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『水戸ホーリーホック×ガールズ&パンツァー』コラボ仕掛け人が語るスポンサーの役割。そこにまっすぐな愛はあるか?

勝村大輔

2017/09/07 07:55

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『水戸ホーリーホック×ガールズ&パンツァー』コラボ仕掛け人が語るスポンサーの役割。そこにまっすぐな愛はあるか?

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「世界中を見渡しても、これほど面白いリーグはありませんよ!」バンダイビジュアル株式会社の廣岡祐次氏はJ2の魅力についてこう前置きする。

「毎年のように順位は変わるし、昇格も降格もある。年間予算規模6億円の水戸ホーリーホックのようなクラブと20億円クラスのクラブが共存していて、各クラブ様々な背景がある。」

J1から降格したビッククラブや古豪と呼ばれる名門クラブ、Jリーグ参入を果たした地域クラブまで、リーグを彩る顔ぶれは多岐にわたり、めまぐるしく順位が入れ替わる。「そういうところにロマンを感じてしまうんですよ。」廣岡氏はこうつづける。

小規模予算のクラブがビッククラブを覆す痛快劇が巻き起これば、戦績不振に喘ぐ中堅クラブが様々なイベントを仕掛け、驚くような観客動員を達成してしまう。

この魅力溢れる”J2劇場”の盟主として、今季18年目、在籍最年長記録を更新し続ける水戸ホーリーホックが手掛けるスタジアムイベント『アニサカ』がネット上を賑わしている。

人気アニメ『ガールズ&パンツァー』と水戸ホーリーホックのコラボレーション企画である。

“『ガールズ&パンツァー(略称:ガルパン)』とは、2012年10月から12月までと、2013年3月に放送された人気アニメ。戦車を使った武道「戦車道」が華道や茶道などと並んで大和撫子のたしなみとされている世界で、主人公の西住 みほが通う「大洗女子学園」が、全国大会優勝を目指すストーリー。茨城県大洗町が作品の舞台となっており、放送開始から5年を経過する今でも、町を訪れるファンが後を絶たない。”

「ガールズ&パンツァー 最終章」第1話 12月9日(土)劇場上映 (全6話)

この企画の趣旨については、当WEBサイトよりお届けした水戸ホーリーホック沼田邦郎社長のインタビュー『勝敗を超えたエンターテイメントを創造する。人気アニメ「ガールズ&パンツァー」とのコラボ企画に想う』を閲覧していただきたいところだが、今回の記事は、前インタビュー内で沼田社長が名指ししたコラボレーションのキーマン、バンダイビジュアル株式会社の廣岡氏に焦点を当ててお届けする。

普段からアニメのアニメーションの広報・宣伝を生業(なりわい)としている廣岡氏は、プロモーションのスペシャリトであり、熱心な水戸ホーリーホックのサポーターと知られている人物でもある。

今年で5年目を迎え、未だ衰えを知らない。コラボマッチの”集客力”をスポンサー視点で切り取る。

『水戸ホーリーホック×ガールズ&パンツァー』

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——『水戸ホーリーホック×ガールズ&パンツァー』この企画に至ったきっかけを教えてください。

(廣岡)最初のきっかけは、前回の沼田社長のインタビュー記事で触れられているので割愛しますが、何よりも私がサッカー好きだからというのが大きいです(笑)。更に現在はユニフォームスポンサーを務めさせて頂いておりますが、アニメ作品単体でそういった関係になるのはこれまで見たことがないですし、話題になると思いました。近いところでは、昔バンダイが横浜フリューゲルスのスポンサーをやっていた事もありますが、会社名がユニフォームに入ることはあっても、一つの作品がサッカークラブのスポンサーになるというのは初の試みじゃないでしょうか?やるからにはそれくらいまで、という想いは最初からありました。

——コラボ企画のプロモーションは、廣岡さんが中心となって進行していると伺っていますが、どのような意図をもって取り組んでいるのでしょうか。

(廣岡)基本的に私がやっています(笑)。発案者が持っている芯の部分がぶれないように、想いを持っている人間が発信していくことが大事だと思っています。そこは全然苦には思ってないですね。ただ、近年はクラブやまいわい市場さんと、立案含めて一緒に動いていますね。

——廣岡さんご自身が発信されているのですか。

(廣岡)はい。公式での発信、リリース資料の送付など行っていますが、これは普段のアニメ―ションの宣伝業務と変わらないです。また、SNSはツイッターを中心に行っておりますが、アニメのファンはツイッターとの相性がすごく良い印象です。

——『ガールズ&パンツァー』のファン層を教えてください。

(廣岡)まず男女比は、99.5:0.5くらいの感覚です。男性ファンでほぼ占めています。ここまで極端な作品は珍しいですね。年齢層で言えば30後半から40代前半が中心ですが、2年前の劇場版の上映以来、20代の方々からの支持が増えたという実感があります。

——アニメとサッカーとでは、一見、親和性は見当たらないように感じますが、どのようにしてアニメファンをサッカーに巻き込んでいったのでしょうか。

(廣岡)最初は、実施するイベント内容や販売するグッズのデザインなど「受け取られ方」に気をつけていたのはよく覚えてます。そもそもスタジアムでアニメのイベントをやるということ自体があまり無い事でしたし、最初から、多くのファンが殺到するとは思っていませんでした。100人集まってその中の一人でも水戸ホーリーホックを好きになってもらえたらいい、そのくらいの気持ちでしたね。

ただ、何もやらなかったらゼロですから。何かをやって、それをオモシロイと感じてくれた人が少しでもいてくれて、そのまま試合を観戦してくれる。グッズを購入して、試合を見ずに帰ってしまう人もいるかもしれないのですが、

それでも私は良いと思っていました。「スタジアムに足を運ぶ」って、結構なエネルギーを使う行為じゃないですか。東京の人が特急に乗って、バスを乗り継いでスタジアムに訪れる。そしてグッズを買ってくれる。このパワーは計り知れません。

そのあとに、何かのきっかけでもう一度スタジアムを訪れる。あるいは、グッズを買った時に、たまたま暇だからといって試合観てくれる。そうしたら、オモシロかったといってその後も興味を持ってくれればいい。

例えば、芸能人を呼んで、通常よりも5000人多く集客できた。でも次の試合でごっそり5000人減った。総計的には意味は持たないかもしれませんが、そのイベントを楽しんでもらえたことが「きっかけ作り」になりますよね。なので、継続的にコラボレーションを行う事で、その「きっかけ作り」の回数を増やしたいと思っていました。

サッカーもアニメも、そこにまっすぐな愛がある。

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——このコラボ企画を進める中で、廣岡さんご自身が水戸ホーリーホックのサポーターになっていったと伺っています。どのような経緯で好きになっていったのでしょうか。

(廣岡)開幕時からJリーグには、めちゃくちゃ興味がありまして、結構いろんな試合を観に行きましたが、何かしっくりこなかったんですよね。友人に連れられて某クラブのゴール裏で声出したりもしましたが、どうもピンとこない。私は実家が松戸市なので、例えば近隣の柏レイソルのサポーターになるきっかけはどこかにあったと思うんですけどね(笑)。(あ、別にレイソルは今でも気にしています)ただ、おそらく潜在的にどこかのサポーターになりたいと願っていたとは思います。それと常勝チームが昔から苦手だったので、そういう意味でも水戸ホーリーホックというクラブは肌に合っていたという気はします。

——どのくらいの頻度でスタジアムに行かれますか。

(廣岡)半分いかないくらいですかね。アウェーにも行きますよ。今年は、群馬と岐阜と味スタ(東京V戦)、町田に行きました。

——水戸ホーリーホックの魅力は何ですか?

(廣岡)泥臭いところですね。クラブ関係者もチームもサポーターもいつも前向きで、みんなが頑張っているのがすごく伝わりますね。

やっているサッカーが面白くあって欲しいという前提はありますが、水戸ホーリーホックは、その側の部分を充実させていこうという姿勢が見て取れます。何かおもしろいことやっているなと思わせるきっかけづくりに積極的に取り組んでますよね。潤沢ではない資金力のクラブも、やれることはあります!

——昨年のことですが、ケーズデンキスタジアムを訪れた際に、ガルパンコラボユニフォームを着用しているサポーターがたくさんいたことに驚きました。既存サポーターにはサッカーとアニメとのコラボに抵抗感はなかったのでしょうか。

(廣岡)そこは最初から態度で示せれば、と思っていました。当然すべての方が何の抵抗もなく受け入れて下さった、なんて事は無いと思いますが、「我々は本気でクラブの支援をしていきます!」という想いで、やり続けられれば良いかなと思っていました。

そうした所、コラボ初年度から想像以上の多くの既存のサポーターの方がコラボユニフォームを着用して、企画を盛り上げて下さいました。例えば、水戸ホーリーホックと同様に、アニメとコラボしているFC岐阜を迎えた一戦に『アニ×サカ!!』という企画を立てて、「そういうのをやりまーす!」と告知すると、その日は率先してコラボユニフォームを着て下さる方が多いんです。

——2枚持っているということですか?

(廣岡)だと思います。2枚以上ユニフォームを持っていて、じゃあ今日はこっち着るかみたいな方もいますし、いつも着ている方もいます。これは意外でしたね。

——それはやはりコラボ仕掛け人の廣岡さんご自身が熱心なサポーターだという説得力があるからではないですか?

(廣岡)サッカーが好きな人は「このチーム、この選手が好き!」と熱くなるじゃないですか。アニメも基本は一緒なんですよ。「オレはこの作品、このキャラクターが好きだ」という感じで。つまり、気質は同じなんだと思います。だからサッカー好きの人にアプローチすることは悪いことではないと思っていましたし、狙ってはいませんが、水戸ホーリーホックをきっかけに、Jリーグ各クラブのサポーターの方々にも作品の認知はして頂いているのではないか、という実感はあります。

クラブとスポンサーの好ましい関係

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——コアな人たちが創り出す熱狂と繋がりがコラボを支えてくれているわけですね。これまでの振り返り、並びに今後の展望をお聞かせください。

(廣岡)最初から継続は力なりと覚悟を決めていました。1年目にコラボして、2年目にクラブのスポンサーになり、そして3年目からユニフォームスポンサーになりました。我々も本気でこのクラブを応援しているぞということを示してきました。

段階的に尻つぼみにならないように、しっかりと継続できるように努力してきました。その中でサポーターになってくれた方もいらっしゃったと思うし、サポーターの中にもガルパンに興味持ってもらえた方もいらっしゃると思います。そうやって、引き続きお互いのきっかけ作りが出来ればと思います。今後もガルパンは最終章という形で続編の展開が続きますので、やれる限りやっていきたいですね。

——最後に一つだけいいですか。当事者として、クラブとスポンサーは、どのような関係性が好ましいと思われますか。

(廣岡)サッカーに限らず、野球でも何でもそうですが、スタジアムに広告として企業名を出している所も多いですよね。そのため“だけ”にお金を使うのは、勿体ないなと感じます。当然、契約条件など単純な話ではあるかとは思いますが、せっかく宣伝媒体として活用しているのであれば、もっと積極的に、チームを取り巻く「場」を活用しても良いのではないかと思います。

企業としては、宣伝媒体として費用をチームに払っている時点で、そのチームの力にはなっていると思うのですが、あと一歩、何か一緒になって盛り上がる事が出来れば、お互いにとって良いですよね。そして、そんな展開が実績となり、「何か面白い事やってんじゃん」と他の企業も絡めれば、更に効果は上がっていくように思います!

業界的に近しい所で言うと、株式会社Cygamesがサガン鳥栖のスポンサーになって、尚且つ情報発信、イベントの実施など積極的ですよね!とても共感を持っています。我々は資金的にあそこまで大規模には出来ないので、ちょっと羨ましいです(笑)。
今度社長にお酒でも飲みながら、お話を聞いてみたいくらいです!

我々も、ユニフォームスポンサーとして『ガールズ&パンツァー』という名前があるのですから、スポンサーとして、お互いのために、引き続き積極的にやっていきたいですね。

——逆を言えば、クラブ側の発信次第で、スポンサーになりたいと手を挙げる企業も現れるかもしれませんね。

(廣岡)そうあって欲しいですよね!だっていきなり「うちはこの街でサッカークラブやっています。だから応援してください、お金ください。」と言われても、ちょっと拒否反応すら覚えますよね。まあそんな事言うクラブは無いと思いますが(笑)。「このクラブによってスポーツを中心に、この街を元気にしていきたい。」みたいな話はよく聞きますが、それプラス、街の経済活性化のために云々という具体的なプランを持っているとか、このイベント実績を元に御社もこんな楽しいイベントが出来ますよとか、行政とパイプが出来ますよとか(笑)、そういう話ができて初めて、「効果ありそうだね。」と共感してもらえると思うんです。クラブ側から、応援しようと思ってもらえる何かを提示できるかどうかは、大事な事ですよね。

——本日はお忙しい中ありがとうございました。

9/9(土) J2 第32節 水戸ホーリーホックvs FC岐阜(ケーズデンキスタジアム)

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9/9(土) J2 第32節 水戸ホーリーホックvs FC岐阜 が行われるケーズデンキスタジアムにて『アニ×サカ 2017』が開催される。人気アニメ『ガールズ&パンツァー』とコラボする水戸ホーリーホックが、人気アニメ『のうりん』とコラボしたFC岐阜を迎えたい一大イベントは、ファンが主導で『アニ×サカ交流会&痛ゲーフラ撮影会』など様々な催しを体験できる。この機会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

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「ガールズ&パンツァー 最終章」第1話 12月9日(土)劇場上映 (全6話)

今回のインタビュアー勝村大輔氏のサイトでインタビュー後記を掲載しておりますので、そちらもご閲覧くださいませ。

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