカップを連覇した経験もある古豪は、現在2部リーグで首位(9月22日現在)と好調だ。

今回筆者はアカデミーチーム(U-17)と一緒に来日中のフォルトゥナ・デュッセルドルフの会長、ロベルト・シェーファー氏にインタビューを敢行した。

2つのクラブでのGMを経て会長へ就任

–まずはシェーファー会長ご自身についてお伺いします。過去に2つのクラブ(1860ミュンヘン、ディナモ・ドレスデン)に携わっており、またインターネット上では弁護士という肩書きの情報もあります。どのような経緯でサッカー界に足を踏み入れたのでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)確かに大学では法学部でその道の勉強していたので弁護士にもなることもできたのですが、実際は弁護士ではありません。
インターンという形でIMG(インターナショナル・マネージメント・グループ)社で仕事を始めたのですが、IMGが1860ミュンヘンのコンサルティングを行っていたのが最初のきっかけです。仕事をしていく中で、クラブがGM(ゼネラル・マネージャー)のポジションを必要としていることが分かり、そこに加わる事となりました。
1860ではGMとして一人ですべてを担当、次のドレスデンでは他のスタッフと兼任という形でGMの職に就いていました。

–会長は現在41歳、非常に若い年齢での会長職ですが、これはドイツでも珍しいケースでは?

(ロベルト・シェーファー)確かにこの年齢で会長のポジションにいるのはドイツでも稀なケースではあると思います。ただ1860ミュンヘンでGMに着任したのが34歳、そこからすでに7年間仕事をしてきているので、個人的には何も特別には感じていません。

–2016年3月の就任時、フォルトゥナにはどのような課題があったのでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)まずフォルトゥナは伝統のあるクラブであり、ブンデスリーガ1部のクラブになるための条件を多く揃えているクラブだと思っています。
1部に所属しなくてはいけないクラブというのが根底にある考えですが、残念ながら過去20年間を振り返ると、1部にいたのはわずか1年(2012-2013シーズン)のみです。

就任時は、クラブが2部から3部へ降格の危機にあるタイミングでした。チームは全く機能しておらず、チームの中で規律を形作る人間もいませんでした。クラブからファンに対して、アイデンティティーをつなげていく人間もいませんでした。

また、必要なのは地元アカデミー出身選手の育成強化で、そのためにインフラの整備が必要であること、近代的なアカデミーの施設を作りたいという想いはクラブにありましたが、具体的なアイディアやプランはありませんでした。

さらにフォルトゥナは近代的な素晴らしいスタジアムを使っているが、残念ながらこれは使わせてもらっている立場にあり、自分たちがそこから収益を得られる立場になっていませんでした。

そして1部から2部に落ちてからのファンやサポーターの反応、さらにスタッフもネガティブな雰囲気になってしまっていました。

新しいチーム作りと昇格への手応え

–では具体的にどう改革に取り組んだのでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)就任して一番最初に着手したのは、3部への降格を回避すること。そのためにドイツの中でも最も経験豊富な監督、フリートヘルム・フンケル監督を招聘し、彼と共に3部への降格を回避しました(14位で残留)。

残留を決めた後は、新しいチームをどういったコンセプトで作っていくかに注力しました。
まずチームを作るために、ドイツサッカー協会の中で指導者を育ててきた第一人者、エリッヒ・ルーテミュラーをスポーツ役員としてチームに招きました。
彼はドイツでも有名な存在であり、ドイツサッカー協会だけでなくFIFAやUEFAのご意見番でもあります。また、世界中に人脈を持っており、日本サッカー協会の田嶋会長とも強いコネクションがあります。
またチームを作る上で、長くクラブにいるスタッフ、ウーヴェ・クライン、そしてロベルト・パリクチャという2名にチーム再編成の役割を担ってもらいました。

選手については、自クラブのユースアカデミーから可能な限り選手を昇格させること、かつ他のクラブで出場のチャンスがないが成長の可能性のある選手たちに注力して獲得していきました。同時に、新しいユースアカデミー設立に関してプランを作り、着工できるよう話を進めました。
それからスタジアム使用の契約に関して、見直しに着手しました。

ようやく自分の考えるベース部分を作ることができたので、ここから少しづつ積み上げていくつもりです。

その中で一番最初のステップとなったのは、ユースアカデミー出身でトップチームで活躍したFWイラス・ベブ(トーゴ代表)をクラブレコードとなる移籍金でハノーファーへ売却できたこと。

これにより新しい選手を2人(ベニト・ラマンと宇佐美)獲得し、結果として戦力の上積みに成功しました。

–スタジアム(2004年完成、54,600人収容)については、その収益改善にどのように取り組んだのでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)スタジアムは間違いなく素晴らしい設備です。ドイツだけでなく、ヨーロッパ全体で見ても優れたスタジアムであり、もし2024年にドイツが欧州選手権の開催国に決まった場合は、デュッセルドルフのスタジアムも会場に選ばれることがすでに決まっています。

収益改善については、まずスタジアムを借りる値段を下げることができました。なおかつ、スタジアムが持っている命名権などの権利についてF95も販売ができるよう話を進めています。

–今シーズン、ここまでは素晴らしいスタート(5勝1敗1分で首位)を切ったと思いますが、昇格への手応えは?

(ロベルト・シェーファー)非常に良いスタートでシーズンに入ってくれたと思っています。また、宇佐美を含め今シーズン加入した選手のおかげでチームのクオリティが高まったと感じています。

一方で、ブンデスリーガ2部は各チームレベルが拮抗しているリーグです。6節では、我々はその時点でも首位でしたが最下位のチームに敗れるということも経験しました。また、チームによっては何年も選手を変えずに戦っているところもあり、例え財政的に劣っていたとしてもその連携力を長所として戦うクラブもいくつかあります。

我々の今シーズンの目標は上位6位に入ることですが、ここまで戦いを見る限りそれは達成できると思っています。

–フォルトゥナのサポーターについてお聞かせください。2部リーグで1試合に2万人以上も集まることが日本でも驚かれています。

(ロベルト・シェーファー)まず、ブンデスリーガの2部というのは世界で最も集客力のある2部リーグです。リーグランキングの総合的なポイントで見ると、我々のリーグより上位はわずか6つ(全て1部リーグ)しかありません。
また、パフォーマンスのクオリティに関しては、他のリーグの1部にも負けないものを持っています。

また過去数年間、サポーターにはフラストレーションの溜まる結果が続いていたが、それでもドイツ人・日本人関係なく彼らはクラブを常に愛し温かくサポートしてくれています。
さらに、デュッセルドルフにはヨーロッパでは3番目、ドイツでは最も大きい日本のコミュニティがあります。多くの現地の日本人サポーターが、今回の宇佐美選手の加入に対して非常に大きな反応を示してくれました。

日本とのつながり、そして宇佐美について

–フォルトゥナの特徴の一つとして、日本デスクを設けている点があると思います。具体的にはどういった役割なのでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)日本デスクができて今年で10シーズン目になりますが、まず日本のコミュニティとの強いネットワークを持つことを目的としています。日本語HPやツイッターアカウントを持っている他、日本語のマガジンも発行しています。

また、日本のメディアやスポンサー、そして日本サッカー界とのつながりも強化できており、スポンサーは東洋タイヤや日立といった日本のスポンサーを獲得することができました。
Jリーグと日本サッカー協会が進めているプロジェクトを通じて、昨年は11クラブのユースディレクターがフォルトゥナへ訪れ、彼らにユース育成の仕組みに関する研修を実施しました。

これまで日本サッカー界に貢献している点が認められて、今回日本に招待していただく機会が得られました。そういう意味で、我々のクラブにとって日本自体が大きなパートナーだと思っています。

日本全体に是非広めていきたい点としては、今後日本の新しいタレントが海外へ挑戦し成長する上で、我々のクラブが1つの場所であるということを少しでも多くの方に知っていただきたいと思っています。

我々のスタッフは、日本人選手をしっかりと育ててきた経験もあり、またデュッセルドルフ自体が日本人にとって条件の揃った街です。

–確かにバイエルン時代の宇佐美の恩師がフォルトゥナにはいるという話を聞きました。ではその宇佐美選手ついて獲得の経緯を教えてください。

(ロベルト・シェーファー)彼は長いこと獲得候補のリストに入れており、状況はずっと追っていました。また選手としてのクオリティが高いのは間違いないと思っていました。

宇佐美を獲得できるかもしれないという可能性が出てきたときに、全力で動いてうまくいったことは嬉しく思っており、また我々は彼を獲得できたことを大変誇りに思っています。
そしてこの獲得にご助力いただいた東洋タイヤについても大変ありがたいと思っています。

–宇佐美選手は海外ではなかなか結果を出せていませんが、それでも彼に期待する日本のファンは多くいます。どうすれば今後海外で成功できるでしょうか?

(ロベルト・シェーファー)まず最初に挑戦したバイエルンというのが、ドイツの中で最も難しいクラブであり、そこで成功するのは難しかったと思います。ドイツの文化、言語、そしてサッカーを理解した選手であっても、バイエルンで結果を出すには時間が必要です。

宇佐美はものすごく大きな可能性と能力を秘めた選手だと思います。ただそのためには彼を信用し、信じてあげることが必要だと思います。

そして所属するクラブにおいて、そこにいることに心地よいと感じてもらうことも大事です。デュッセルドルフではすでに心地よいと感じてくれていますので、今後彼のパフォーマンスが良くなり目標を達成してくれると信じています。

–最後にクラブの短期・中期目標を教えてください。

(ロベルト・シェーファー)短期の目標としては今シーズントップ6に入ること、そして中期の目標としては一部リーグに復帰することです。

ロベルト・シェーファー(Robert Schäfer)
1976年3月23日生まれ
経歴:
2010- 1860ミュンヘン(GM)
2014- ディナモ・ドレスデン(GM)
2016- フォルトゥナ・デュッセルドルフ(会長)

タイトな来日スケジュールの中インタビューは夜9時過ぎに行われ、さらに途中アクシデント(黒く光る物体がまさかの乱入・・)にも見舞われたが、嫌な顔一つせずインタビューは終始和やかに行われた。
また今回のインタビューにあたり日程調整及び通訳いただいた日本デスクの瀬田氏にも感謝を申し上げたい。

フォルトゥナ・デュッセルドルフの日本語HP及びツイッターはこちら:
日本語HP
http://japan.f95.de/
公式日本語ツイッター
https://twitter.com/F95_jp

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