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韓国人ゴールキーパーがJリーグに増えているのは何故なのでしょうか?

扇ガ谷 道房

2017/07/19 08:05

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NEWS

Jリーグの各クラブには多かれ少なかれ外国人選手が在籍して活躍しています。ヨーロッパやブラジル国籍の選手が多い中で、最近特に目立つのは韓国人選手です。
中でもゴールキーパー(以降GKと記載)のポジションに集中している事にお気づきでしょうか。
日本と同様、ヨーロッパのリーグで活躍する韓国人選手も多い中、何故GKは日本に移籍する選手が多いのでしょうか?
その理由に迫ってみました。


by footballjournal

アジア人選手の壁として存在しているGKというポジション

現在FIFAマスターに在籍してスポーツ科学を学んでいる韓国人のパク・チソンさん。サッカー通の方ならご存知だと思いますが、元プロ・サッカー選手で、アジア人としては初めてヨーロッパのビッグクラブであるマンチェスター・ユナイテッドFCに入団し活躍されていました。香川真司選手が移籍する前の事です。

参考記事:サッカーだけでなくスポーツ界で活躍する人材を養成するFIFAマスターとは
 
謂わばアジア人選手のヨーロッパ主要リーグ移籍成功の先駆け的な存在でした。その後、Jリーグからも多くの選手がヨーロッパリーグのクラブに移籍する様になりましたが、Kリーグからも多くの選手がヨーロッパリーグのクラブに移籍して活躍している事はご存じの方も多いのではないかと思います。
 
殆どの選手はフィールドプレイヤーで、その中にGKはいません。その事はJリーガーも同様です。日本代表の川島永嗣選手など数名の選手に限られているのが現状です。多くのアジア人選手が海外移籍する現在でも、GKに限ってはフィールドプレイヤーと同様に位置付けられていない現状があります。

参考記事:海外経験の成果に期待が集まるサガン鳥栖のGK権田修一選手

この事はアジア人選手にとってとても大きな課題であると言う事ができるでしょう。この事が韓国人GKがJリーグに多く移籍している事にも関連性があります。
 
海外移籍して経験を積みステップアップする事は、プロサッカー選手の憧れであり、現実的なスキル向上方法です。ですから多くのフィールドプレイヤーがヨーロッパ主要リーグに移籍を実現させています。
 
しかし、その為には、オファーをしてくれるクラブが無ければ実現できません。前述の通り、アジア人GKはほとんど例を見ないのが現状です。
 
その為に、韓国人GKとして海外移籍して活躍する場としては、隣国のJリーグが最適な環境にある事が、韓国人GKが増えている背景にあります。
 

by fcmetz.com

Kリーグ特有のGK登録条件

それぞれの国のプロサッカーリーグには、独自のルールが存在しています。Jリーグであれば、3カテゴリー制、昇格降格の基準、外国人選手の登録数、ホームスタジアムの要件等多岐に亘ります。韓国のKリーグにも当然独自のルールがあります。
 
殊GKに関して言うと、Jリーグには無い独特のルールが存在しています。それは”韓国籍を持たない選手は登録できない”という規定です。つまり外国籍GKは登録できないのです。
 
この制度は、1999年に規定されたのですが、それ以前のKリーグには多くの外国人GKが登録されて活躍していました。必然的に韓国人GKは、体格に優り経験力のある外国人GKとの競争に勝たない限りゲームに出場できません。
 
結果、KリーグのGKは自国籍選手が少ないという弊害が生まれていたのです。それを解消する目的で作られた制度がこの制度でした。
 
現在もこの制度は継続している為、Kリーグには外国籍のGKはいません。制度目的通り、韓国人GKが出場できる環境を整えたのですから、これはこれで一定の成果が生まれました。
 
優秀なGKが育つ環境ができた事で、次の課題が生まれます。それは第一チャプターで述べた通り、海外移籍して経験値を積むという次のステップです。
 

by kleagueunited.com

Jリーグに向かう最大の理由

第一チャプターに述べた通り、世界各国の選手が活躍するヨーロッパリーグにおいて、在籍して活躍しているアジア国籍の選手はみなフィールドプレイヤーです。
 
GKというチームに一人しか出場できないポジションには、未だにアジア国籍の選手は適用できていません。最大の理由は体格と言う事ができます。
例えば、イタリア代表の正GKジャンルイジ・ブッフォン選手は、身長191cm体重83kg。ドイツ代表の正GKマヌエル・ペーター・ノイアー選手は、身長193cm体重92kg。これだけの体格でゴールを守り、尚且つ俊敏な運動神経と、フィード能力に長けているのです。
 
日本代表の川島選手は、身長185cm体重82kg。東口順昭選手は、身長184cm体重78kg。決して小さな選手では無いのですが、ブッホン選手やノイアー選手に比べると、その差は歴然としています。
 
小柄なアジア人でも、フィールドプレイヤーであれば、俊敏性やスプリント能力を活かして、体格をカバーする事ができますが、広いゴールマウスを守るGKには、体格面でのハンディは大きな守備力の違いに表れてしまいます。
 
自ずとヨーロッパリーグのクラブから、アジア人GKへのオファーは皆無に等しい現状です。フィールドプレイヤーは海外移籍して経験と収入というステップアップが実現できていますが、GKにはそのチャンスは閉ざされています。
 
必然的に、韓国人GKの目はJリーグに向かう事になるのです。 
  

by successstory.com

海外経験と共にモチベーションになるのはやはり

韓国Kリーグは日本のJリーグと同様、韓国におけるプロサッカーリーグとして知られています。前身であるスーパーリーグは1983年に創設されている事から、Jリーグよりもプロ化の道のりは少し早いのですが、現在のスタイルに仕上がるのはJリーグとほぼ同時代だと考えて宜しいと思います。
つまり、KリーグはJリーグと同じ時代性をもって、隣国同士で切磋琢磨しているプロサッカーリーグと言えます。

ところが、国情の差という物は選手年棒に現れます。両リーグ選手の年棒を比較してみると、やはりJリーグの方がKリーグを凌駕しているのです。
2015年末にKリーグから公表されたデータによれば、JリーグのJ1に相当するKリーグ・クラシックの平均選手年棒は日本円で1480万円。一方J1リーグの2015年度の平均選手年棒は2017万円(サカマネ.net)と言われています。
つまり単純計算では、Kリーグクラシックの年棒は、J1リーグの年棒の73%という事になります。圧倒的な差ではありませんが、Jリーグが年棒面では優位性があるという結果が出ています。
 
更に言えば、KリーグGKの年棒はフィールドプレイヤーに比べて低いという事実も、Jリーグへの移籍に拍車をかけています。
第三チャプターで述べた様に、KリーグのGKがJリーグに向かう理由の中には、海外経験を積む事と同様に、年棒のアップも見逃せない事実なのです。
 


by kleagueunited.com

Jリーグ側の獲得動機

 
KリーガーGKのモチベーションとは別に、Jリーグ側にも獲得のモチベーションが無い限り、韓国人GKの移籍は実現しません。それではJリーグ各クラブは何故韓国人GKを獲得しているのでしょうか。
 
一つは外国籍選手の登録枠のルール変更が大きな原因と言われています。現在のJリーグ規定では、外国籍選手の登録枠は3名ですが、条件付き外国籍選手と言う枠も設けられています。
 
三つある枠の中に、AFC加盟国の国籍を有する選手(通称アジア枠)という枠があり、1名以内登録できる規定になっています。韓国籍選手はこの枠に該当する為、基本規定の外国籍選手枠3名とは別個に、このアジア枠を使って韓国人GKを登録しているのが最近の傾向なのです。
 
つまりフィールドプレイヤーは基本の外国籍選手枠で3名登録し、GKにアジア枠から韓国籍GKを登録しているのです。
 
二つ目は、韓国人GKの力量評価です。当たり前の事ですが、能力の無い選手を登録する必要は全くありません。能力がある事が獲得の理由です。
 
三つめは、年棒です。第四チャプターで述べた通り、KリーガーGKの年棒は相対的にJリーガーGKよりも抑えられていますから、コストパフォーマンスが高いという事です。
 
この様に、韓国側のモチベーションと、日本側のモチベーションが合致した結果、現状の様な韓国籍GKがJリーグで活躍する結果になったのです。


by http://imnews.imbc.com/

韓国トップレベルのGKが集結

現在J1リーグには6人の韓国籍GKが登録されています。ヴィッセル神戸のキム・スンギュ選手、川崎フロンターレのチョン・ソンリョン選手、鹿島アントラーズのクォン・スンテ選手、セレッソ大阪のキム・ジンヒョン選手とアン・ジュンス選手、コンサドーレ札幌のク・ソンユン選手の6人です。
 
特筆すべきは現役韓国代表の正GKであるキム・スンギュ選手の存在です。更には、正GKの座を争っているチョン・ソンリョン選手、C大阪のキム・ジンヒョン選手、リオデジャネイロオリンピックでベスト8になったのが札幌のク・ソンユン選手。つまり韓国のトップ4に位置づけられるGKが全員Jリーグで活躍しているのです。
 
ここで忘れてはならないのは、日本人GKの奮起です。韓国籍GKの活躍は大いに結構ですが、日本人GKには彼らにポジションを奪われる事無く活躍をして欲しいではないですか。
 
隣国のプロサッカー選手がJリーグというフィールドで切磋琢磨するのは喜ばしい事だと思います。日本人GKには彼らと競争しながら、レベルアップした姿を見せて欲しいものです。


by xportsnews.com

この様に、KリーグのGK規定、Jリーグの外国籍選手登録枠の規定を大きな要因として、韓国人GKがJリーグで活躍している実態があります。
アジアのサッカーを牽引する両国のGKが、Jリーグのピッチ上で切磋琢磨しながら、お互いのレベルアップを図り、将来ヨーロッパリーグで活躍する両国のGKを観てみたいですね!

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