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アーセナル vs バイエルン ゲルマン魂の容赦ない攻撃とチアゴ・アルカンタラ

ぱこぱこ・へめす

2017/03/13 23:27

2017/03/14 00:07

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NEWS

バイエルンのトランジションとカウンタープレッシング

チアゴがオフ・ザ・ボールで行っていることは、非常に過小評価されている特徴となっています。バイエルンのような相手をピッチの深い位置に押し留めるようなポゼッション重視のチームにとって、チアゴのように知的に“カウンタープレッシング”(Counter-Pressing:ボールを失った直後、すなわち“ネガティブトランジション”においてプレッシングを加えること)ができる選手はスタイルを強化するのに重要となります。

“カウンタープレッシング”とは、“カウンターアタック”に対してプレッシングをかけることであり、ボール喪失の場面で後ろが手薄になっている時にカウンターアタックを防ぐことができるだけでなく、そのプレッシングでボールを奪い返すことができれば、相手が攻撃の局面に移行しようとして生まれたポジショニングのギャップを利用してチャンスを生み出すことができます。

パスと同様に、大切なのは数字ではありませんが、チアゴは守備的アクションの数についても同時に非常に優れています。


by thetacticsroom

このような守備的特徴を評価する時に量と質の間には直接の相関関係はなく、特にそれはチームのプレースタイルが統計に大きな影響を与えるからなのですが、主に何を示しているのかというと、どれだけボールを保持していないところでチアゴが貢献しているのかということです。

アレクシス・サンチェスを起点にした攻撃

アーセナルが見せた攻撃の形の1つとして、左ウイングのサンチェスがタッチライン際で下がりながらボールを受けて攻撃の起点となるものが見られました。バイエルンの右サイドはラームが出場していなかったとはいえ、明確なウィークポイントだったわけではなく、サンチェスが“質的優位”(Qualitative Speriority)を見せてボールをキープをできたということです。横幅を取ってボールを受けるサンチェスに対して、“ハーフスペース・スクエア”(相手のセンターバック、サイドバック、ウイング、センターハーフの四角形)の中心にラムジーがポジショニングし、後方にジャカがパスコースを作り、モンレアルが高い位置を取るという形でサポートしてボールを循環しました。そのボール循環の時にジルーが裏取りをしたり、ウォルコットなどが逆サイドでボールを受けて素早く仕掛ける形が何度か見られました。


by footballtactics.net

サンチェスが攻撃の起点となったのにはもう1つの要因があります。アーセナルはボール非保持時に、サンチェスが前線に残り、ラムジーが左サイドハーフ的に振る舞いました。時々、左サイドに帰ってくることもありましたが、基本的にはカウンターアタックのために前線に残しておきたいという考えがあったのでしょう。一方、右ウイングのウォルコットはMFラインに下がってきて、4-4-2に近い形で守備を行っていました。

さて、サンチェスを起点とした攻撃は、20分のウォルコットの先制点の後から活性化しました。そこまでは両チームが五分五分で膠着気味だったのですが、アーセナルはリードを奪った後に試合を優位に進めます。以下は『Squawka』が掲載している“パフォーマンス・スコア”という値で、オン・ザ・ボールのアクションから算出している選手やチームの評価値なのですが、アーセナルの先制ゴール(20分)からバイエルンの同点ゴール(55分)までアーセナルが高い値を出しています。また、前述の“期待点”でも、この時間帯はアーセナルが善戦していることが伺えます。


by champions-league.squawka.com

ハーフスペース・スクエア


by footballtactics.net

“ハーフスペース・スクエア”という言葉は、筆者の造語です。ライン間かつハーフスペース、すなわち相手のセンターバック、サイドバック、ウイング、センターハーフの四角形のエリアを指す言葉として生み出しました。“ハーフスペース”は、ドイツサッカー協会が作った用語の英訳であり、バスケットボールの“トレーラーレーン”や岡田武史氏が日本代表監督時代に使っていた“ニアゾーン”と同様の意味合いです。

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コシェルニの退場、バイエルンの同点ゴール後

コシェルニの退場後、ジャカがセンターバックに入り4-4-1で対応しますが、それまでよりもプレッシングの開始位置が下がってしまい、受動的守備となってしまいました。さらに68分にロッベンが追加点を決めた後、アーセナルは72分にラムジー、サンチェス、ジルーに代わってコクラン、エジル、ルーカス・ペレスが投入されますが、1枚少ない中でゴールに迫ることができません。エジルが左サイドハーフに入り、自由なポジショニングで攻撃を組み立てたことから、一転して右サイドを起点とした攻撃が増えます。しかし間延びしたアーセナルの攻撃に対し、バイエルンは“ポジティブトランジション”から立て続けにゴールを奪い、またドウグラス・コスタ、キミッヒ、レナト・サンチェスに出場機会を与えて時間を過ごしました。

まとめ:ベンゲル、サンチェスなどの去就

今回もベスト16でチャンピオンズリーグを後にすることとなったアーセナルですが、ベンゲル監督の去就はまだわかりません。またサンチェスやエジルの昇給交渉の行方も不透明です。ともかく、チャンピオンズリーグに敗れてしまったので、プレミアリーグでチャンピオンズリーグ出場権を着実に手にすることが次第点となるでしょう。

バイエルンは、ラームとシャビ・アロンソが今シーズンで引退してしまうので、彼らに有終の美を飾らせてあげられるのかが注目ポイントです。また来シーズンに彼らの抜けた穴を補えるのかも重要となってきますが、それは実際に彼らが抜けてから判断したいと思います。

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